廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

中級な収穫まとめ その5

2回連続でVHSディグの成果を紹介する記事になってしまい「廃サロンも早くも廃業かな…」と思いかけてましたが、裏腹に枕元にはCDがうず高く積まれていく日々(VHSも同様にうず高いんですけど)。もうこれはちょっと1枚の盤で固有の記事を書くのは諦めてごった煮レビューにしてしまおう、ということでこちらを執筆しております。今年はまだパ音とCFCF+dip in the poolとNightTempoのライブが残ってますし流石にそろそろビデオだけでなく音楽に向き合わないと…。という謎の罪悪感を中級レビューで消化していきたいと思います。

 

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アヤパン(高島彩)「着信のドレイ」(2002)

もしかしたら現時点で今年一番聴いた盤かもしれません。少し前に渋谷ディスクユニオンにて450円で手に入れました。神保町に存在するアイドル歌謡の聖地「タクト」で確か3000円程度で売られていたのを見たことがあります。破格。

こちらは元フジテレビアナウンサーの高島彩がフジテレビの深夜番組「千枚CD」の企画でアイドルとしてアヤパン名義でリリースした唯一のシングルです。当時の高島はまだ駆け出しの新人で、本作も1000枚限定販売だったようです。後の彼女の正にアイドル的人気、00年代の女子アナブームを牽引した功績(?)から考えると枚数の少なさに驚愕しますね。A,B面共に作詞は秋元康、作曲は馬飼野康二というウンザリするくらいお馴染みな面子。さらに表題曲「着信のドレイ」はWINKを彷彿とさせるユーロ歌謡という情報は前々から入れていたので気になってはいたんですよね。この価格帯でなければ絶対に買いませんが…。

まあまあ、しかしながら一聴してみると我らがバイブル「ラグジュアリー歌謡」に掲載されているだけあるな、という味付けがなされています。というか単に「WINKぽさ」を煮詰めた味付け。安易と冒涜の間なWINKオマージュ許すまじ、という方には全くオススメできませんが、小刻みな拍の取り方に合わせて指先をタップしているとそんなこともどうでもよくなってきます。本作に限らないのですが、このような半狂乱なパカパカパカというパーカッションを聴いているといつもKRAFTWERKに一瞬在籍していたフェルナンド・アブランテスのことを思い出してしまうんですよね。KRAFTWERKのコンセプトから逸脱しかねない動的な叩きっぷりに見かねたラルフとフローリアンがクビにしたと専ら噂のアブランテス…彼の技法めちゃくちゃ好きなんですが。彼のクビを切欠にKRAFTWERKのライブにおけるコンピューターのみでの音源制御が進んだというのも皮肉な話でして…ここには全く関係ないですが…。

https://youtu.be/IiDFpDwpTxs

KRAFTWERK「Numbers,Computer World(percussion:Fernando Abrantes)」

 

歌詞は「彼氏からのメール中毒になっちゃったよー」というもので、松浦亜弥のデビュー曲「ドキドキ!LOVEメール」の激情版といった趣です。音がギトギトすぎて大して歌詞の内容が聴いてても入ってこないので言うことは特にありません。すみません。ただサビで1番では2段階、2番では3段階にフレーズのキーを上げて繰り返す所は無理あるだろって感じで笑ってしまう。書いててレビュー向きでないなと思いつつ、でも紹介したかったのでこんなところで締めます。中級なのでこんなもの。とにかく聴き始めると私みたいに連続10回くらい聴いてた!という羽目になること請け合いです。

今のJ-POPって「あの人からの既読が全然付かないんだけど未読スルーしてんのかしら?」って歌詞存在するんですかね?「いいね!の数よりも大切なものがある!」みたいな奴はたまに見かける気がするんですが。

https://youtu.be/ouCtoguv0Zw

アヤパン「着信のドレイ」

 

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セクシーメイツ・他「テクノカラオケ Vol.1」(1994)

目黒区図書館でレンタル。タイトルでお察しいただけますでしょうか。そう、以前ご紹介したこともあるザ・マイクハナサーズの類似作品です。「ハートのエースが出てこない」「ロマンスの神様」「決戦は金曜日」等といった当時の新旧カラオケ定番曲を赤の他人が歌うという内容。さらに殆どの楽曲の歌い手はこれまた以前取り上げたギリギリガールズC.C.ガールズ等と同様セクシーアイドルの一派である「セクシーメイツ」(男性歌手の曲はマジで知らん誰かさんが歌ってます)。おまけに各曲テクノアレンジ(ユーロビートハイエナジーの要素もありますが根幹はデステクノ系でしょうか?ゴリゴリ)が施されています。これでみんな大好きと言わず何と言いましょうか。私だけか?カラオケ屋の機種でDAMを選択すると歌謡曲を調べてる時に(テクノアレンジVer)みたいな奴が出てくるのを見たことのある方はいらっしゃいますでしょうか?どうやらそれが本作の収録曲らしいです。ブックレットにそのように記載されていました。

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前書き、最高か…?

