廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

玉石混交な収穫まとめ その15

珍しく短いスパンで更新してみました。

私事ですが、この度辞令が出まして、6月より現在の勤務地から異動することになりました。とはいえ相変わらず都内勤務には変わりなく。ただ、現職場の近くにある図書館に約3年間足繁く通っていたのでそこだけが名残惜しい部分です。その某区はCDの新譜に強く、地域住民もそのことに気づいていないのか、TSUTAYAで新作扱いされている作品でもヨユーで借りることができるのです。ディグにおいて購入よりもレンタル優先のスタンスで取り組んでいる私としてはちょっと残念なんですよね。新天地(引っ越しはしませんが)の図書館はそれほど強い所蔵がないようなので、異動するまでの約2週間というタイムリミットの中でギリギリまで聴きたい盤を借り尽くしておきたい所存でございます。

それでは今回は3枚をご紹介。いずれも「タレント盤」に該当しそうな作品です。


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所ジョージ井上鑑「「デジタル所さん」サウンドトラック「電脳音楽集」」(2001)

御茶ノ水ディスクユニオンにて200円で購入。2000年より放送されたCGアニメ「デジタル所さん」で使用された楽曲を収録したサントラ盤です。所ジョージといえば世間一般的には「所ベースなど、趣味を映してもらって食ってる人」「VTR主体の中庸な番組で映像を観てるだけのタレント」「特に何もしてないのに好感度がやたら高いタレント」という底意地の悪い括られ方をすることの多い(私だけの主観かもしれませんが…)人物ですが、一応肩書は「ミュージシャン」です。ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの前座・お付きの歌手としてデビューし宇崎竜童からの愛重を受け、ステージでの軽妙な語り口を見出されTVデビュー。初っ端から司会の立ち位置が多かったようですね。90年代だと不定期で「ものまね王座決定戦」の司会を務めていたり、そんなこんなで現在ののらりくらりとしたスタンスを築き上げた、というのがざっくりとした所ジョージ史となります。そんな経歴の中、誰が企画したのか2000-2001年に日本テレビ系で「デジタル所さん」というCGアニメが放送されます。カートゥーン調で描かれた二頭身の所ジョージとその愛犬インディー(笑)が巻き起こすドタバタコメディを主とした5分アニメーション。深夜帯の放送だったのでそれほど認知されていないようですが、所が「みんなのうた」に「歩いてみっか!」を提供した際に付けられたアニメーションと同じ制作会社の手によるものなので、そちらでビジュアルを観たことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。そしてその放送前期の音楽監督を手掛けたのが、あの井上鑑(後期はアニメーションの音楽監督の多い大谷幸)。井上は当時所のアルバムでアレンジャーとして参加することが多く、そこでの縁でしょう。脱線しますが、所ジョージの音楽性とは、まず歌詞は(大衆の予想通りかもですが)植木等嘉門達夫を足して2で割ったようなもの。朴訥としたお調子者コミックソングをこれまで異様なまでの数発表しており、ソロアルバムのディスコグラフィーも相当数(2021年現在で29枚!)です。また、トラック面を見るとこれは完全にアコギ主体のブルースばかり。ここからも彼の趣味人らしさが伺えますね。

当然の成り行きながら本作も、サウンドトラックとはいえ中庸なブルース調のインストが散りばめられています。しかしそこは井上鑑の監督作品、デジタルな打ち込みサウンドも多用されています。「電脳音楽集」というタイトルなのでむしろ打ち込みが大半を占めてほしかったものですが…。そのうち目、というか耳を惹くトラックとしてはカントリーと4つ打ちが気持ちよく融合された「CITY SLICKER」、「カノッサの屈辱」のOPを電化しただけか?と思うほどパクリ感溢れる「BASEMENT」、キック強めで気持ちいいラテン秀作「SECRET SOCIETY」、まさかのドラゴンファンクな「CHINESE WALL」「CHINESE LANTERN」等。いずれも1-1.5分程度の楽曲なのでカンフル剤的に聴き上がることができます。逆に言うとその他は至ってサントラ的で中庸。しかし隠し玉は最後にございました。本作にはインスト以外にも所による歌モノが4曲収録されていますが、ラストトラックである「泳げたいやき屋のおじさん(ヒトマカセヴァージョン)」が至高なのです。「泳げ〜」は同期に発表された所のソロアルバム「洗濯脱水」にも収録されている、言うまでもなく「およげたいやきくん」の替歌なのですが、そちらはアコギのみで奏でられた軽やかで四畳半な印象のトラック。しかしながら本作に収録された「ヒトマカセヴァージョン」はまさかのユーロビートアレンジ。どちらかというとパラパラ舞踊向けなトラックにイメチェンされ、BPMも激早に変貌しています。後奏では一瞬ピンクレディー「カメレオン・アーミー」のイントロをオマージュしたようなフレーズも登場し(意図的なわけないよな、多分)、大変興味深いアレンジとなっております。当楽曲はアニメでも重用され、楽曲に合わせて所ジョージとインディーがパラパラを踊るだけの回、という謎放送が幾度も制作・放送されていました。↓を観ていただければ「全て」がお分かりになるかと。所ジョージとパラパラ…。

デジタル所さん #015 スロットでパラパラ - YouTube

 

以上、200円ぽっちで我々の所ジョージ観が変わる珍盤でした。大してレア盤でもないので「泳げ〜」欲しさに手にとってみるのはアリかと思います。


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岡安由美子「パリの中国人」(1987)

こちらも御茶ノ水ディスクユニオンにて680円?で購入。結構前のことなので失念してしまいました。女優にして歌手・カーレーサーの面も持つ岡安由美子の3rdにしてラストアルバム。当ブログでもかつて言及しましたが、私は「男女7人物語」が結構好きなので本作も見つけ次第即購入に至りました。元々彼女の歌唱はゴールデン・ベスト等で聴いたことがあり、その「棒」っぷりは存じ上げていたのでそれほど期待せずに…。内容は案の定です。ジャケやタイトル、曲目から「バブル・エスノポップもの」としてかなり期待してしまう作りになっているのですが、歌声もトラックも「そうでもなさ」が際立ちます。結論から申しますと、本作はジャケの素晴らしさで評価を完結させてしまうのが良いでしょう。アートワークだけ見れば正直これ以上のものは中々発見できません。当時のananの表紙から飛び出してきたようなコーディネート、凛とすました岡安の表情。これで音がバキバキならなぁ。歌手活動初期のような元気いっぱいボイスが比較的影を潜めているので聞き苦しいとまでは言いませんが、彼女の低音がフューチャーされているからこそその表現力の浅さが目立ってしまい残念。トラックももう少しエスノっぽくあれば良いのに、ハンパにビッグバンドや中庸なギターサウンドを採用していたり、打ち込みにも拘りが見えなかったりと、はっきり言って全部聴き切る前に飽きが到来してしまう。唯一「オッ!」となるのは表題曲「パリの中国人」くらいでしょうか。歌唱もそこそこにインスト、というか洋画創成期のような印象のサンプリングが多用された箇所が渋くてカッコいい。この路線でもう少しコンセプチュアルなつくりにした方が良かったのでは、と悔やまれます。

もう一度言いますが、ジャケは最高。安値で手に入ればインテリアとして採用してもいいかもしれません、という最悪な締めで失礼します。


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石野陽子「Kissまで待てない」(1989)

目黒区図書館にてレンタル。石野真子の妹にして女優の石野陽子(現いしのようこ)のアイドル期にリリースされたアルバムです。「志村けんのだいじょうぶだぁ」でコメディエンヌとしての頭角を表し始めた頃の作品ですね。まずはCDジャーナルのサイトからレビュー文を読んでみましょう。

 

「なんだかんだいったってこの娘はしぶとい。そのへん姉ゆずりかしら? 得意の都会娘のうつろい描写ものが主だが楽曲のメリハリではかなりいいもの出ている。歌謡色を濃く出したのが勝因であろう。ジャケットがぶっきらぼうで不親切。写真は多めに。」

 

と、毎度の如く冷たく吐き捨てるような文章ですが、なかなかどうして高評価に当たるんじゃないですか。実際聴いてみても、当時にありがちなユーロビートカバーをメインに据えたノれる楽曲が多く、バブル前後の打ち込み好事家の私としてもかなり好みの作品となりました。表題曲「Kissまで待てない〜My World〜」(イタリアのユーロビート・シンガー、Sophieによる「My World」のカバー曲)から始まり、続く「ロマンティック神楽坂」(なんちゅータイトルよ)への流れがいきなりディスコ歌謡してて至高でございます。その他ロカビリー歌謡してるものあり(「ロマネスク・ヨコハマ」)、少女アイドルらしくもありつつカラオケスナック対応な謎な立ち位置の楽曲あり(「雨のチャペル通り」)、全編ほぼ捨て曲ナシの秀作となっております。前述のレビューでも言及されておりましたが、ザ・歌謡曲な打ち込み具合と石野のアンニュイで危なげながらずっコケない歌声が有象無象に消え入ってしまわぬ「芸能界」っぽさを保ち得るクオリティに仕上げているように思います。華々しくはないものの確かなパワーがあり、一流のB級として活きている。逆に言えば王道を行き過ぎてギミックに欠ける節があるのでどこまでもベストアルバム的(実際ベストアルバムだったような気もしますが失念)。架空のヒット歌謡をひたすらに聴いている感に陥るので和モノとは一線を画します。でも本当に良いアルバムだと思いますよ。

石野陽子 KISSまで待てない-MY WORLD- - YouTube

 

シングルの「ロマンティック神楽坂」のジャケが最高すぎて…。おやじGALS「今夜はオ・イェー!」と並べて棚に飾りたい…。

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玉石混交な収穫まとめ その14

毎度ながらご無沙汰しております。5ヶ月ぶりですって。

本ブログどころかTwitterもそれほど投稿しなくなり、すっかり社会内外における隠遁生活で苔が生えまくっております。CDディグは相変わらず継続していますが、年末年始あたりで所謂60-70年代の「和モノ」にハマりまして、こういう界隈の作品群はコスられすぎている故「私がわざわざ再レビューする必要もないな」と…。成果物をあえて紹介することもやめてしまいました。しかしながら、あの、成果物を他者と共有できないディグほど虚しいものも無いと個人的には思っているので(黙々と我流のディグを征く方々が数多いらっしゃるのは重々承知ですが、どちらかというと私は「あーアレ良いっすよね!!」とかしたい)…。また仮にレビューを続けていたとしても、何しろ弱小ディガーな身分のためそれほど盛んにネット上で他のレビュアーの方々と情報交換できる訳でもなく、「そういう」リアルなイベントもここ最近は殆ど無いため直接お話などもできませんで。よって最近は致し方なく黙々ディグをしながらウマ娘に熱中する虚無生活を送っております。ジュリアナテクノを聴きながらウマ娘育成してると捗りますよ、やっぱりユーロビートは作業用BGMにうってつけだったんですね。

