廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

玉石混交な収穫まとめ その14

毎度ながらご無沙汰しております。5ヶ月ぶりですって。

本ブログどころかTwitterもそれほど投稿しなくなり、すっかり社会内外における隠遁生活で苔が生えまくっております。CDディグは相変わらず継続していますが、年末年始あたりで所謂60-70年代の「和モノ」にハマりまして、こういう界隈の作品群はコスられすぎている故「私がわざわざ再レビューする必要もないな」と…。成果物をあえて紹介することもやめてしまいました。しかしながら、あの、成果物を他者と共有できないディグほど虚しいものも無いと個人的には思っているので(黙々と我流のディグを征く方々が数多いらっしゃるのは重々承知ですが、どちらかというと私は「あーアレ良いっすよね!!」とかしたい)…。また仮にレビューを続けていたとしても、何しろ弱小ディガーな身分のためそれほど盛んにネット上で他のレビュアーの方々と情報交換できる訳でもなく、「そういう」リアルなイベントもここ最近は殆ど無いため直接お話などもできませんで。よって最近は致し方なく黙々ディグをしながらウマ娘に熱中する虚無生活を送っております。ジュリアナテクノを聴きながらウマ娘育成してると捗りますよ、やっぱりユーロビートは作業用BGMにうってつけだったんですね。

しかしながらこんなコロナ禍でもディグへの真摯な姿勢を保ち続けようと活動されていらっしゃる方も沢山いらっしゃいまして。先日カルトさんのディグブログ「ナチュラル・デチューン」にて公開された「Why dig? How to Dig? 〜音源蒐集のススメ〜」という記事を拝見し感動してしまいました。その詳細なディグの手引にも勿論ですが、当ブログでかつて雑に記した「(目黒区立)図書館ディグの方法」を紹介していただいたことにもびっくりしました。ディグの参考にしていただいていたとのことで、大変恐縮させられると共に「私ももう少し頑張らねば」と武者震いさせられたのでした。カルトさん、相互フォローとはいえ交流は全く無かったのでとても嬉しかったです。本当に有難うございました。カルトさんの当記事はディグ初心者(ディグ初心者ってなんだろう…?)の指針になり得るのは勿論、熟練者が基本に立ち返るのにもうってつけだと思いました。はっきり言って必見です。

Why dig? How to Dig? 〜音源蒐集のススメ〜 - ナチュラル・デチューン

 

では四の五の言ってないで久方ぶりの雑レビューを始めていきたいと思います。今回はリハビリなので枚数まあまあ内容薄めというよわよわ紹介になるかと思いますがご了承下さいませ。


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加山雄三withノーキー・エドワーズ加山雄三with NOKIE EDWARDS ― 永遠のギターキッズ」(1997)

太田区図書館にてレンタル。ご存知若大将とザ・ベンチャーズの初代ベーシストであるノーキー・エドワーズのジョイントライブの模様を収録したライブアルバムです。共に60年代の日本におけるエレキブームを牽引した偉人であり、当日の少年たちの憧れの存在でした。その2名がエレキギターを「エレキ」とわざわざ呼ばれなくなってしまった時期に謎の遅れ馳せ共演。しかしながらこの盤、あのサウンドが好きならばかなり良いですよ。加山のハイパーランチャーズ(お付きのエレキバンド。1994年結成)を率いての名曲披露の後、ノーキーや特別ゲストの現ザ・ベンチャーズによるマスターピースの演奏、そしてクライマックスは3組による共演プレイという流れになっておりますが、全編通して音圧が良く、個人的には全盛期の録音を聴くよりもよりパワフルでノれるサウンドに仕上がっていると感じました。加山を差し置いてアレですが、私は「Walk Don't Run(急がば回れ)」がいかにもな歌謡曲的進行をしていて大好きで、本作で2度もハイクオリティに演奏されていて嬉しい。ベンチャーズのライブ映像なんかをYouTubeで観ていると案外迫力減退なプレイも散見され「アレ?」みたいな場合もあるのですが、本作に収録されている音源はそんなこともなく十分キモチイイです。「Black Sand Beach」も脂のってるなぁ、村下孝蔵バージョンの方が好きだったりするけどね(村下のライブ盤で聴けます。ご存知の方も多いでしょうが何なんでしょうあのバカテクは)。ジョイントライブの音源としてでなく、単に「日本とエレキ·テケテケサウンドの関わり」を堪能するのにはうってつけなアルバムだと思いました。クライマックス直前に「君といつまでも」を歌うのはどうなの…?という気がしないでもありませんが。これと同時期にリリースされた現ザ・ベンチャーズによるセルフカバーアルバム「V-Gold」を聴いておけば間違いないです。