マイクハナサーズのものと主に違う点は、全曲フルコーラスのものをフェイドアウト無しに繋げているので長尺で聴き続けやすい所とセクシーメイツの歌唱が本人に近づける気の全くない、あくまでカバーなので「これはこれで」という気持ちで聴ける所でしょうか。いや、めちゃくちゃ良いですよ本作。「テクノカラオケ」と名乗ってハウス系に逃げてない点も大いに評価できますね。

先ほど上げた収録曲の他も、セクシーメイツ歌唱のものはアイドルものとガールズポップ系に絞られてます。プリプリが入ってないのが「らしい」というか。珍品としては中森明菜の「愛撫」なんていう渋い飛び道具も収録されています。いやー笑っちゃうくらいデステクノアレンジが似合わないこと。「フー!」って言われてもねぇ。

廃サロンの信条のひとつである「度が過ぎた俗物精神の愛護」を考える上で必聴盤であることは間違いありません。では何故本作で一本書かないのか?オススメには値しないからよ!こんなの私だけ楽しいやつです、どうせ。

Vol.1ということでまだ他にもシリーズが存在するようです。裏町で密やかに捜索を継続したいと思います。

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セクシーメイツの皆さんです。

https://youtu.be/GB38YqcD5dk

↑歌唱動画が無かったのでせめて動くセクシーメイツもどうぞ。


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杉真理「ladies&Gentlemen 」(1989)

目黒区図書館にてレンタル。シティポッパーの方々にはナイアガラ人脈として、また名盤「Stargazer」等でお馴染み杉真理がトレンディ期に発表した10thアルバムです。以前まで杉真理は全く聴いたことなかったのですがVHSディグで出会った赤星たみこ氏原作のトレンディドラマ「恋の街東京」の主題歌として本作収録の「歴史はいつ作られる」が流れたのを聴いて即図書館のサイトでレンタル予約をしました。VHSディグがCDディグに繋がる、ディグの連関が起こる瞬間というものは誠に気持ちがいいですね…。まずアートワークがなかなか秀逸だと思いました。フォーマルな男女のシルエットがシンプルながら古くせー。ブックレットの中にもかつてのクリップアートを彷彿とさせるテイストのイラスト(各々に脈絡なし)が散りばめられています。こういった古本屋のワゴンセールで打ち捨てられているwindows教則本みたいなノリは大好きですね。Vaporとはまた違うような、オタクくんの精一杯のお洒落と言うべきか、なんか可愛げがあって素敵です。

肝心の内容は中庸ながら、要所要所で杉の卓越したポップセンスが光る好盤となっております。件の「歴史はいつ作られる」は正当にトレンディドラマ主題歌してます。博愛な詞にポップス表千家なアレンジが何の間違いもなくハマってくれています。ポンキッキ感ある平和な楽曲です。その次曲「月に行く舟」も最高なんですが、メロディーの展開がモロ「いちょう並木のセレナーデ」で笑ってしまいます。「moonlight」「古ぼけたコメディのような」等、変哲無さそうで実は現代J-POPで聴くことは叶わないフレーズが散りばめられていて快感と失笑に包まれますね。そのまた次曲はうってかわってハードビートなラテンポップス「エウロパのSunset」。これが本作の最高傑作ではないでしょうか。ノリはどちらかと言うとめいこ嬢よりかは松岡直也氏の方のラテンか?夕焼けにスペーシー要素を絡めた詞はオッシャレ~とはどこかひとつ掛け違えてしまったかのようなちぐはぐさ(「エウロパ=木星の第2衛星」の意なんですね)。でも、こんな丁度いいBPMのラテンを提示されてしまえば踊らずにはいられません。和レアリックとか深いこと考えてはいけません。「カンパリ色の空」の下、僕らは躍り狂うしかないのです…。「クリスマスのウエディング」はテンプレなクリスマスソングの寡作。実はこれもVHSディグで出会ったトレンディドラマビデオの主題歌だったんですね。菊池桃子鈴木京香風間トオル吉田栄作出演のトレンディクリスマスラブコメのB級名作『東京Xマス・ラブウォーズ』。主演4名の最高すぎる布陣はもとより(本作がほぼドラマ初出演だった鈴木の可愛いこと…)、端役がピンクの電話吉村明宏(アッコの物真似といえばMr.シャチホコじゃなくて彼ですよね)、高橋ひとみ等と「VHSトレンディドラマディグをしていると遭遇しがちな皆様」を総ざらいしていて嬉しくなってしまいます。YouTubeでも観れるのでうっかりURLを貼ってしまいましょうか。

https://youtu.be/MUGe7_HUHpw

そして本作の終盤、四人の恋の行方は如何に…?を飾るのが杉真理の「クリスマスのウェディング」だったのです。J-POPのオルゴールアレンジなんかにも通じる陳腐な優しさを感じながらも「結局こういうのも好きなんだなぁ」などと自分が「人間」である実感を持たせてくれます。