しかしながらこんなコロナ禍でもディグへの真摯な姿勢を保ち続けようと活動されていらっしゃる方も沢山いらっしゃいまして。先日カルトさんのディグブログ「ナチュラル・デチューン」にて公開された「Why dig? How to Dig? 〜音源蒐集のススメ〜」という記事を拝見し感動してしまいました。その詳細なディグの手引にも勿論ですが、当ブログでかつて雑に記した「(目黒区立)図書館ディグの方法」を紹介していただいたことにもびっくりしました。ディグの参考にしていただいていたとのことで、大変恐縮させられると共に「私ももう少し頑張らねば」と武者震いさせられたのでした。カルトさん、相互フォローとはいえ交流は全く無かったのでとても嬉しかったです。本当に有難うございました。カルトさんの当記事はディグ初心者(ディグ初心者ってなんだろう…?)の指針になり得るのは勿論、熟練者が基本に立ち返るのにもうってつけだと思いました。はっきり言って必見です。

Why dig? How to Dig? 〜音源蒐集のススメ〜 - ナチュラル・デチューン

 

では四の五の言ってないで久方ぶりの雑レビューを始めていきたいと思います。今回はリハビリなので枚数まあまあ内容薄めというよわよわ紹介になるかと思いますがご了承下さいませ。


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加山雄三withノーキー・エドワーズ加山雄三with NOKIE EDWARDS ― 永遠のギターキッズ」(1997)

太田区図書館にてレンタル。ご存知若大将とザ・ベンチャーズの初代ベーシストであるノーキー・エドワーズのジョイントライブの模様を収録したライブアルバムです。共に60年代の日本におけるエレキブームを牽引した偉人であり、当日の少年たちの憧れの存在でした。その2名がエレキギターを「エレキ」とわざわざ呼ばれなくなってしまった時期に謎の遅れ馳せ共演。しかしながらこの盤、あのサウンドが好きならばかなり良いですよ。加山のハイパーランチャーズ(お付きのエレキバンド。1994年結成)を率いての名曲披露の後、ノーキーや特別ゲストの現ザ・ベンチャーズによるマスターピースの演奏、そしてクライマックスは3組による共演プレイという流れになっておりますが、全編通して音圧が良く、個人的には全盛期の録音を聴くよりもよりパワフルでノれるサウンドに仕上がっていると感じました。加山を差し置いてアレですが、私は「Walk Don't Run(急がば回れ)」がいかにもな歌謡曲的進行をしていて大好きで、本作で2度もハイクオリティに演奏されていて嬉しい。ベンチャーズのライブ映像なんかをYouTubeで観ていると案外迫力減退なプレイも散見され「アレ?」みたいな場合もあるのですが、本作に収録されている音源はそんなこともなく十分キモチイイです。「Black Sand Beach」も脂のってるなぁ、村下孝蔵バージョンの方が好きだったりするけどね(村下のライブ盤で聴けます。ご存知の方も多いでしょうが何なんでしょうあのバカテクは)。ジョイントライブの音源としてでなく、単に「日本とエレキ·テケテケサウンドの関わり」を堪能するのにはうってつけなアルバムだと思いました。クライマックス直前に「君といつまでも」を歌うのはどうなの…?という気がしないでもありませんが。これと同時期にリリースされた現ザ・ベンチャーズによるセルフカバーアルバム「V-Gold」を聴いておけば間違いないです。

そういえば加山の光進丸って結局どうなったんでしょうね。


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I’veShort Circuit」(2003)

秋葉原駿河秋葉原駅前店の店頭に置かれたエサ箱にて110円で購入。主にゲーム音楽を手掛けるクリエイター集団「I’ve」による、所謂美少女ゲームの電波系テーマソングを集めたコンセプトアルバムです。

2021年、GW真っ只中の秋葉原はディグするには非常に微妙な街でした。レコファンが開店して久しいもののいまいちディグり甲斐がなく、ブックオフは(近頃のブックオフはどこもそうですが)品揃えがちっとも魅力的でない。後は御茶ノ水や神保町まで歩いてレコード屋巡りをするか、それほど移動せず駅前でデカめのオタクグッズ屋さん(ご時世的に休業中の店舗も多かったですが)を覗いてアニソン・ゲーソン・同人CDをディグるか…。後者に関しては私それほど詳しくないんですよね…。しかし、投げやりな気持ちで駿河屋のエサ箱を覗いてみると結構変なCDが並んでいてちょっと面白そう。その中で110円だった本作とその続編「Short Circuit 2」を購入。決め手は1の方に伝説の電波ソングさくらんぼキッス〜爆発だも〜ん〜(Kotoko)」が収録されていたこと。かつてYouTubeでPV付きで聴いたこの曲の奇妙でグロテスクとさえ言える中毒性には以前から色々な意味で一目置いていたのですが、TSUTAYA等では音源がなかなか入手できず。そんな中での予想だにしない僥倖でした、一応。

さくらんぼ〜」に関しては↓を一聴いただければ全てお分かりになるかと思いますが、電波系でありながらバリバリの打ち込みサウンドと大味なギターが「悔しいけど気持ちいい…」というやつ。歌詞にゾワゾワしない心持ちで聴ければ結構ハマってしまう。ネット界隈ではハチャメチャに有名みたいです。

KOTOKO / さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~ - YouTube

 

このヘロヘロな曲を歌うのはKotokoという歌手。アニソン・ゲーソンを主戦場とする大ベテランだそうです。大メジャーな案件(?)も多く、特別「知る人ぞ知る」感はないようです。他に色々な曲を聴いてみるとカッコいい声(雑)も出せています。歌手ってすごいよね。

本作では収録曲の殆どをこのKotokoが歌唱していますが、分かりやすい電波曲と「テクノ歌謡が好きなら普通にカッコいいと思えるかな?」な曲が半々くらい。後はKotoko以外でソロを務める詩月カオリの楽曲がどれも良いです。甘ったるいだけでない、清涼感溢れる歌唱が聴けます。「Pure Heart 〜世界で一番アナタが好き〜 –Remix–」はいかにも媚び媚びな歌詞とキラキラピコピコなアレンジが2003年らしさ満載。こういう楽曲ってもう生まれないんだろうなぁ。ねっとりと纏わりつくような甘さ、だけれどちょっと切ない、守りたい…、みたいな? は?アホらし。って気張った世界観もなきゃ絶対駄目だけどさ。歌謡曲って架空を歌うものじゃないですか。あくまで好き好きが2番手にあるべきであって別にこういうのが存在すること自体が殴られ蹴られされるべきじゃないと思う(謎の被害妄想)。

PCgame PureHeart Full / 詩月カオリVer. - YouTube

 

という訳でこれこそ象徴としての「2003年テクノ歌謡」の一端を担い得る盤のひとつなような気がしました。さくらんぼ、と言えば大塚愛のアレなんかも実は「2003年テクノ歌謡」だったんじゃないかな、などと思いました。


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「パラパラ大パニック 2000BEST」(2001)

太田区図書館にてレンタル。ギャル向けの、フリを付けて踊るためのユーロビートアルバムのシリーズ「パラパラパニック」のベスト盤だそうです。私はユーロビートが全般好きですが楽曲の拘りなどが無く、図書館やTSUTAYAにあるアルバムを今でも手当たり次第聴いている感じなのですが、本作はジャケに惹かれて聴きました。本シリーズのアートワークは基本よくある「ギャルたちが手をばぁーっと広げた写真」で構成されているのですが、何故か本ベストだけチャイナ。こいつだけ雀荘。カッコいい〜。

収録曲は当然ユーロビートなのですが、ジュリアナテクノではないのでL.A.Style「James Brown Is Dead」のような往年の名曲や「Night Of Fire」のような大ネタは一切排され、ひたすらBPMの早めな刻み込むが如しのアレンジがノンストップで聴けます。もしかして全部シリーズ用のオリジナルなのかな?途中途中で日本語の楽曲もあったりして単なるパラパラアルバムで終わらせてくれないところがちょっと良い。80-90年代のユーロビート歌謡でない、パラパラ歌謡ってあんまり見つからないのである意味希少な気もします(?)。

↓本ベスト用のものではありませんが、シリーズの教則DVD映像が転がってました。いいねぇ。

Para Para Panic! 1 - YouTube


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紫艶「渋谷のネコが呑も呑も!」(2002)

渋谷TSUTAYAにてレンタル。演歌歌手、紫艶による1stアルバムです。彼女は歌手として活動はそれほど注目されませんでしたが、当時の桂三枝(現・桂文枝)と長らく愛人関係にあり週刊誌を騒がせ、騒動後は一時セクシー女優として活動、年月が経ち2019年に突如孤独死し帰らぬ人となりました。

経歴は楽曲を左右するものではないので置いておくとして、打ち込み演歌・ジャパニーズポンチャックに当たるものが大好物な私にとっては本作は良作でした。まずタイトルとジャケが良いですよね。00年代のスナッキーなイメージ。彼女の歌唱は結構「しっかりめ」で、企画モノ?と舐めてかかると良い意味で裏切られます。ポンチャック的なものも散りばめられつつ、ラテン系アレンジというこの手の作品におけるノルマもきっちり回収(「時間差ホテル」)。こってりとした「艶歌」もいける。ラストに収録された平山みきのカバー「真夏の出来事」は予想を裏切らない平均点っぷり。演歌って打ち込みまみれで大味だから良いのよね」とそういうコーナーを漁るような方にはうってつけの盤なんではないでしょうか。演歌と打ち込みの癒着は言うまでもないですが、ここまで胸焼けするほど露骨なアルバムもなかなか珍しいような。