そういえば加山の光進丸って結局どうなったんでしょうね。


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I’veShort Circuit」(2003)

秋葉原駿河秋葉原駅前店の店頭に置かれたエサ箱にて110円で購入。主にゲーム音楽を手掛けるクリエイター集団「I’ve」による、所謂美少女ゲームの電波系テーマソングを集めたコンセプトアルバムです。

2021年、GW真っ只中の秋葉原はディグするには非常に微妙な街でした。レコファンが開店して久しいもののいまいちディグり甲斐がなく、ブックオフは(近頃のブックオフはどこもそうですが)品揃えがちっとも魅力的でない。後は御茶ノ水や神保町まで歩いてレコード屋巡りをするか、それほど移動せず駅前でデカめのオタクグッズ屋さん(ご時世的に休業中の店舗も多かったですが)を覗いてアニソン・ゲーソン・同人CDをディグるか…。後者に関しては私それほど詳しくないんですよね…。しかし、投げやりな気持ちで駿河屋のエサ箱を覗いてみると結構変なCDが並んでいてちょっと面白そう。その中で110円だった本作とその続編「Short Circuit 2」を購入。決め手は1の方に伝説の電波ソングさくらんぼキッス〜爆発だも〜ん〜(Kotoko)」が収録されていたこと。かつてYouTubeでPV付きで聴いたこの曲の奇妙でグロテスクとさえ言える中毒性には以前から色々な意味で一目置いていたのですが、TSUTAYA等では音源がなかなか入手できず。そんな中での予想だにしない僥倖でした、一応。

さくらんぼ〜」に関しては↓を一聴いただければ全てお分かりになるかと思いますが、電波系でありながらバリバリの打ち込みサウンドと大味なギターが「悔しいけど気持ちいい…」というやつ。歌詞にゾワゾワしない心持ちで聴ければ結構ハマってしまう。ネット界隈ではハチャメチャに有名みたいです。

KOTOKO / さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~ - YouTube

 

このヘロヘロな曲を歌うのはKotokoという歌手。アニソン・ゲーソンを主戦場とする大ベテランだそうです。大メジャーな案件(?)も多く、特別「知る人ぞ知る」感はないようです。他に色々な曲を聴いてみるとカッコいい声(雑)も出せています。歌手ってすごいよね。

本作では収録曲の殆どをこのKotokoが歌唱していますが、分かりやすい電波曲と「テクノ歌謡が好きなら普通にカッコいいと思えるかな?」な曲が半々くらい。後はKotoko以外でソロを務める詩月カオリの楽曲がどれも良いです。甘ったるいだけでない、清涼感溢れる歌唱が聴けます。「Pure Heart 〜世界で一番アナタが好き〜 –Remix–」はいかにも媚び媚びな歌詞とキラキラピコピコなアレンジが2003年らしさ満載。こういう楽曲ってもう生まれないんだろうなぁ。ねっとりと纏わりつくような甘さ、だけれどちょっと切ない、守りたい…、みたいな? は?アホらし。って気張った世界観もなきゃ絶対駄目だけどさ。歌謡曲って架空を歌うものじゃないですか。あくまで好き好きが2番手にあるべきであって別にこういうのが存在すること自体が殴られ蹴られされるべきじゃないと思う(謎の被害妄想)。

PCgame PureHeart Full / 詩月カオリVer. - YouTube

 

という訳でこれこそ象徴としての「2003年テクノ歌謡」の一端を担い得る盤のひとつなような気がしました。さくらんぼ、と言えば大塚愛のアレなんかも実は「2003年テクノ歌謡」だったんじゃないかな、などと思いました。


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「パラパラ大パニック 2000BEST」(2001)

太田区図書館にてレンタル。ギャル向けの、フリを付けて踊るためのユーロビートアルバムのシリーズ「パラパラパニック」のベスト盤だそうです。私はユーロビートが全般好きですが楽曲の拘りなどが無く、図書館やTSUTAYAにあるアルバムを今でも手当たり次第聴いている感じなのですが、本作はジャケに惹かれて聴きました。本シリーズのアートワークは基本よくある「ギャルたちが手をばぁーっと広げた写真」で構成されているのですが、何故か本ベストだけチャイナ。こいつだけ雀荘。カッコいい〜。

