廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

2020年常譚

「今年あと2回は更新します!」と啖呵切ってからあっという間に12月…、完全に廃サロンをサボってました。年間ディスクレビューのようなこともぼちぼちしなきゃなぁと思いつつ、今年は個人的に様々なことがあったので、自分用の備忘録的に記録しておきたいなとも。そういう訳で年間ベストを決めるのに先立ちまして自分語りのメモをさせていただきます。音楽・カルチャー周りのことだけについて。この稿を読んでいただければ私が現在(2020年前後)何に興味があるか分かったり分かんなかったりします。過去最低の駄文の予感。

 

まず参加したライブやイベントについて。

今年最初に行ったライブはバービーボーイズでした。渋谷公会堂(現LINE CUBE SHIBUYA)にて1月に開催された追加公演のチケットを粘り勝ちで入手(代々木競技場のやつは何度トライしても無理でした…)し、4列目という最高の席でライブを堪能しました。konta主演映画「ふ・た・り・ぼ・っ・ち」の主題歌である「使い放題tenderness」をやってくれたのが嬉しかったなぁ。ここで何となく自分の中でバブル・トレンディ文化への区切りがひとつついたような気がしました。追っかけるのをやめた、とかではなく。その次のライブが2月のキノコホテル。これもまたチョ〜〜良かった。最新アルバム「マリアンヌの奥義」を中心にオールタイムベスト的選曲。キノコホテルに対しては熱烈に好き、というか盤が出たら必ず聴くくらいの追い方だったのですが、このライブで再燃した気がします。ヘヴィーでハードなパフォーマンスをする、かつライブに行きたいと思えるアーティストってそんなにいないんですけどキノコホテルはライブが近場であれば行きたい。ライブ終演後もそう思ってたんですが、ちょうどその頃から新型コロナの影が…。その月に渋谷・circusにて開催されたLocal Visions×lightmellowbuのイベント「Yu-koh」に参加した時から「イベントにおけるコロナ対策」というものがスタートしていたように記憶しております。あのイベントもちょっと常軌を逸してましたね…、生AOTQ氏・「2020年はニュージャックスウィングが来る」宣言・その他lightmellowbuの方々やパ音柴田さん、anoutaさん等との会話、全てが鮮明ではありますが今になってみると「あれマジで今年か?かなり前に感じる」ってなっています。多くの方が仰るように、今年は時間軸が歪んでいる。このイベントについては以前記事で感想を記述していますのでご興味のある方は是非。あ、この頃町あかり氏のソロイベントも行ってるな。あれもノンストップてんこもりで本当に良かったライブ。そこから約半年経ってやっとイベントに参加できたのが9月に渋谷・頭バーにて開催されたDJ.Pigeon氏主宰のDJイベント「DJ.Pigeonの知らない音楽」(渋谷のイベントばっか行ってんな)。当時ディグ欲がかなり落ちていた私にとってはリハビリテーションのようなイベントで、「何を、どこまでをクラブミュージックとして捉えるか」ということについて深く考えさせられました。

そこからまたもやライブはお預け状態だったのですが、つい先日青山で開催されたdip in the pool主催ライブ「departures gate 01」には行ってきました。これについてはどこにも感想を書いてなかったので少々長めに。本イベントは全3組のアーティストが参加し、いずれもダークでありながら優しい、ライブハウスとベットルームの狭間のようなイベント、という印象でした。その中でも甲田益也子氏(この日は赤髪を立て上げ色付きサングラスを着けたさながらDavid bowieの如きファッション、最高…!)のソロパフォーマンスの中で歌唱された大貫妙子「carnaval」のカバーのdub mix ver.がやたら格好良かった。こちらは既に今年の8月にstudio muleよりリリースされていまして、まだ購入していないものだったのですが、はっきり言って必聴です。https://superpitcherkompakt.bandcamp.com/album/carnaval-superpitcher-remixes