表題曲である「呑も!呑も!」のPVも(画質含め)完璧です。こういうの観てると長谷川真吾「馬っ鹿じゃなかろかルンバ」とか思い出しますね…。最近出会った演歌アルバムだと最推しです。

呑も!呑も! 紫艶 - YouTube


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chekov 「psych out」(1998)

秋葉原レコファンにて100円で購入。先ほど「Short Circuit」の項で「アキバのレコファンはいまいち」と記しましたが、それでも秋葉原に用事のあるときには大抵寄るようにしています。といってもJ-POPの100円棚はどこででも買えるような盤しかないのでほぼ見ず、毎回洋楽の棚から直感で1-2枚抜くくらいのディグになりがち。テクノやトロニカで当たり盤があればいいな〜という殆ど期待しないテンションで買うのですが、本作はかなり良作でした。

chekovというアーティスト、検索しても殆ど情報が出てきません。 ドイツのエレクトロニカレーベル(?)であるDeck8に所属していたアーティストのようで、discogsによると2002年までに本作含め4枚のアルバムをリリースしています。作風はテクノ成分強めのラウンジもの。午後に家事でもしながらゆったり聴ける、というぬるいラウンジではなく、重たい打ち込みやジャングル等が多用されたハードコア系な音作りがなされています。

Chekov - It Came From Outer Space - YouTube

 

フリーソウルっぽくもあり、渋谷系の元ネタにありそうな感じともとれますが時代的にはズレますね…。「Stereofonic Sounds」とか言ってるし…。

なんだろうな、音はすごく良いんですけど、オタクくんが女のコに「モテたくて…」作ったり流したりするような世界観っぽくもあり、そういう穿った聴き方をしても面白い盤なのかなぁと…。ジャケの安っぽさも○。

何しろ情報がほぼ皆無なので実店舗では狙ってディグりにくそうですがネット上では安価で出回っているのでついで買い等にオススメです。普通にカッコいいので。渋谷のときもそうでしたが、レコファンは安い無名盤を買って、聴いて調べた後もずっと霧に包まれたような気分になれるのがいいですね。

 

…久々のレビューでしたが案外量書けましたね。他にも沢山発掘してはいるのですが筆のノる盤とそうでない盤があるのは別問題で…。なるべく続けて次の紹介ができるといいのですが、あまり期待せずにお待ちいただけると幸いです。

廃サロン的2020年の17枚

さて、廃サロン的2020年ベストを紹介する、のですが、選盤の結果ちっとも絞り込めず。今年リリースの良作もなかなか多かったので自分の中で切り捨てるのは惜しい、と結局選出した17枚(恐ろしくハンパ)をそのまま残してみました。その分コメントは控えめに…。名盤との認識が浸透している作品に関してあえて私ごときが述べる必要もなかろう、ということでご了承下さい…。別の稿で触れた作品に関してもコメントは割愛気味にさせていただきますね。例の如く順位付けはせず、リリース年等に関しても順不同でございます。


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1.STUDIO MULE「CARNAVAL SUPERPITCHER REMIXES」(2020)

前稿でも取り上げました。80sの和モノ再提示の担い手であるSTUDIO MULEプロデュースによるカバーアルバム「BGM」に収録されていた、原曲は大貫妙子歌唱でYMOが手掛けたマスターピース、当作では甲田益也子(dip in the pool)がカバーした「Carnaval」をドイツのDJ、Superpicherがリミックスした作品が本作です。ややこしくて申し訳ありません。今月のdip in the poolのライブで甲田さんがパフォーマンスしているのを観て慌てて検索をかけるとLPのリリースだけでなくbandcampでもデジタル配信されているのを発見。早速購入し、毎日のように聴いています。リミックスは3曲収録されていて、「main mix」「dub mix」「ambient mix」と、いずれも匠な仕事が光るアレンジとなっています。「main mix」はパーカッションが強烈なものの原カバーの「バンドとしてのYMO」っぽさが排された、ミニマルで夢幻に揺蕩う踊り方が可能な良作。甲田さんの耽美な声とのマリアージュに関して、原カバーは「パワーの違和」を、「main mix」は「永遠の一部」を楽しめるアレンジとなっております。件のライブでも披露された「dub mix」は消え入るようなボーカル処理が印象的で、その分ベースラインが強調されています。BGMに最適。「ambient mix」は「よくぞ!」と思わず感嘆が漏れてしまう、陰ながらな白眉リミックス。ある意味クラブでは絶対に聴きたくない、帰り道に聴くべきな「余韻」に支配された一品です。

ここにはテクノ・耽美・ニューエイジ・そして少々の俗と、私の聴きたい全てが詰まっているように感じました。順位付けはしない、と銘打ったものの、今年一作だけ選ぶならコレかも知れません…。


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2.「SOMETHING IN THE AIR 空のささやき」(1994)

以前紹介済みでございます。上野ブックオフでゲットした「ニューエイジ部門」であれば今年一位な佳作。温暖と清涼の狭間で死んだように眠る、そんな贅沢のための音楽。


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3.ロス・インディオス&桑江知子「Romance」(1995)

こちらも「玉石混交」にてご紹介済み。今年はムード歌謡にどっぷりな一年でもありましたが、その中でもロス・インディオス、特にこのまさかの桑江知子とのコラボレーションは至高。「いまさら赤い薔薇」「東京楽園」はトレンディ歌謡としてクラブ使い余裕、と勝手に認定しています。桑江知子石井明美ロザンナと仲良し過ぎるのが気になる。


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4.キノコホテル「赤い花・青い花 e.p」(2020)

「コロナ禍」を意識してマリアンヌ東雲が宅録で制作した楽曲をバンドにてレコーディング。表題曲ではギターリフの疾走感(焦燥感とも)と明け透けな歌詞がディストピアトーキョーへの誰もが持ちうる反感を浮き彫りに。CD限定のカップリングには野坂昭如のカバー「マリリン・モンロー・ノーリターン」も収録。これが素晴らしい。ライブでは恒例のように披露されていたようですが、ディストピア的EPには最良の選曲かと。野坂版のイナタさ・頑固さがスタイリッシュに研ぎ澄まされたハイボール的カバー。アートワークのデザインを用いた手ぬぐいが特典として付属していましたが、使いやすいような使いにくいような不穏さ。


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5.町あかり「それゆけ! 電撃流行歌」(2020)

70-80sアイドルのカバーに行かないのがあざといよね〜と穿った第一印象を抱いてしまった作品です。昭和歌謡的打ち込みアプローチが匠なシンガーソングライター、町あかりの初のカバーアルバムは戦前戦後の流行歌でした。とはいえ新進気鋭のトラックメイカーに依頼したアレンジはいずれも「一周して今」な打ち込み。クラバーもニッコリな作りは流石です。「青い山脈」のバッキバキなやり過ぎ具合が底抜けに不穏で好き。


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6.ギャランティーク和恵「ビューティフル・アルバム」(2007)

出ました。前回の「2020年振り返り」でもご紹介したギャランティーク和恵さんの、2007年にリリースされた1stアルバム。70年代の歌謡曲を中心としたカバー集となっています。本作を聴くと近年の和恵さんの艶っぽい声には変遷があったんだなぁと思わされます。そんな軽やかな美声を楽しめる本作ですが、選曲はこの時から限りなくマニアック。事前に知っていたのは「銀河系まで飛んでいけ!」くらいで、「サイケな街」「芝居をする女」「手のひらの中の地図」等の知る人ぞ知る極上の昭和歌謡が並びます。特に佐良直美「芝居をする女」なんて彼女のどのベストにも収録されてないよ!そこで更に、選曲だけ独特なマニアに留まらず丁寧に和恵さんなりの歌い継ぎを成し遂げているのがまた素晴らしい。現在では中古盤を掘るくらいしか入手方法が無いのが惜しいです。

 

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7.梓みちよ「GOLDEN J-POP/THE BEST 梓みちよ」(1998)

で、こちらが和恵さん経由で愛聴するようになった一枚。梓みちよの70-80のアバズレ歌謡期の楽曲を纏めたベストアルバムでございます。アレンジはテクノ歌謡のカテゴリーに入れても遜色ない程のピコピコもの多し。「よろしかったら」の完成度は言わずもがな、「寂しい兎を追いかけないで」もまた気高い女の余裕とペーソスが過剰な打ち込みに乗せて歌われる佳作。イントロの「ピッピッピッ」と鳴るリフは永遠に聴いていられる。バブル期前後の文化を追っているとアンチの多さに気付かされるアズアズですが、私個人として好きになりがちな「SF・サイバーパンクアニメの敵キャラが組んでるバンドのフロントにいそう」という条件を軽々クリアしているという点においては何の問題もなく愛好させていただいております。

 

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8.ISABELLE ANTENA「HOPING FOR LOVE」(1987)

アンテナ、遅ればせながら今年どハマリしました。今秋、下北にある某ナイトカフェを初めて訪れた際にたまたまかかっていたレコードが本作だったのです。音だけ聴いていて誰だか分からなかったので店主さんに「これどんなレコードですか?」と尋ねたところジャケを持ってきていただき「あーアンテナってこんなんなんだ!」とちょっと感動。アンテナのイメージがクレプスキュール=オーガニック系で好みから外れる、という固定概念があったので…。確かに本作も所謂A面はアコギ主体のフレンチオーガニックミュージックの傾向なのですが、B面はかなり打ち込みしてていい感じ。7「Otra Bebera」なんてちょうど良くフレンチお耽美ディスコで、こんなのがナイトカフェで流れてたらあまりに「出来すぎていて」笑っちゃいますよね。当該の店では暗い照明の下妖しく光るカンパリソーダを飲むのが好きなのですが、そこに本作があれば空想上のお耽美ナイトの出来上がり。白い壁、青い扉、店主さんや他のお客さんとの接近し過ぎない距離感、深くないお酒、そして丁度良い音楽。嗚呼、全てコロナ前に知りたかった…。アンテナの打ち込み仕事は(トリオグループであった頃を含む)初期に顕著で、活動が経年してゆくにつれオーガニックに傾倒して行ってしまいます。フレンチポップの酋長として生きる上では仕方のないことなのでしょうか。その辺りからは想像し難いソロ1st「En Cavale」の打ち込みまみれ具合も勿論愛聴してますが、全曲通して「お酒を飲むように」聴くには2ndの本作の方が適しているように思います。いやー、こういう音楽に接すると「また「皆知ってるけど自分だけ知らなかった音楽」を自分のものにできた」という感慨があるんですよね…。