収録曲は当然ユーロビートなのですが、ジュリアナテクノではないのでL.A.Style「James Brown Is Dead」のような往年の名曲や「Night Of Fire」のような大ネタは一切排され、ひたすらBPMの早めな刻み込むが如しのアレンジがノンストップで聴けます。もしかして全部シリーズ用のオリジナルなのかな?途中途中で日本語の楽曲もあったりして単なるパラパラアルバムで終わらせてくれないところがちょっと良い。80-90年代のユーロビート歌謡でない、パラパラ歌謡ってあんまり見つからないのである意味希少な気もします(?)。

↓本ベスト用のものではありませんが、シリーズの教則DVD映像が転がってました。いいねぇ。

Para Para Panic! 1 - YouTube


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紫艶「渋谷のネコが呑も呑も!」(2002)

渋谷TSUTAYAにてレンタル。演歌歌手、紫艶による1stアルバムです。彼女は歌手として活動はそれほど注目されませんでしたが、当時の桂三枝(現・桂文枝)と長らく愛人関係にあり週刊誌を騒がせ、騒動後は一時セクシー女優として活動、年月が経ち2019年に突如孤独死し帰らぬ人となりました。

経歴は楽曲を左右するものではないので置いておくとして、打ち込み演歌・ジャパニーズポンチャックに当たるものが大好物な私にとっては本作は良作でした。まずタイトルとジャケが良いですよね。00年代のスナッキーなイメージ。彼女の歌唱は結構「しっかりめ」で、企画モノ?と舐めてかかると良い意味で裏切られます。ポンチャック的なものも散りばめられつつ、ラテン系アレンジというこの手の作品におけるノルマもきっちり回収(「時間差ホテル」)。こってりとした「艶歌」もいける。ラストに収録された平山みきのカバー「真夏の出来事」は予想を裏切らない平均点っぷり。演歌って打ち込みまみれで大味だから良いのよね」とそういうコーナーを漁るような方にはうってつけの盤なんではないでしょうか。演歌と打ち込みの癒着は言うまでもないですが、ここまで胸焼けするほど露骨なアルバムもなかなか珍しいような。

表題曲である「呑も!呑も!」のPVも(画質含め)完璧です。こういうの観てると長谷川真吾「馬っ鹿じゃなかろかルンバ」とか思い出しますね…。最近出会った演歌アルバムだと最推しです。

呑も!呑も! 紫艶 - YouTube


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chekov 「psych out」(1998)

秋葉原レコファンにて100円で購入。先ほど「Short Circuit」の項で「アキバのレコファンはいまいち」と記しましたが、それでも秋葉原に用事のあるときには大抵寄るようにしています。といってもJ-POPの100円棚はどこででも買えるような盤しかないのでほぼ見ず、毎回洋楽の棚から直感で1-2枚抜くくらいのディグになりがち。テクノやトロニカで当たり盤があればいいな〜という殆ど期待しないテンションで買うのですが、本作はかなり良作でした。

chekovというアーティスト、検索しても殆ど情報が出てきません。 ドイツのエレクトロニカレーベル(?)であるDeck8に所属していたアーティストのようで、discogsによると2002年までに本作含め4枚のアルバムをリリースしています。作風はテクノ成分強めのラウンジもの。午後に家事でもしながらゆったり聴ける、というぬるいラウンジではなく、重たい打ち込みやジャングル等が多用されたハードコア系な音作りがなされています。

Chekov - It Came From Outer Space - YouTube

 

フリーソウルっぽくもあり、渋谷系の元ネタにありそうな感じともとれますが時代的にはズレますね…。「Stereofonic Sounds」とか言ってるし…。

なんだろうな、音はすごく良いんですけど、オタクくんが女のコに「モテたくて…」作ったり流したりするような世界観っぽくもあり、そういう穿った聴き方をしても面白い盤なのかなぁと…。ジャケの安っぽさも○。

何しろ情報がほぼ皆無なので実店舗では狙ってディグりにくそうですがネット上では安価で出回っているのでついで買い等にオススメです。普通にカッコいいので。渋谷のときもそうでしたが、レコファンは安い無名盤を買って、聴いて調べた後もずっと霧に包まれたような気分になれるのがいいですね。

 

…久々のレビューでしたが案外量書けましたね。他にも沢山発掘してはいるのですが筆のノる盤とそうでない盤があるのは別問題で…。なるべく続けて次の紹介ができるといいのですが、あまり期待せずにお待ちいただけると幸いです。