VHSディグには一度視聴したのち作品を反芻することで見聞を拡張していく喜びがありますが、音楽は手間のかからなさから何度も飽きずに聴き進んでパラノイアになっていく喜びがあります。その2つが絡み合ってしまうとちょっとヤバいな、と本作から思わされました。ビデオの視聴感覚が音楽によっていつまでも延長され続けてしまう…。


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三枝成章ハートカクテル Vol.6」(1991)

突然ですが、皆さんは「癒し」とか「BGM」ではなく純粋に「寝るため」に音楽を聴くことはございましょうか…?私は頻繁にあります。学生時代は晩の就寝前に好きな音楽を聴いてたらいつの間にか眠りについていたということがしばしばありました。しかし今は出勤時間が朝6:00とかなので、通勤電車内で「今軽く寝ておかないと仕事きっついな」と若干子憎たらしい理由で、「寝るため」の音楽をウォークマンで流しながら電車の座席の端に寄りかかりながら眠っています、毎朝。早朝の眠気眼の身にとって電車・駅って割とうるさい場所で、振動音・車内アナウンス・他の乗客のひそひそ話等「軽く寝たいだけなのに」という立場からはキツい雑音に満ちています。だからそうして散漫になりがちな意識を「音楽」一点に全て委ねる必要があるんですね~。

私にとって「寝るため」の音楽に肝要なのは①楽器数、音使いがミニマムであること②ほぼパーカッションレスであること③アルバムにおいて、一曲毎の長さが3,4分であること、この3点です。①②については最低用件と言いますか、こうでないと眠れないのです。生楽器モノにしろシンセものにしろ、パーツが過剰では眠れたもんじゃございませんし、波打つところに一定の振動が付いていては「ノリ」を引き起こしてどうしても気を牽かれてしまいます(ささやかなドラム程度なら可)。さらに③の要素に叶っていればより「使いやすい」アルバムだと言えます。アンビエントニューエイジのアルバムだとしばしば「50分一曲のみ」みたいなものも存在しますが、これだと導入部を聴き覚えてしまいなんとなく頭で「あぁこういう曲だったなぁ」などと思わされ、眠りへと沈み混むのが遅れてしまいます。その点3,4分の曲が12曲程度収録されているアルバムですと、シャッフル再生によっていくらでも眠りの導入を新鮮にすることができます。どうせ途中で寝てしまうのであんまり各曲しっかり記憶しませんしね。ちなみに逆に1分程度の小品が沢山入っているものも気が途切れやすく、加えて曲間の無音時に外部の雑音を聞くハメになるので×です。この3つを全て満たす作品というものはなかなか見つからず、日々少ない手持ちカードの中から一枚アルバムを選出し「今日は眠れるか…?」と不安におののきつつ瞳を閉じています。まったく、我ながらどうしようもない奴ですね。

で、本作が登場するわけです。こちらは中野ブロードウェイ内のまんだらけUFOにて108円で購入。やったぁ、ハートカクテルだぁ!それにしても安すぎませんかね。わたせせいぞう氏のトレンディ・ラブ聖書コミックこと「ハートカクテル」、そのアニメ版のサントラシリーズの最終作です。本アニメのサントラといえばラテンフュージョンの名手松岡直也氏が手掛けたvol.1,2が頻繁にディスクレビューなんかで取り上げられますが、その他のアーティストの手によるものも変わらず素晴らしいです。特に本作は「お洒落」の観点だけでなく「寝るため」という実用?の観点からも最高傑作です。1「ラッキー・キーワードはG-8」を筆頭にほぼ全曲スムースラウンジものとして滅茶苦茶眠くなれるんですよ。囁くピアノ、ブリブリ言わない妖精の如きサックス、撫で付けてくれているかのようなピチカート奏法、そして柔らかにラグジュアリーなシンセ…。下北Threeの無題イベントで観た森で暮らす氏の作品を彷彿とさせます。JT提供の深夜5分アニメでこんな良質なものを提供されてしまえば、そのあまりに短い放送時間よりも早く眠りに落ちてしまいそうです。あぁ、リアルタイムで観たかった…などと思いながらメルカリでVHS版をちまちま収集しています。じゃあ別にいいじゃん。本ブログをお読みになるような方には珍しくもなんともないアルバムでしたが、私は失礼ながら以上のように「服用」しています。

https://youtu.be/fT7MkVVp2g8

「ラッキー・キーワードはG-8」

 

何度目かのリハビリ的CDレビュー、今回は以上で締めさせていただきます。

いやぁ、もう年末近いんですね。ぼちぼち今年のベストについて考えていかねばいけません。去年までと違って今年はVHSのベストも決めたいですね、全く「今年の」でもないですが。