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9.Diskette Park「Community」(2020)

bandcampで出会った作品。vaporwaveレーベルとしての側面も強いbusiness casualからのリリースです。近年のOMDを彷彿とさせるアートワークですが、中身は小技の利いたテクノ小品集。2-3分程度の楽曲が23曲も収録されていて、クオリティにも大満足。それでいて0円〜の投げ銭価格とはどうかしてます。

Diskette ParkはこれまでもbandcampにてVaporwave・futurefankに当たる作品を数多くリリースしていますが、本作は一聴しただけでは純粋なテクノ仕事だと感じてしまいます。タグはvaporwaveもfuturefankも付いていますが。とにかくポップながら決してヤクザなテクノへは舵が切られず、踊らずに浸るテクノミュージックといった趣。音圧も強めで、バキバキ具合は十分過ぎるほど。しかし聴き込んでみると、彼が恐らく蒸気波関連の音楽ジャンルから培ったと思われる意匠が散見されるのも興味深いポイント。しつこさすら感じうるフレーズループがアルバムを通して蔓延しているところから顕著である他にサックスの挿入やフィルターで籠もったレタッチが施されている楽曲も多い。しかしながらこれをvaporwaveと言い切ることは難しいんだよなぁ…。クラブでのチルアウトには向かず、蒸気波ギークのお眼鏡に適うともいまいち思えない。これはクラフトワークから脈を発する純粋たるテクノとその子孫である蒸気波の邂逅盤なのではないでしょうか。あ、あとテクノの小品の集積という意味ではConrad Schnitzlerを想起させるとも。

ニューエイジでもなくアンビエントでもちょっと寂しい。でもでもチルアウトでもないんだけど。丁度良い音楽って無いもんかね?」という我儘な方はご一聴してみる価値アリだと思います…。


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10.佐藤隆十六夜曲 '80~'90」(1990)

高橋真梨子「桃色吐息」の作曲者として知られるシンガーソングライター、佐藤隆新宿ゴールデン街の(和恵さんの店でない)とある店にて彼の歌う当曲を映像付きで聴いたところ、高橋のものと趣を異にするアレンジと佐藤のしゃがれ声、そして彼の麻雀放浪記ばりのやさぐれ風貌にヤラれ、早速目黒図書館のサイトでこのベストを予約しました。勿論「桃色吐息」のセルフカバーも申し分ないのですがそれ以外の、特に主だった活動の中期〜後期辺りの楽曲がいちいち凝っていて聴き応え抜群。アレンジがヨーロピアンお耽美とエスノを行き来していて最高、打ち込みと生楽器のバランスも絶妙なんですね。彼の代表曲としては本作にも収録されシングルも発売された「マイ・クラシック」「カルメン」なんかが挙げられるのですが、それらにアレンジの傾向が顕著にあらわれています。正に大人の歌謡曲。佐藤のしゃがれ声も寧ろそのお耽美に拍車をかけるよう作用しており、一曲一曲が欧州の上質な調度品の如く黒光りしているようで恍惚…。当時のananなんかのBGMにしたい。他だと「デラシネ」「黒い瞳」が白眉。「デラシネ」は打ち込みとベースの圧と焦燥感満載のアレンジが素晴らしい。「黒い瞳」はインダストリアル・タンゴなアレンジで、サビ以外でドスンとBPMが落ちるのが洒脱。様々な技法で耽美の妙を魅せてくれます。一方で「お耽美」の一筋縄では片付けられない奇妙な楽曲もあります。根津甚八へ提供した「ください」は似非ターキッシュ?なイントロから半ば強引にヨーロピアンへと変貌し、言葉遊びな歌詞が良い意味で「病気の時に見る夢」のよう。根津甚八ver.が舘ひろしチックな歌謡ロックに縮こまっているのに対して佐藤ver.の面白さよ。「カリョービンガ」は空想上の半人半鳥を題材としたエキゾ歌謡で、胡弓とパーカッション、そして打ち込みが複雑ながら遊び心溢れるように絡み合っています。どちらの2曲も佐藤の作品の中では異色な歌詞を携えているのですが、ブックレットを見ると2曲とも作詞がヒカシュー巻上公一でさもありなん。更に調べると作詞∶巻上公一・作曲∶佐藤隆の楽曲縛りのアルバム(「甘い生活」)もあり、購入してしまいましたよね。実際は適当に佐藤のアルバムをヤフオクで購入したらそういうアルバムだったってだけですが…。

蛇足ですが佐藤隆のルーツはビートルズであり、初期の楽曲にその傾向が見られる他、1998年に久々にリリースしたオリジナルアルバム「8 beat dream」は全体にビートルズ的アレンジが施されています。本作は図書館ディグをする上では彼の作品の中で最も入手しやすいアルバムなのですが、私としては最初にこの「十六夜曲」というベストから入ったのでなんともつまらなく感じてしまいまして…(私にビートルズの通過経験がないのも理由)。クオリティは申し分無いのですが…。佐藤の魅力を感じられるのは80-90s辺りのオリジナル及び当ベストだと思います。と言うわけで歌謡曲ファンは必聴。


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11.パソコン音楽クラブ「Ambience」(2020)

コロナ禍を意識して制作されたアルバムから2枚目の選盤。こちらはもう言わずもがな文句なしのクオリティですよね。コロナで変貌した・させられた日常を編んだ日記、というようなコンセプトだったと記憶していますが、そこに「Ambience」と持ってくるパ音。今までのディスコグラフィー然り、彼らは本当にコンセプトアルバムを作る天才だと思います。アンビエントテクノ・チルアウト・ニューエイジを行き来し、単に「踊らないテクノ」に拘泥しないところにある種の希望を感じました。捨て曲無しの大傑作、とだけコメントするのは卑怯な感じがしてしまうのでひとつだけ。3「Ventilation」が一番のお気に入りですが、ここに挿入されているボイスがsteve reich「Three Tales」収録の「Dolly∶Cloning」で使用されているエレクトロボイスにクリソツで格好いい。それだけ。妖艶機械音声。


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12.Vanessa Daou「Zipless」(1995)

学芸大学の中古レコードショップ「サテライト」の店頭にて「5枚300円」で売られていて漁ってきたうちの一枚。これヤバいですよ。ジャンルとしてはポエトリーとアシッドジャズとエレクトロニカブレンドのような感じ。全体の質感をVanessa Daouのアンニュイな声が支配しています。内容はアメリカの小説家であるエリカ・ジョングの(確か)フェミニズム詩集「Fear of Flying」から引用した歌詞を語るようなトーンで歌い、バックに打ち込み主体のムーディーで神妙なBGMが流れている、といったところでしょうか。私、本作に関しては歌詞の内容よりも圧倒的に音に重きを置いて聴いてます。柔らかでダウナーな彼女の声と主張し過ぎない楽曲との絡み合いが最高。BPMもアレンジも全曲そう変わらないので悪く言えば単調極まりないとも。しかしこの作風ならそれで良いと断言できます。クラブでもバーでも自宅でも聴き得る音楽って実はそんなに多くないはずですが、本作はいずれにも適する。母語が英語でない以上は「流す」ことに意義を置いても十分役割を果たしてくれる作品だと思います。エンヤともイーノとも、まして日向敏文とも異なる癒しを任せられる一枚です。ブックオフの290円コーナーでも見かけたことがあるのでそんなにレアではないはずです。一家に一枚。


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13.安斉かれん「僕らは強くなれる/GAL-TRAP」(2020)

今年の邦ドラマを語る上で「M〜愛すべき人がいて〜」を忘れたとは言わせません。ま、私は録画をまだ観終えてないんですが…。浜崎あゆみ松浦勝人の過去を、「あの頃」の空気感と何故か大映ドラマ感(このドラマで一番得したのが田中みな実、という嫌すぎる事実)をブレンドさせて描き一部で話題を呼んだ当ドラマ。デビューして弱冠1年、初ドラマ出演ながら主役の「Ayu」を演じたのがこの安斉かれんでした。彼女は本作を含め現在までに5枚のシングルをリリースしていますが、いずれもタワーレコード限定で「0円」で配布されています。ライブもせず無料で楽曲を配布しソロアルバムも発売しない。果たして彼女に直接お金を落とせる日は来るのでしょうか…。

それはともかく本作は現時点での(配信を除く)最新シングルにして両A面作品。なんかやたらタイアップが付いていて、「僕らは強くなれる」は『2020年夏季高校野球 都道府県別大会』のテーマソングとして、「Gal-TRAP」は『バゲット』10月エンディングテーマ、『バズリズム02』10月オープニングテーマ、『それって!?実際どうなの課』10月エンディングテーマとして使用されました。いやもう売れよ。2曲ともに重要なのは「やっとあゆの世界線から抜け出たかな」と思わせてくれる点。1st〜3rdシングルは完全にあの頃のあゆテイスト満載で、この3枚がまるまるドラマのティーザーだったのか?と勘ぐってしまうほど(実際そうなんだろうな)。今年4月にリリースされた4th「FAKE NEWS REVOLUTION」は導入部こそあゆっぽいピアノフレーズから始まるものの全編はBPM早めのノレるJ-POP(嫌味ではない)に仕上がっていて好きで、同時にあゆ路線からの脱却を予感させてくれる楽曲でした。そしてダブルA面の本作ですが、いずれも「(私の思う)あゆっぽい音」はほぼ登場しませんでした。代わりに今のポップス、今の「ある種ナチュラルな」シンセ使いがベースになっていて、そこに関しては「現在」の音楽を聴かない者からすると特に感想はありません。しかしながら2曲其々の意匠の部分は多少凝っているようです。イントロがまんま久宝留理子の「男」な「僕らは〜」の方は全日本マーチングコンテスト金賞受賞の京都橘高校吹奏楽部とのコラボレーションゆえ、打ち込みとマーチングバンドとの応酬が気持ちいい一曲。決して融合ではなく互いに「我が我が」と主張し合っており、ブラスバンドテクノのようなものが期待できる訳ではありません。しかしいまいち噛み合わない故の大仰なパワーポップ具合、「妙」のなさが安斉の楽曲らしくて○。一方「Gal〜」はその名の通り一言でトラップです。こちらの方が「今のJ-POPにおいては常套なんだろうけど安斉には新境地」感が強い。と言ってもヒップホップ感や圧は安斉のトーンに合わせて薄められており「エモ」に収斂してしまえるアレンジ具合です。しかし「僕らは〜」然り、これを、安斉を「エモ」の箱に片付けてしまうのはあまりに惜しい。

