廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

第14回 Martin Denny「EXOTICA'90」

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Martin Denny「EXOTICA'90」(1990)

わーい皆大好きマーティン・デニーだー。悠久のトロピカルサウンド、エキゾチカの大御所である彼のラストセッションアルバムです。当時現役を退き隠居生活状態だった彼を引っ張り出し、東京でヤン冨田が、ハワイ・ホノルルで盟友ジュリアス・ウェクターがセッションをプロデュースして制作された作品だそう。収録曲としては代表曲「QUIET VILLAGE」「FIRECRACKERS」の再録を中心に新曲を数曲織り混ぜている感じです。これ、中野のブックオフで見つけたんですが驚きましたね。中野のブックオフ、CDコーナー自体激セマで基本的に何も掘り出し物が見つからないじゃないですか(謎の同調圧力)。この盤の存在すら知らなかったしマーティン・デニーの音源自体そんなに改まって聴いてこなかったので買っとくか~となりました。

まず、(ネット上でも既に書かれてる方がいらっしゃいますが)音が当然ながら彼の全盛期に比べて遥かに綺麗で広がりがありますね。そのせいでエキゾチカ特有の「物語上・架空のジャングル内における高揚感の連想」のようなものは薄れているようにも思います。でも流石、聴いていて実に気持ちいいです。正しいRevisionというか、廃サロン的には理想の音楽ですね…。ホノルルセッションに関してはそれ以外に言及したい点もないんですが、東京でのセッションは加えて来日記念なのか「お祭り感」が強いです。レコーディングには日本の大御所が多数参加し「コーラス&ハンドクラップ」などというやってもやんなくても良いんじゃないか、という仕事をしていっています。面子をかいつまんで列挙してみますと、あがた森魚いとうせいこうS-KENホッピー神山桑原茂一小西康陽近田春夫・サンディーetc.の25名くらいといった感じ。加えて近田春夫は4「SAKE ROCK」でシンセとベースを、サンディーは6「CHOTTO MATTE KUDASAI」(この曲廃サロンで3回目の登場ですね…嬉しい…)でボーカルを担当してますね。一応15「FIRE CRACKERS」にも触れておくと、高揚感を煽るような前奏が追加されていたりオーケストラ・テクノっぽいアレンジになっていたりとやたらゴージャスです。このくらい変化があった方が聴きごたえがあって面白いと個人的には思いますが、エキゾチカを本腰入れて好いている方々にどう思われるかは謎です。この曲は東京セッションなのですが、最後に前述したような面子による三本締めが行われています。やっぱりセッションという名のお祭りだったんだなぁ。

全体の質感から、エキゾチカはテクノなんだという事実が再レコーディングで浮き彫りになった作品だったのだと感じました。無国籍・無時代な音楽ではありますが、ただ科学が・楽器が進化してしまったんだなぁ…と。凄く興味深いアルバムでした。

ホノルルセッションで撮られたと思われるマーティンたちの写真が可愛かったので最後に載っけておきます。おじいちゃん…。
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https://youtu.be/VbyuHreBHYs

Martin Denny「Burma Train」

一曲だけ試聴できるものがあったので載せておきます。