廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

玉石混淆な収穫まとめ その11

東京の自粛要請がほぼ解除されて早ひと月。やっとこさ図書館ディグもできるようになってきました。渋谷レコファンの消失予告が出てしまった今、私がディグの主戦場と言えるのはもう図書館しか無いのかもしれません。ブックオフでの収穫も最近不発だし…。とはいえ都内感染者数も再び増加してきていますし、図書館にすら行けないディグ不可状態に再び陥る時もそう遠くないのかもしれません。士気落ちるなぁ…。そんなわけで(?)今回は図書館で入手した2作をご紹介致します。

 

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ロス・インディオス&桑江知子「Romance」(1995)

世田谷区の図書館にてレンタル。発見したときは驚きました、「私のハートはストップモーション」でお馴染みの桑江知子がロス・インディオスに参加していたとは!「別れても好きな人」「それぞれの原宿」等でシルヴィアとデュエットしたアーバン・ラテンムード歌謡の印象が強い彼らですが、実は女性メンバーは現在に至るまでかなりコロコロと変わっています。その内桑江が参加していたのは1993-1998の5年間。とはいえYouTubeに歌唱動画などはアップされておらず、本作の存在が現時点で唯一このジョイントを証明するオーパーツとなっています。ジャケ、かなり「いい天気」の時に撮ってますね~。皆いい顔してる。ロス・インディオスのキャリアの中でも恐らく最多の7人構成で画面がパンパンです。

曲目に往年の名曲セルフカバーが存在しないところは本作の◎ポイントです。桑江バージョンの「別れても好きな人」、恐らくステージなんかでは観られたことでしょうが、それが収録されていないことにより(良い意味での)珍盤度が増していると思います。参加陣は荒木とよひさ三木たかしのような演歌人脈の大御所から、「ロンリーチャップリン」「寿司食いねェ!」等の作詞を手掛けた岡田冨美子や大アレンジャーの若草恵、徳永英明との癒着でお馴染み(?)の坂本昌之、とそれなりにバラエティー豊かです。それもあってか、本作を一聴して受ける印象はあの往年のムード歌謡とは一線を画しているように感じました。とはいえ1995年感もそれほどでなく、1992年くらいのショボくれかけたアーバン歌謡をややゴージャスに焼き直したような…?しかしこれが結構良いんですね。あ、あと勿体ないのは、10の収録曲中半分の5曲が桑江のソロで、デュエットは4曲にとどまり、ロス・インディオスの看板である棚橋氏とのデュエットは僅か2曲のみという点。このせいで二組のジョイントアルバム、寧ろ「桑江知子、ムード歌謡を歌う」とかいう企画ものまがいの印象が強くなってしまっています。全曲良質でそこまでダレていないので文句のつけようがありませんが、もう一枚デュエット主体の作品を出してくれていても良かったのかな…と。

良盤なのかそうでないのかあやふやなコメントばかりでアレなので内容にも触れていきます。先行シングルがリリースされた1「Destiny~最後の彼氏~」は、いきなりロス・インディオスの既成イメージから逸脱したジェネリックテレサ・テン歌謡。エレピが切なく鳴く様やバラードものにおけるベタを突き進むメロウ構成は桑江の歌の上手さをしっかり引き立てているように感じます。遥か以前紹介したシシリア「香港ハーバーライト」の俗メロにも近いですね。とか思っていると2「いまさら赤い薔薇」は初っぱなから「ふたりきりのビアガーデン(「ハートカクテル vol.1」)」の松岡直也か?と聴き違うようなド・ラテン歌謡。BPMも早めで普通にクラブ使いしたい隠れた名曲。本作中では個人的にはベストです。アレンジャーは西木栄二という、フォークバンド「猫」やシティポップバンド「カーニバル」に在籍していた方だそうです。のりピーの「ノ・レ・な・いTeen-age」の編曲も彼、なるほど。彼の名アレンジは6「東京楽園(トウキョウパラダイス)」でも光ります。こちらは桑江とドラムの東郷太郎・本作からの新メンバー三崎一平の三名による歌唱。しかし2と同様ラテン風味の味付けが丁度いいですね…。1995年にも関わらずウォーターフロント周辺しか登場しない東京ソング、貴重です。スナックで歌いてぇ~。チャゲアスじゃないよ!な7「ひとり咲き」も、落ち着き払ったラウンジ気味ラテンが妖艶でお勧め。完全にポップスとは別次元の桑江の「上手」な歌声に惚れ惚れします。ホントに丁寧に歌う人だなぁ。