あゆも安斉も作詞をするので体裁は「アーティスト」の括りなのでしょうが、脈々と続くジャパニーズアイドル史の先端であると語る層も当然ながら存在しますし、私もそれらを支持します。そして彼女らがアイドルならば、その中でも大衆に開かれたアイドルに当たるでしょう。アイドルにアングラ性を語ることや「地下アイドル」という単語が大嫌いな私にとって、「社会迎合なアイドル」として安斉を聴き、そのような形式で今後もバリバリ活動していっていただくことはある種の祈りであります。その上で「エモ」という、具体としての「音楽ジャンル」「ポスト浜崎あゆみ」でなく抽象としての「感想(ここでの「エモ」)」で安斉を見る流れになったことは望ましい…はずですが、それにしても「エモ」はねぇよなぁ…。「EDM」という単語が(テクノ・ダンスミュージック全部そうじゃねーか、と)何も語っていないように、「エモ」も感想としてあまりに抽象すぎて、今にも革新の中で彼女ごと消え入ってしまう危うさがあります。でも私はせめてもう少し彼女の音楽が聴きたい。ここから目立った活躍やショーレースでの成果獲得が果たされるとは贔屓目にも思えませんが、折角大きな存在に囲われて可愛がってもらえているのでもっと伸び伸びと活動していっていただきたいものです。

唯一の希望は、あくまで矮小なものに過ぎませんが、彼女への世論が肯定的なものに変わってきているということ。YouTubeにおいて本作2曲、そして未だ配信限定でリリースされている最新曲「Secret Love」のMVには彼女を支持するコメントが多数寄せられています(「かわいい!」とかその程度ですが)。約1年前に1st「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」のMVが公開された時の「あゆの二番煎じ」というコメントはめっきり減りました。トリビュート・オマージュからの脱却、現在への迎合も悪くないよな、と少しジーンとしました。本作以前の4作の無料CDがタワレコで配布された際はいつまでも在庫が残っていて「あーあ…」という気持になったものですが、本作のCDはリリースして暫くすると「売り切れ(売り切れ?)」の表示が。全作ほぼリアルタイムで集めてきた身としては嬉しい限りです。来年もこまめなリリース、願わくば1stアルバムなんかも出るといいんですけどね。


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14.Merrin Karras 「Silent Planet」(2020)

アイルランド出身のテクノ・ハウストラックメイカー、Brendan Gregoriyによる別名義、Merrin Karrasの作品。41分強の楽曲ひとつのみの収録で、ニューエイジものです。品のあるミニマルなシンセ音で構成された長尺の本作はタンジェリンドリームを彷彿とさせますが、実際彼のルーツにジャーマンロック、特にクラウスシュルツェがあるのは確かなようです驚きなのは2日という製作期間の短さ。普段なら数ヶ月から年単位でかかるところを「自分なりのチャレンジ」としてこの短さで纏め上げリリースしたと言います。

御託はどうでもいいです、肝心の音について。6つのセクションで構成された本作。アンビエントからスペーシーなトランスミュージック(言わずもがなヤンキズムとは背反するもの)へのなだらかな移行具合や、品のあるミニマルなシンセ音で構成された長尺作品であるという点から否が応でもタンジェリンドリームを彷彿とさせますが、実際彼のルーツにジャーマンロック、特にクラウスシュルツェがあると本人より語られています。「初めて自身の作品に導入した」と語られているパーカッションが何故か和太鼓風味で、その和のテイストが「ジャーマンミニマル」っぽさに留まらないニューエイジ感覚に落とし込まれている所以?あと例に挙げたタンジェリンドリームの初期作のように後半でべらぼうにハイになるわけでもなく、むしろ前半部のあのホワーンとした空気にミニマルなトラックが絡むつくりなので品良く聴こえるのでしょうね。兎角飽きの来ない傑作です。こちらもbandcampにて投げ銭で購入可能。

 

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15.吉村弘「Green」(1986)

ジャパニーズ・ニューエイジの神様である吉村弘の最高傑作との声も高く、当時出たLPが数万円で取引されていることで知られる本作が、好事家の念願叶って遂にCDにて復刻。今年の復刻リリースの中で特に話題を呼んだ一枚でしょう。私も買いましたし、音楽に疎いけど眠れる音楽は好きという方にプレゼントもしました。アートワーク含めこの爽やかだけども湿った恍惚には感嘆するしかありません。ニューエイジであり環境音楽、しかしアンビエントとは少し違う、という感覚で私は本作を捉えていますが、そんなこともこの余裕の貫禄には無意味。浸りましょう、そして微睡みましょう。私ごときが今更何を言うか、という被害妄想すら心地よい。


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16.Software「Digital  Dance」(1987)

こちらも復刻モノ。vaporwave前史の大傑作が、配信復刻から長きを経て遂にCD発売。この牧歌的ながらフェティシズム溢れるジャケットに柴崎氏による解説文、それだけでモノを持っておく価値があるってもんです。音に関してはこれも私が語る幕はございませんが、強いて言うなら「新蒸気波要点ガイド」にも載っていたように「クラウトロックニューエイジ・vaporwaveの先祖」という説を軽やかに証明してくれるマスターピースです。「Island Sunrise」「Digital  Dance」の白眉っぷりも爽快。一生聴いていられる必聴盤。配信で音楽を買ったりライブを観たりすることに抵抗のある頑固爺ゆえ、物的にリリースしてくれたことに感謝です。


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17.SideVision「Moon Light」(1988)

今年レビュー活動に一区切りを付けられたanouta氏の「トレンディ歌謡に抱かれて」。数年前にこちらで美川憲一の大傑作リミックス盤「Golden Paradise」に出会って以来欠かさず愛読させていただいていたのでその休刊に淋しさもひとしお。今年も数多くのトレンディ期の埋もれた名作をレビューされていましたが、そこで知った本作は正直もっと評価されるべき、と感動させられたものでした。詳しくは氏の記事をお読みいただくとして。私はこちらをメルカリで300円程度で入手しましたが、未だネットで見た感じ市場価格が割と高騰してますね…。

内容としては打ち込み主体のナイトドライビング的フュージョンインストアルバム。摩天楼ジャケなフュージョンものだと伊東たけしの「ニュースなあいつ」のサントラも傑作ですが、それに近いものがあります。どちらも5年以上前だとダサ〜と掃き捨てられてしまいがちなものの、昨今の好事家のリスニング感覚だと大いにアリというか。アップなものもスローナンバーもバブルが炸裂しており、「vaporwaveやニューエイジ、バブル感覚の文化を愛好する中でフュージョンを聴いてみたいけどどれを聴いたらいいんだい?」という私なんかにはうってつけの盤でございました。捨て曲ナシであるのは大前提として、個人的には9「Step To Town」の激アツシンベとサックスの荒ぶりが趣向に刺さりますかね。しっとりと終わるラスト前の大高揚っぷりはアルバム構成としてあまりにもベタですがそれがイイ。こういう作品ばかり聴ける集いはあらんかね。

 

…以上、17枚全てのレビューが終了しました。中古含め盤をCDで購入したものが9作、配信で入手したものが4作、図書館やTSUTAYAでレンタルしたものが4作。そのうち図書館ディグが2枚か…。図書館でレンタルしたものは聴いてきたものの中では最多なハズですが、ディグとは言えない著名盤や取るに足らない作品ばかりなのでこの程度ですかね。あ、今年手に入れておいて聴かずに積んでる作品も相変わらずありますのでそれらの中で傑作が登場したら来年のレビューや普段の記事に回させていただきます。しかし…久々のレビューかつこれほど多くを一気に書き切ると…疲れました…。趣味でしかない以上自分だけのためにやっていることなのですが、願わくばなるべく多くの方にお読みいただき、「へーこれ良いんだ、聴いてみよ」とどなたかのリスニングの口火になればこれ以上なく幸いでございます。来年も、もしかすると半ば永遠にやんわりと、コロナ禍は継続するでしょう。その中で、各好事家がより良いディグできることに祈りを捧げつつ、2020年という距離の見えない洞窟の入口を閉めたいと思います…。あ、今執筆しながらこないだ中野・メカノの店頭300円コーナーで運良く手に入れた清水三恵子「貝の道」を聴いてみています。これ最高じゃん。来年のレビューに入るか否かはお楽しみに。では皆様良いお年を。

2020年常譚

「今年あと2回は更新します!」と啖呵切ってからあっという間に12月…、完全に廃サロンをサボってました。年間ディスクレビューのようなこともぼちぼちしなきゃなぁと思いつつ、今年は個人的に様々なことがあったので、自分用の備忘録的に記録しておきたいなとも。そういう訳で年間ベストを決めるのに先立ちまして自分語りのメモをさせていただきます。音楽・カルチャー周りのことだけについて。この稿を読んでいただければ私が現在(2020年前後)何に興味があるか分かったり分かんなかったりします。過去最低の駄文の予感。

 