この時、開演前に物販を覗くとdip in the poolのまだ未購入だった最新アルバム(と言っても発売は5年前…)「Highwire Walker」が売っていたので買うか〜と購入すると物販のお姉さん(会場スタッフ)が「今日せっかく甲田さんも木村さんもいらしてるのでサイン頂いていってくださいよ〜」と仰いまして、「いやいやそんな!」「いいんですよー後でお時間作りますんで!」となり、本当に開演前に木村達司氏から、終演後には甲田氏からサインを頂戴してしまいました…。お二人と少しお話もできたんですが、いやー緊張したー。お二人とも非常に気さくな方で、「昨年のCFCFとのライブ行きました」と言うと喜んでいただけたご様子。甲田氏とお話ししている時に「あの、写真とかご一緒に撮っていただけたりしますか…?」と口走ってしまった際も「あ、いいですよー。マスク取りましょうか?」とこれ以上ないご対応を…。結果撮っていただいた写真で私、緊張しすぎて最悪に顔引きつってました。4年前に美川憲一氏と写真撮っていただいた時も嫌そうな顔して写ってしまったし、どうしてこうもここ一番に弱いんでしょうかね…。とにかく有難うございましたdip in the poolのお二方、そして会場のお姉さん。勿論来場人数を制限しての開催だった故のご対応かとは思いますが、今年嬉しかった出来事のベスト3には確実にランクインしますね。シンプルな自慢で申し訳無いですが、このことは廃サロンに記しておきたかった。

行けた音楽イベント・ライブはどうしても制限されてしまった今年ですが、そのいずれもが最高でした。いつもなら嫌な思いすることもたまにあるんですけどね。それが皆無だったな…。

 

次に音楽ディグについて。

12月現在、正直CDに対するディグ欲はかなり落ちています。めっきりブックオフにも行かなくなったし、レコード屋でも粘るように漁ることはかなり減りました。だから廃サロンも2ヶ月停止してたんですね。ですが今年は個人的にはVaporwaveから移行してニューエイジへの接近、また1970年代以前の昭和歌謡・ムード歌謡への興味が育まれた年でした。ニューエイジに関しては今年発売の「ニューエイジディスクガイド」やSoftware「Digital Dance」や吉村弘「Green」の再発の影響が強いです。とはいえ大体は一般的に名盤とされているものを聴くに留まり、自分で「発掘」できたのは以前レビューした「空のささやき something in the air」くらいのもの。だってそもそもブックオフに良質隠れニューエイジなんてほぼ転がってないじゃないですか。どれも同じに聴こえやすいこともあって、トレンディ歌謡を探すのに比べて遥かにハードルが高い気がする。ともかく「空の〜」かBrian eno「reflection」のどちらかを通勤時に毎朝聴くという1年でした。

Before80’s歌謡曲をしっかり聴くようになったのはここ2ヶ月くらいなのですが、私が現在一番夢中になっている音楽カテゴリーは間違いなくここです。切欠は新宿ゴールデン街。今年の秋、予てより気になっていた昭和歌謡スナック「夜間飛行」に通うようになってしまい、私の人生はまた一段とおかしくなってしまいました。初訪問の際にスタッフの女性とお話していて「あ、明日ウチのママのギャランティーク和恵さん(歌手。ミッツ・マングローブメイリー・ムーと共に「星屑スキャット」としても活動中)がDommuneで配信やるんで観てくださいよー」と言われまして、それを町あかり氏のレコ発配信の後の流れで観てみたんですね。そこで和恵さんの「2020年において「歌謡歌手」である」という点に惹かれてしまい、それからはのめり込みがまー早い早い。あっという間にライブのDVDを2枚も買い、音源を集め、和恵さんが夜間飛行に立つ日には店に赴く日々。何がコロナ禍だ、と言わんばかりの不真面目さ(対策は大前提ですが)。その中で彼女がリスペクトしカバーしている昭和歌謡歌手を聴き漁るようになり、今に至ります。梓みちよ朱里エイコ黛ジュン・豊島たづみ・小柳ルミ子等々、元々なんとなく好きだった歌手から全く存じ上げなかった歌手まで、今正に勉強中です。ここに来て更に歌謡曲にのめり込める自分が不思議で堪りません。とはいえディスコ・ブギー(言い換えるとフリーソウルっぽいものがこの頃多いのかな)感のあるものを掘っている傾向は相変わらず。例えば梓みちよの打ち込みまみれ期(和恵さんもカバーしている「よろしかったら」「寂しい兎を追いかけないで」等、テクノ歌謡と言っても過言ではないほど眼を見張るような楽曲もあります)とか。この辺りを聴いていて、今になって何度目かの「DJやってみたいなぁ」と思う気持ちが沸々とキテますね。