ロス・インディオス作品の中でも、また桑江作品の中でも比較的図書館における所蔵が見つけやすい作品なので聴くのにそれほどハードルは高くないのではないでしょうか。中古市場ではほとんど見たことないですが…。スナックをはじめとした-夜の街-に行くのが世間的に憚られる昨今ですが、だからこそ今求められているのがこの手のアルバムなのではないでしょうか。ぶっちゃけ今年のベストに入りそうなくらい好きです。

 

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陣内孝則「旋風児」(LP:1982 CD:1995)

大田区の図書館にてレンタル。福岡県出身で、めんたいロックバンド「ザ・ロッカーズ」のボーカルとして1980年にデビュー、2年後のバンド解散後には俳優業もスタートさせ「君の瞳をタイホする!」「愛しあってるかい!」等のトレンディドラマの名作に主演。現在も俳優活動と音楽活動を平行させて活躍しています。ですがやはり大方では俳優としてのイメージが定着し切っている印象ですね(蛇足ですが、自粛期間中は上記二作のドラマをTSUTAYAのレンタルで初めて観ました。久しぶりに通しでドラマ観た…)。

本作はそんな陣内のソロデビュー作。意外にも入手困難なようで、中古市場にもそれほど上がっていません。またもや図書館の恩恵に与りました。内容としては8割方は大したことありません。60年代を引きずったような舶来ロックンロールの体現サウンドに陣内の「俳優としての声と全く同じ歌声」が重なり、イナタくこっ恥ずかしくも嫌味のない作風となっています。シティポップなど皆無。シンセなんかもほとんど出てきません。予想通り。

では何故こんなものを借りたのかと言うと、小林旭のカバーが2曲入ってるからなんですね。希代のマイトガイである小林旭の唯一無二のコミック歌謡「ダイナマイトが150屯」「自動車ショー歌」がカバーされています。陣内は小林の信奉者で、「日本ロックの原点」として「狙って」カバーしたようです。「自動車ショー歌」の方はソロデビューシングルでもありましたが、車名が列挙されまくる歌詞ゆえに歌番組や有線で殆どかからず売れなかったそう。小林がスカパラとコラボし「アキラのジーンときちゃうぜ」をリリースしたのが1995年ですからその遥か13年前のアキラ節再評価となります。ちなみに甲斐バンドが8th「破れたハートを売り物に」で「ダイナマイトが150屯」のみをカバーした翌年でもあります。植木等大瀧詠一に担がれてリバイバルしたことを思い出しますが、小林もまた大瀧が大ファンだった人物なんですね、ここでは直線的には無関係ですが若干キモいほど似た流れ…。ちなみに陣内は後に小林と映画にて共演を果たしたり「美空ひばり物語」というドラマで小林役を演じたりしています。売れなかったのに演じさせてくれるのか…。

「ダイナマイトが150屯」は大きな変化ではないものの、必要最小限のロックンロールアレンジで、金管楽器主体である種「日本臭い」原曲の印象とは確実に別物となっています。「自動車ショー歌」は「陣内の自動車ショー歌」と改題(「孝則の」じゃないんだ…)され、詞も一部変更。特に「ここらでやめてもいいコロナ」が、最初期に使用されていたものの当時「要注意歌謡曲指定制度基準」なるものに抵触し変更させられた「ここらで一服シトロエン」に戻されています。アレンジはかなり(ロックなるものにおいて)大人しくなった印象です。爆走感のあるアキラバージョンに比べると、一般道を静静と進んでいるような…。YouTubeに一番のみを歌った動画が上がっていて、その印象に引っ張られているのかもしれませんが…。歌唱が陣内の癖が特に強いですね。

https://youtu.be/KZBq5GPxfv0

「陣内の自動車ショー歌

 

他だと4「スリップダウン」が若干ニューウェーブっぽくて気持ちいいかなぁ、とか6「ロックンローラー数え歌」がキャラソンじみていて彼らしいな、くらいの感想で特筆すべき部分はありません。ロックンロール俗盤としては面白いと思いますが何しろ専門外なので…。聴けて良かったです。