まず参加したライブやイベントについて。

今年最初に行ったライブはバービーボーイズでした。渋谷公会堂(現LINE CUBE SHIBUYA)にて1月に開催された追加公演のチケットを粘り勝ちで入手(代々木競技場のやつは何度トライしても無理でした…)し、4列目という最高の席でライブを堪能しました。konta主演映画「ふ・た・り・ぼ・っ・ち」の主題歌である「使い放題tenderness」をやってくれたのが嬉しかったなぁ。ここで何となく自分の中でバブル・トレンディ文化への区切りがひとつついたような気がしました。追っかけるのをやめた、とかではなく。その次のライブが2月のキノコホテル。これもまたチョ〜〜良かった。最新アルバム「マリアンヌの奥義」を中心にオールタイムベスト的選曲。キノコホテルに対しては熱烈に好き、というか盤が出たら必ず聴くくらいの追い方だったのですが、このライブで再燃した気がします。ヘヴィーでハードなパフォーマンスをする、かつライブに行きたいと思えるアーティストってそんなにいないんですけどキノコホテルはライブが近場であれば行きたい。ライブ終演後もそう思ってたんですが、ちょうどその頃から新型コロナの影が…。その月に渋谷・circusにて開催されたLocal Visions×lightmellowbuのイベント「Yu-koh」に参加した時から「イベントにおけるコロナ対策」というものがスタートしていたように記憶しております。あのイベントもちょっと常軌を逸してましたね…、生AOTQ氏・「2020年はニュージャックスウィングが来る」宣言・その他lightmellowbuの方々やパ音柴田さん、anoutaさん等との会話、全てが鮮明ではありますが今になってみると「あれマジで今年か?かなり前に感じる」ってなっています。多くの方が仰るように、今年は時間軸が歪んでいる。このイベントについては以前記事で感想を記述していますのでご興味のある方は是非。あ、この頃町あかり氏のソロイベントも行ってるな。あれもノンストップてんこもりで本当に良かったライブ。そこから約半年経ってやっとイベントに参加できたのが9月に渋谷・頭バーにて開催されたDJ.Pigeon氏主宰のDJイベント「DJ.Pigeonの知らない音楽」(渋谷のイベントばっか行ってんな)。当時ディグ欲がかなり落ちていた私にとってはリハビリテーションのようなイベントで、「何を、どこまでをクラブミュージックとして捉えるか」ということについて深く考えさせられました。

そこからまたもやライブはお預け状態だったのですが、つい先日青山で開催されたdip in the pool主催ライブ「departures gate 01」には行ってきました。これについてはどこにも感想を書いてなかったので少々長めに。本イベントは全3組のアーティストが参加し、いずれもダークでありながら優しい、ライブハウスとベットルームの狭間のようなイベント、という印象でした。その中でも甲田益也子氏(この日は赤髪を立て上げ色付きサングラスを着けたさながらDavid bowieの如きファッション、最高…!)のソロパフォーマンスの中で歌唱された大貫妙子「carnaval」のカバーのdub mix ver.がやたら格好良かった。こちらは既に今年の8月にstudio muleよりリリースされていまして、まだ購入していないものだったのですが、はっきり言って必聴です。https://superpitcherkompakt.bandcamp.com/album/carnaval-superpitcher-remixes

この時、開演前に物販を覗くとdip in the poolのまだ未購入だった最新アルバム(と言っても発売は5年前…)「Highwire Walker」が売っていたので買うか〜と購入すると物販のお姉さん(会場スタッフ)が「今日せっかく甲田さんも木村さんもいらしてるのでサイン頂いていってくださいよ〜」と仰いまして、「いやいやそんな!」「いいんですよー後でお時間作りますんで!」となり、本当に開演前に木村達司氏から、終演後には甲田氏からサインを頂戴してしまいました…。お二人と少しお話もできたんですが、いやー緊張したー。お二人とも非常に気さくな方で、「昨年のCFCFとのライブ行きました」と言うと喜んでいただけたご様子。甲田氏とお話ししている時に「あの、写真とかご一緒に撮っていただけたりしますか…?」と口走ってしまった際も「あ、いいですよー。マスク取りましょうか?」とこれ以上ないご対応を…。結果撮っていただいた写真で私、緊張しすぎて最悪に顔引きつってました。4年前に美川憲一氏と写真撮っていただいた時も嫌そうな顔して写ってしまったし、どうしてこうもここ一番に弱いんでしょうかね…。とにかく有難うございましたdip in the poolのお二方、そして会場のお姉さん。勿論来場人数を制限しての開催だった故のご対応かとは思いますが、今年嬉しかった出来事のベスト3には確実にランクインしますね。シンプルな自慢で申し訳無いですが、このことは廃サロンに記しておきたかった。

行けた音楽イベント・ライブはどうしても制限されてしまった今年ですが、そのいずれもが最高でした。いつもなら嫌な思いすることもたまにあるんですけどね。それが皆無だったな…。

 

次に音楽ディグについて。

12月現在、正直CDに対するディグ欲はかなり落ちています。めっきりブックオフにも行かなくなったし、レコード屋でも粘るように漁ることはかなり減りました。だから廃サロンも2ヶ月停止してたんですね。ですが今年は個人的にはVaporwaveから移行してニューエイジへの接近、また1970年代以前の昭和歌謡・ムード歌謡への興味が育まれた年でした。ニューエイジに関しては今年発売の「ニューエイジディスクガイド」やSoftware「Digital Dance」や吉村弘「Green」の再発の影響が強いです。とはいえ大体は一般的に名盤とされているものを聴くに留まり、自分で「発掘」できたのは以前レビューした「空のささやき something in the air」くらいのもの。だってそもそもブックオフに良質隠れニューエイジなんてほぼ転がってないじゃないですか。どれも同じに聴こえやすいこともあって、トレンディ歌謡を探すのに比べて遥かにハードルが高い気がする。ともかく「空の〜」かBrian eno「reflection」のどちらかを通勤時に毎朝聴くという1年でした。

Before80’s歌謡曲をしっかり聴くようになったのはここ2ヶ月くらいなのですが、私が現在一番夢中になっている音楽カテゴリーは間違いなくここです。切欠は新宿ゴールデン街。今年の秋、予てより気になっていた昭和歌謡スナック「夜間飛行」に通うようになってしまい、私の人生はまた一段とおかしくなってしまいました。初訪問の際にスタッフの女性とお話していて「あ、明日ウチのママのギャランティーク和恵さん(歌手。ミッツ・マングローブメイリー・ムーと共に「星屑スキャット」としても活動中)がDommuneで配信やるんで観てくださいよー」と言われまして、それを町あかり氏のレコ発配信の後の流れで観てみたんですね。そこで和恵さんの「2020年において「歌謡歌手」である」という点に惹かれてしまい、それからはのめり込みがまー早い早い。あっという間にライブのDVDを2枚も買い、音源を集め、和恵さんが夜間飛行に立つ日には店に赴く日々。何がコロナ禍だ、と言わんばかりの不真面目さ(対策は大前提ですが)。その中で彼女がリスペクトしカバーしている昭和歌謡歌手を聴き漁るようになり、今に至ります。梓みちよ朱里エイコ黛ジュン・豊島たづみ・小柳ルミ子等々、元々なんとなく好きだった歌手から全く存じ上げなかった歌手まで、今正に勉強中です。ここに来て更に歌謡曲にのめり込める自分が不思議で堪りません。とはいえディスコ・ブギー(言い換えるとフリーソウルっぽいものがこの頃多いのかな)感のあるものを掘っている傾向は相変わらず。例えば梓みちよの打ち込みまみれ期(和恵さんもカバーしている「よろしかったら」「寂しい兎を追いかけないで」等、テクノ歌謡と言っても過言ではないほど眼を見張るような楽曲もあります)とか。この辺りを聴いていて、今になって何度目かの「DJやってみたいなぁ」と思う気持ちが沸々とキテますね。

レコ屋やブックオフでのCDディグが控えめになってきたのはここにも原因があります。つまり、図書館・TSUTAYAで借りるくらいしか安価で入手できない音源ばかりだからですね。この頃の歌謡曲の盤が投げ売りコーナーに落ちてることはまず無いです。また、バブル掘りに区切りをつけ、より昭和に突き進むようになったとも言えます。当ブログは特に音楽性や媒体に拘っていないものの、何となく「90年代以降の」「安価に入手した」音楽を紹介してきたので、今後大きく方向転換に迫られるか、あるいは廃サロン閉鎖か…といった危機、なのか…?ま、これからも多種多様なものをなるべく深く好きになっていけたらいいなという気持ちは変わりません。図書館ディグは尽きませんし、ね。

 

音楽ディグの話のついでに、今年のその他のディグについても。その他というのは古VHSと古雑誌です。VHSが古いのは当たり前ですが。

VHSは正直今年あんまり買ってませんねー。今年の始め(昨年末だったかも?)にまとめ買いした「男女7人夏物語」「男女7人秋物語」の全VHS(一本あたり100円という投げやり投げ売り具合)をコロナ禍が叫ばれ始めた頃(3-4月)にイッキ観した思い出は強烈にあるんですけど。完全に初見だったので鮮烈な感動を覚えたハズなんですが、今になってみると「池上季実子手塚理美は最高」とか「うわ、「秋」に岩崎宏美出てたんだ」とかそういう浅はかな感想くらいしか覚えてないな…。ちなみにVHSではなくレンタルですが、この調子でトレンディドラマを観まくろう!となって、陣内孝則が主演を務めた「君の瞳をタイホする!」「愛しあってるかい!」の2つもイッキ観しました。こちらも「浅野ゆう子最高!KONTA最高!」くらいの記憶。細やかな意匠についての記憶が短期間で消滅している点も含めてのトレンディドラマ、ということなんでしょうか。あ、「愛しあってるかい!」の小泉今日子の自宅の内装とかは良かったかな。

VHSに関するデカイトピックはこれくらいで、それ以降は駿河屋で他の買い物ついでにポツポツ買う程度。こないだ久々に買ったVHSはフランク・ロイド・ライト落水荘」のドキュメンタリーとか、銀座エルメスの映画館で上映してたのに見逃した「モデルカップル」(未だ観てないです)とか。あ、あと世界の富豪の邸宅を紹介するだけのVHS、「世界の家」。

雑誌は今年80年代の「anan」と00年代の「relax」を集め始めました。「anan」に関しては(同じマガジンハウスなので当然なものの)80年代の特集が「BRUTUS」と被っていることが多く、やっぱり「夜の街特集」「香港特集」「イケてる飲食店特集」なんかを集めてしまいます。「relax」はついこの間渋谷PARCOで開催されていた復刊記念展からポツポツと収集中。ペプシ特集とかモスバーガー特集とか、やっぱりチェーン店に関する特集号を買ってますね。カルチャー誌がカルチャーとして飲食店を、しかも〇年代の「真っ当なギャル男が書いたような」文体で取り上げているのが好き。そういえば「TOKION」というカルチャー誌のマクドナルド特集も買いましたけどあれが一番最高だった。深夜の店内でタバコ片手にダベるホスト集団とか、かつて存在したマクドナルドミュージアム等の貴重な写真が豊富に掲載されていて、マックファンは必読。あーーー、どんどん趣旨から逸れていくんですが今年図書館で日本マクドナルドの社史のようなものを借りて読んだのも懐かしい。「マクドナルドの社員は毎年社長からお年玉が進呈される(現在は不明)」等のトリビアが身につきました。