レコ屋やブックオフでのCDディグが控えめになってきたのはここにも原因があります。つまり、図書館・TSUTAYAで借りるくらいしか安価で入手できない音源ばかりだからですね。この頃の歌謡曲の盤が投げ売りコーナーに落ちてることはまず無いです。また、バブル掘りに区切りをつけ、より昭和に突き進むようになったとも言えます。当ブログは特に音楽性や媒体に拘っていないものの、何となく「90年代以降の」「安価に入手した」音楽を紹介してきたので、今後大きく方向転換に迫られるか、あるいは廃サロン閉鎖か…といった危機、なのか…?ま、これからも多種多様なものをなるべく深く好きになっていけたらいいなという気持ちは変わりません。図書館ディグは尽きませんし、ね。

 

音楽ディグの話のついでに、今年のその他のディグについても。その他というのは古VHSと古雑誌です。VHSが古いのは当たり前ですが。

VHSは正直今年あんまり買ってませんねー。今年の始め(昨年末だったかも?)にまとめ買いした「男女7人夏物語」「男女7人秋物語」の全VHS(一本あたり100円という投げやり投げ売り具合)をコロナ禍が叫ばれ始めた頃(3-4月)にイッキ観した思い出は強烈にあるんですけど。完全に初見だったので鮮烈な感動を覚えたハズなんですが、今になってみると「池上季実子手塚理美は最高」とか「うわ、「秋」に岩崎宏美出てたんだ」とかそういう浅はかな感想くらいしか覚えてないな…。ちなみにVHSではなくレンタルですが、この調子でトレンディドラマを観まくろう!となって、陣内孝則が主演を務めた「君の瞳をタイホする!」「愛しあってるかい!」の2つもイッキ観しました。こちらも「浅野ゆう子最高!KONTA最高!」くらいの記憶。細やかな意匠についての記憶が短期間で消滅している点も含めてのトレンディドラマ、ということなんでしょうか。あ、「愛しあってるかい!」の小泉今日子の自宅の内装とかは良かったかな。

VHSに関するデカイトピックはこれくらいで、それ以降は駿河屋で他の買い物ついでにポツポツ買う程度。こないだ久々に買ったVHSはフランク・ロイド・ライト落水荘」のドキュメンタリーとか、銀座エルメスの映画館で上映してたのに見逃した「モデルカップル」(未だ観てないです)とか。あ、あと世界の富豪の邸宅を紹介するだけのVHS、「世界の家」。

雑誌は今年80年代の「anan」と00年代の「relax」を集め始めました。「anan」に関しては(同じマガジンハウスなので当然なものの)80年代の特集が「BRUTUS」と被っていることが多く、やっぱり「夜の街特集」「香港特集」「イケてる飲食店特集」なんかを集めてしまいます。「relax」はついこの間渋谷PARCOで開催されていた復刊記念展からポツポツと収集中。ペプシ特集とかモスバーガー特集とか、やっぱりチェーン店に関する特集号を買ってますね。カルチャー誌がカルチャーとして飲食店を、しかも〇年代の「真っ当なギャル男が書いたような」文体で取り上げているのが好き。そういえば「TOKION」というカルチャー誌のマクドナルド特集も買いましたけどあれが一番最高だった。深夜の店内でタバコ片手にダベるホスト集団とか、かつて存在したマクドナルドミュージアム等の貴重な写真が豊富に掲載されていて、マックファンは必読。あーーー、どんどん趣旨から逸れていくんですが今年図書館で日本マクドナルドの社史のようなものを借りて読んだのも懐かしい。「マクドナルドの社員は毎年社長からお年玉が進呈される(現在は不明)」等のトリビアが身につきました。

 

バービーボーイズからマクドナルドまで、そんな2020年。人間として進化せず、代わりにこれまで大事に集めてきたものを温める年だったのでしょうね、と振り返ってみて思ったりします。「アレいいよね!」と言えるカテゴリーが浅く広く、ただ細かく増えた、とも。来年はもっとビッグなカテゴリーを会得して今居る界隈と反復横跳びしてみたいなと思います。例えばクラシックおじさんになるとか。今年の音楽ベストはまた次回やりますー。現時点でやってる方全然見ないんですがなんでだろう。