 

バービーボーイズからマクドナルドまで、そんな2020年。人間として進化せず、代わりにこれまで大事に集めてきたものを温める年だったのでしょうね、と振り返ってみて思ったりします。「アレいいよね!」と言えるカテゴリーが浅く広く、ただ細かく増えた、とも。来年はもっとビッグなカテゴリーを会得して今居る界隈と反復横跳びしてみたいなと思います。例えばクラシックおじさんになるとか。今年の音楽ベストはまた次回やりますー。現時点でやってる方全然見ないんですがなんでだろう。

玉石混淆な収穫まとめ その13

どうも。9月以来更新のペースがぐんぐん上がってきています。この調子で年末までにあと2回は記事上げたいものですが…如何に…。

あ、そう言えば渋谷レコファンについてのエッセイ、廃サロン史上ではそこそこお読みいただけた方なようです。ご愛顧有り難うございます。ややこしいことなく、メインストリームなものも好きなのでああいう単語たちの並びになってしまった訳ですが、読み返すとかなり恥ずかしい…。

さて、今回は図らずもタレントもの2枚をご紹介します。


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ピーコ「恋は一日のように〜ピーコ シャンソンを歌う」(2004)

武蔵中原ブックオフにて290円で購入。タレント・ファッション評論家として、その際の辛口コメントに定評?があり、一卵性双生児であるおすぎと共に活動することも多いピーコ。そんな彼の肩書きには「シャンソン歌手」があったんですね。本作を手に取るまで存じ上げませんでした…。芸能界で似たようなスタンスにある美川憲一越路吹雪淡谷のり子の影響で活動中期ごろ?から本格的にシャンソンに取り組むようになり、数枚のシャンソンアルバムをリリースしたりシャンソン縛りのコンサートを定期的に開催しています。が、それとこれとは至極別。そもそも歌手としてのイメージが一般的には皆無なピーコのシャンソン、これを無視する手はございませんよね。 

ジャケは宇野亜喜良による劇画調の作画。完全にメンチ切ってますね。ピーコに関するイメージが皆無の人がこのジャケを見たらどう思うのでしょう。そういえば美川憲一の90年代にリリースされたリミックスアルバム「Golden Paradise」もペーター佐藤による劇画タッチなジャケでした。

ブックレットを開くとライナーノーツが。そこには彼がシャンソンを歌うようになった経緯が記載されていました。要約しますと、1989年に悪性黒色腫の診断を受けたピーコは、左眼を摘出し義眼を挿入(トレードマークである黄色のサングラスをかけるようになったのもこれが切欠だそうです)。この件で落ち込んでいた彼は、たまたま遭遇した永六輔に励ましの言葉として「シャンソンでもやってみれば?」と声をかけられます。こうして永の人脈によるサポートのもとピーコはシャンソンのレッスンを開始。やがて永の地方巡業等に参加し、人前で披露するようになります。それから約14年という長すぎる時が経ち、やっとこさ本作をリリースするに至ったそうです。ちなみにシャンソン習いたての頃のピーコを永は「シャンソン歌手」ならぬ「シャンソンカス」とステージで紹介し、観衆の笑いを誘ったとのこと。それほど歌手経験のない彼にとってシャンソンは茨の道だったようですね。ただ本作リリース時にはピーコ本人も「シャンソンカス」と自嘲している様相である他、永による直筆の帯コメントには「ピーコはシャンソン歌手か、シャンソンカスか、あなたが決めるCDです。」と記されています。

内容は全曲シャンソンスタンダードのカバー。ほぼピアノメインで、他には数曲でアコーディオンが絡む程度のアンプラグドな構成。そのお陰で(ほぼ本作でしか聴けない)ピーコの歌唱を堪能できます。その腕前は…「カス」とは言わないまでも、かなり「まんまピーコの声」です。シャンソンに必要なある種の演技力を伴った歌声というようなものがどこか欠けていて、朴訥としてしまっています。ただ、それが「演じる」のではなく「語りかける」「朗読する」役割を担うシャンソンシンガーとして作用しているような気もして、地味ながらちょっと癖になります。それでも①「小さな紙片」では跳ねるような、楽しげなピーコを聴けてかなり良い…。病み上がりのリハビリ的な動機でもあったシャンソンですが「出会えて良かったね」という気持ちになります。ただ、これはあくまでタレントものCDならではの評価。私もシャンソンはなかなか聴かないので正当な評価はできないのですが、例えば件の美川のシャンソンアルバムを聴いてみると、その(曲のアレンジと歌唱の)ゴージャスさ・表現力の多彩さに驚かされます。美川とピーコがいずれもレコーディングしているシャンソンの曲に「サンジャンの私の恋人」があります。美川の方は「人生はシネマのように」というアルバムに収録されていますので、究極に物好きな方は聴き比べてみるのも面白いかもしれませんね(適当)。「銀巴里!青い部屋!」を期待するとちょっと違うのがピーコ。

色物な割には聴いててリラックスできるつくりになっているかと思いますので、ブックオフ等で見かけた際は290円なら充分手に取ってみても良かろうかと。


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Kaho(島田歌穂)「ROBIN'99」(1998)

お茶の水ディスクユニオンにて¥350?で購入。少し前に買ったブツなので記憶があやふや。女優・歌手である島田歌穂がKaho名義でリリースした作品です。島田歌穂については正直ほとんど活動内容を存じ上げず、「ブックオフの棚を見つめてるとたまに名前を見る…気がする…」という程度の認識です。1974年にテレビ朝日系「がんばれ!!ロボコン」のヒロイン・ロビンちゃん役でデビュー(これ由来でアルバムのタイトルに「ROBIN」が付いてるみたいです。後述します)、その後舞台女優としての活動をメインに歌手活動もスタートさせ紅白歌合戦には2度出場しているんですね。ちなみに夫が島健だそうでびっくりしました。

さて、島田歌穂についての知識が皆無な私でも思わず手に取ってしまったこの禍々しいアートワーク。祭りの出店のかき氷屋の暖簾色のような、2003年ごろに小学校の男の子が着ていたTシャツのような、そんな色味。この00年代アジアのダサさを煮詰めたようなアートワークにはついつい期待してしまう訳ですが、本作のプロデューサーはなんとあのサンディー&ザ・サンセッツやアジア歌手の輸入盤の監修でおなじみ久保田麻琴。然もありなん、といった所でしょうか。さらに本作にはぼんやりストーリーもあるようで、Wikipediaによると「近未来都市を訪れた宇宙人ロビンを主人公にしたドラマCD」でもあるそう。しかし所謂ドラマCDのように、特に曲間に茶番劇が織り混ぜられている訳ではありません。普通に聴けます。

肝心の作風について。久保田のプロデュースということでコッテコテの似非アジア~な音を期待してしまいますが、アレンジは以外と現実的なところに擦り寄せられています。当時の軽いアジアンポップスに近しいアレンジ…なのかもしれません。なので濃ゆいアジア感や打ち込みバッキバキなものを期待すると少し肩透かしを喰らいます。ジャケの印象よりも遥かに地味。しかし当たり曲も幾つかありまして、表題曲の⑧「Robin'99」は歌モノではありませんがポコポコとした触感が印象的なアジアンテクノ。西田佐知子「星のナイトクラブ」のカバー…ではなく全くの新曲⑪「星空のNightClub」は60年代アーバンテイスト、というか色んな昭和歌謡にそっくり。井上陽水「UNITED COVER」に紛れてても気づかなそう。こちらは正真正銘ザ・スパイダースのカバー⑬「夕陽が泣いている」は重たいパーカッションをバックにしたインドネシアンファンク。マレーシアの国民的女性歌手シーラ・マジッドのカバーである⑭「Sinaran」なんかもあって○です。Interludeである⑦「Robin #2」も1分少々ながらアジアンテクノなインストものと言えるでしょう。

全16曲収録と盛り沢山で色とりどり、しかしながらいかんせん地味な印象なのでうかうかしていると聴き流し終えられてしまう、そんな危険な盤でした。アジアモノに目のない方はカバー曲目当てに手にとってみてはいかがでしょうか。

 

 

レコファン渋谷BEAM店閉店-青が消える-


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渋谷のレコファンが今日、つまり2020年の10/11で閉店する(本稿投稿時、閉店までラスト2時間のタイミングです)。夏頃から告知され始め、私を含むディガーは、別れを惜しむように残りカスを漁るため足しげく通った。しかしそれも今日で終わり。「そう言えば私が初めて渋谷レコファンに来たのはいつだっただろう」と考えてみる。確か2013年くらい、高校の頃だった。

 

バス通学だった私は渋谷まで乗車可能な定期券を買い与えられており、よく渋谷に遊びに行った。と言っても私が高校の頃なのでディスコに行く訳でもプールバーに行く訳でもない。TSUTAYAでCDの棚を眺め、ブックオフ(跡地は現在GUに成り下がった)でCDや漫画の棚を眺め、つまりは「棚を眺めること」が私の渋谷での遊びだった。「まんだらけ」なんかは地下に降りていく入り口が怖くてまだ行けなかったなぁ。そんな頃に出会ったのがレコファンだった。

初めての入店時を覚えている訳ではないが、当時も店内の様子はさほど閉店時と変わらない。とにかく棚・棚・棚!あれほど膨大な量の棚にCDがぎゅうぎゅう詰めに差し込まれている。ブックオフの雑然さとは様相を異にする、灰色の猥雑さを感じた。ところで私は当時音楽に今ほどの興味、というか探求心がなく、好きなアーティストと言えば徳永英明斉藤和義沢田研二YMO中島みゆきetc.くらいのものだった。よって当時はその辺りの並びを中心に見たと思われる。徳永の棚を見た時私は歓喜した。当時ネット以外で入手方法はまず無いと思い込んでいた徳永のもやもや病による活動休止直前のシングル「CALL」や「種」が並んでいるではないか。その2作はアーティスト徳永英明の本質(と私は考えている)である「中二病まがい」が色濃く表出されている楽曲であり、YouTubeかなにかで愛聴していた。この無名ながらネットくらいでしか手に入らないシングルがいずれも100円。高校生の小遣いでも余裕で悩まず買える。さらによく棚を見ると、徳永のライブ来場者に限定で配布された「I'm free…」までもが100円で無造作に並んでいた。はやる気持ちを押さえつつそれら三枚をレジに持っていく。支払った金額、315円。これはヤバい。当時家族に「何かコワいからやめなさい」とネットショッピングを禁じられていた私には夢の国であった。その頃はとっくに図書館ディグもスタートさせてはいたが、そこでも手に入らない微妙なニッチさを湛えたCDが、ここではいとも簡単に買える。なんだここは。このようにして、私はレコファンとショッキングな出会いを果たしたのであった。

 

やがて大学に進学し、友人の影響もあり様々な角度から音楽を掘ることを本格化させた私にとってもレコファンはまさしくホームのひとつであった。KRAFTWERKにハマれば怪しいブート盤を、VHSディグを始めればよく分からないアーティストのライブビデオを…。中古のライブパンフなんかもちょくちょく買った。

 

レコファンで一番高い買い物をした時の喜びと直後の挫折感についても記しておきたい。テクノポップにお熱になった私は、特にP-MODEL関係をよく集めた。その中でどうしても欲しかったのが「LIVEの方法」というアルバムだった。これは1994年にリリースされた、平沢がP-MODELでバッキバキのテクノを演っていた頃のアルバムで、P-MODELの代表曲をその頃の過剰なアレンジでレコーディングし直した、つまりセルフカバーアルバムだ。当時はネットで買おうとすると大体12,000円程度。どうしても欲しいと言ってもちょっと買えない。そんなある日いつものようにレコファンを覗くと、件のアルバムが7,000円で並んでいるではないか!んん~~~、買え、なくはない、が…、いや、これは所謂皆欲しいやつ。買ってしまおう!と清水の舞台から飛び降りるような気持ちで購入した。帰宅後即PCにリッピングし、データが薄くなる(謎)ほど聴いた。その数ヶ月後だったろうか、神保町・お茶の水間にかつて存在した伝説のレンタルCDショップ「ジャニス」を初めて訪れたのは。まぁ、その後は言うまでもないのだか一応。ここは希少CDの宝庫であり、当然テクノポップ界隈の所蔵もピカイチだった。そこに「LIVEの方法」もありましたよ。レンタルすればたかだか500円程度。7000と500。この差は私の価値基準でもブツの所有欲がお得さに負ける。その時は泣きながら他の希少盤を20枚くらい借りたものだった。ま、だからと言って「許すまじレコファン」ということではない。他にお得な買い物をいくらでもさせて頂いたので。

 

渋谷のブックオフが消滅した時もかなりの喪失感に襲われたものだったが、今回のレコファン消失はより後からじわじわ来るものであろう。ディガーとして、あそこは私にあまりに身近過ぎた。大学の空きコマに、飲み会の待ち合わせに、何より煤けた知的好奇心の穴埋めに、レコファンには多くを頂いた。それほど大金を叩いた訳ではない。枚数にしても最高で一回にせいぜい3,4枚。ただ私にとって渋谷レコファンは、「漁り場」ではなく「渋谷という街そのもの」であった、という意味でかけがえのない場所だった。表層はとにかく猥雑で、安っぽくて、しかし確かにどこかに「愛」は、「世界」は隠されている。そんな場所。「これから渋谷でディグるときはディスクユニオンしか無いじゃん」とか、そういう軽い喪失ではない。渋谷からレコファンが無くなるのだ。私にとってこれからの渋谷は、かつての渋谷とはまるで意味が異なる。

そういえば高校の頃、現代文の教科書に村上春樹「青が消える」という短編が載っていた。読んでいただければお分かりになるかと思うが、あの「青」は今の私にとって、またディガーにとって、レコファンの看板の「青」でもあるかもしれない。

 

…安っぽい末文(↑)になってしまい恥ずかしい。とにもかくにも、グッバイ・レコファン渋谷BEAM店。

 

https://youtu.be/qQA58KjJsZc

徳永英明「CALL」

 

https://youtu.be/7k1cEXc_RZM

徳永英明「種」

 

https://youtu.be/PbmyMKTAlkk

P-MODELATOM-SIBERIA(LIVEの方法ver.)」

第15回「空のささやき SOMETHING IN THE AIR」


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「空のささやき SOMETHING IN THE AIR」(1994)

 

上野のブックオフにて290円で購入。上野のブックオフと言えば最近見辛くなってしまって…。というのもビルの2F-4Fにあるブックオフのうち、3Fがクラシック・ジャズ・ワールドミュージックetc(イージーリスニング等もこちら)、4Fが邦楽及び洋楽、という風に別れてしまったんですね。これはディグ意欲が削がれる。しかもこれまで殆ど掘り出し物を発掘できた試しのない店舗だったので、この日も「飲み会の前にちょっと寄ってくか」と諦め半分でした。しかし本作は大傑作、大名盤。久々に無理なく「当たり盤」と呼べるアルバムに出会えました。

本作はデンマーク・オーフスで開催されたとある文化フェスティバルのために実施されたプロジェクト・ライブ「Something in the Air」における約3時間半にも及ぶ録音を52分に編集した、一曲のみのアルバムです。トーレ・ワンジャー氏をリーダーとしたザ・カオス・パイロッツ(カオスの飛行士たち)による、「平和な空気をつくり、文化破壊と暴力を阻止する」というメッセージが込められたライブだったそうで、坂本龍一による「ZERO LANDMINE」や「No Nukes」のようなコンセプトを持ったフェスティバルだったのだろうかと想像していますが、イベントそのもののコンセプトに関する詳細はこれ以上出で来ず…。ただライブフェスティバルというよりはアートフェスティバルの側面が強かったようで、以下に引用したブックレット中の文章からそれが窺えます。

「期間中、街の中心部は姿を変え、一年で一番おだやかな雰囲気につつまれることになった。同系色で染められた衣服と拡声器がワイヤーで吊られ、路地に掲げられた。洗濯物に見立てられた、たくさんの服が揺れる光景は、街を行く人にアット・ホームな安らぎを与えた。夕方から夜にかけて、このエリアでは、リラックスして心を和ませる静かな音楽が流され、ほとんど魔法のような不思議な雰囲気が醸しだされた。特に、夜に行われた4人のミュージシャンによるリラクゼーション・ミュージックの生演奏は、「サムシング・イン・ジ・エアー」プロジェクトのハイライトと呼べる最高のものとなった。そのライブを収録したものが「空のささやき」である。」

つまりはデンマーク・オーフスという街ぐるみで、街を包み込むように行われたアートインスタレーションを主としたフェスティバルのようです。規模感までは察しかねますが、装置の説明からしてそこそこ大がかりであった様子。そしてこのイベントの締めとして行われたライブが本作収録の音源ということです。バンドメンバーはギターのMikkel Lentz、ボーカルとキーボードのTurid N.Christensen、同じくキーボードのPer HolmとRishi、以上の4名。リーダーのトーレ・ワンジャー氏は演奏自体にはノータッチです。どの方も名前を存じ上げませんが、本プロジェクトのために集められたニューエイジ・リラクゼーション系のミュージシャンのようです。

ここまでブックレットからの引用をメインに詳細を綴ってきましたが、はっきり言って本作はそのような余計な情報なしに十分楽しめます。浸れると言った方が正しいでしょうか。一言で「究極のニューエイジ・催眠・ミュージック」のひとつに違いありません。本ブログでは何度か申し上げていますが、私は毎朝早い時間に出勤する必要があるため、通勤電車では殆ど眠ることにしています。そこで電車や街の雑踏に気を散らせないため、アンビエントニューエイジウォークマンで(半ば耳栓代わりに)聴いてます。今年の前半は専らBrian Enoの「Reflection」と「Thursday Afternoon」を1日ごとに聴いていましたが、本作に出会ってからはほぼ毎日本作を聴くことにしております。それほどの快作。運命的出会い。一曲52分という時間が通勤時間に丁度合うのも勿論大切な点ですが、それ以上に、他のアンビエントニューエイジ系音楽に私が感じてしまっていた「擦れ」「過不足」のようなものが一切無いところ、ここが睡眠導入という用途に最適だと感じたのです。

キーボード・シンセサイザーの音色が風のように優しく頬に、身体に触れ、悠久の眠りの誘発を予感させます。その風は一瞬一瞬こそ単調なものの、グラデーションを察知させないトーンで揺らぎを変えていきます。そこに絡み付く「鼻歌と吐息の狭間」のような女性コーラスが鱗粉として、ギターがコヨーテの遠吠えとして作用し、雑音やエフェクトでない「波の表情」と静かに受け入れることができます。それらの波紋が主旋律とは正反対に確固たるかたちを持つ故に、一定のグルーヴを形成していることも事実。これらが不思議とまた全く耳障りでないんですよね…。Tangerine Dreamの初期作の前半部(超絶カッコよくなっちゃう手前まで)を微かに彩ったものを52分聴いている感じ?と言ってみたものの、この絶妙なバランスの比喩を他の音楽に委ねるのはどうしても困難。買ってください、皆さん。

 

これはもう断言してしまいますが、本作は私の今年のベスト1です。ブックオフディグにはまだ砂金が潜んでいました。普段ニューエイジ系を聴かない方も、せめてブックオフで見つけたら「買い」だと思います。以下に日本での流通網となったサイトのURLを載せますので、そこから2分だけ試聴してみてはいかがでしょうか。

http://www.takatsukasa-shinri.com/webshop/cgi/smart.cgi?mode=item&page_id=com&no=RG-88

 

皆さんは今年コロナ禍でどんなベスト1を見つけましたでしょうか。あと1ヶ月半もすればネット上でいくらでも見れますが。てかいよいよ今年も終わりです。カタストロフにまみれた1年、私は本作くらいがせめてもの諦めの「つて」でしょうか…。ではまたいつか。