廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

玉石混淆な収穫まとめ その12

最近「廃サロン、もうこのまま放置でいいかぁ」と思ったりしてました。決してディグをしてない訳じゃないんですけど、なんかこう、YouTubeで「都内をひたすらドライブするだけ」の動画とか観てたらレビューとかする気起きなくて…。大体、最近ブックオフの品揃え軒並み悪くありません?「コロナ禍→ステイホーム→断捨離→好盤がブックオフに並ぶ」という図式を期待していたのにガッカリ。CDを買うのもすっかりメルカリ頼りになってしまいつまらない今日この頃。しかも私がメルカリで買うような盤は、既に誰かがレビューしたのを見て気になって買うパターンが多いので、改めてレビューし直そうとはならないんですよね。よってディグやレビューへの気力が最近はめっきり失せていました。軽いCD弄りならTwitterでいいですし。

しかしそんな私を改心させたのが渋谷・頭バーで9.12に開催されたDJ.Pigeon氏主宰のDJイベント「DJ.Pigeonの知らない音楽」。約半年ぶりに訪れた音楽イベントとなりましたが、ここで柴崎祐二氏・珍盤亭娯楽師匠氏・数の子ミュージックメイト氏(先日発売された素人カラオケ音源CDが最高でした)、そしてデラ氏のDJを拝聴し、「未知なる音楽」への欲望がグツグツと増進されました。催眠療法のCD、幼稚園児の歌う「勇気100%」、一世風靡セピアの糞ダサ口上楽曲等々…、「あぁ、こういうこってりしたDJが聴きたかったんやワイは…」と号泣してしまいました。あと柴崎さん・パ音柴田さん・たまおさん等と久々にお話できたのも本当に良かったです。

てな訳でイベント熱が冷めないうちに、2ヶ月ぶりに玉石混淆レビューです。小出しにして次回に繋げていこうという意思から3枚のみですがご了承ください。


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平部やよい「彩響-平部やよい作品集」(1994)

五反田のブックオフにて510円で入手。アートワークの淡い幾何学模様がなんとも教科書チックな本作は、エレクトーン奏者・作曲家の平部やよいの2ndアルバムです。CD掘りし者はすべからくエレクトーンという単語に敏感なような気がします。別に現在でもバリバリ使用される楽器なはずなのにどことなくトレンディを汲み取ってしまう、なんとなく安っぽい癖にスノッブ、そんな衣を纏っているのがエレクトーン、という印象があります。と言っても本作は基本ライトクラシックもの。マリンバ、バイオリン、チェロ、ピアノとの共演で、「癒し」よりかはやや硬く張りつめた作風です。それもあって無心に聴き流してしまいそうになるのですが、④「ART 1907-1931」の連作は白眉です。面白い。近代美術の1907-1931年までの流れを念頭に制作された楽曲だそうで、「Ⅰ.キュビスム」「Ⅱ.エコール・ド・パリ」「Ⅲ.ダダ」「Ⅳ.シュルレアリスム」の4部から成っています。肝心のエレクトーン具合は、導入部で中村幸代の「Space Bee」っぽい忙しなく跳ねる音が聴けてそれだけで満足。あー、後は「映像の世紀」のサントラっぽいような…?こういった実験曲が入っているとアルバムの冗長な印象がグッと引き締まるというか、ニューエイジ解釈も全然可能になるというか。12分ある楽曲なのでそう頻繁に聴くというもんでもないでしょうが、ともかくこの手の斬新さが顕著に散りばめられたアルバムだったらもっと好盤だったかなぁと少し惜しい気持ちです。


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フレディ波多江「ミスター・グッド・ガイ」(2013)

冒頭に挙げた件の某激ヤバDJイベントに特設されていた「100円CDコーナー」にて入手。イベントの告知ツイートにこのジャケの画像が映っていたことと、どうしてもこれは気になるでしょ‥ということで半ば「諦め」のような気持ちで購入しました。しかしこれが「俗テクノ歌謡」してまして、100円にしては中々の当たり盤だったのです。

フレディ波多江はその名前から察し得るように(ビジュアルは谷村新司なものの)Queenのカバーバンド「Gueen」のボーカルを務めつつ、普段は大手楽器メーカーで国内マーケティングを担当するというなかなかおカタい職業の方。しかし国内のQueenファンからはそこそこ知られた存在のようです。彼のTwitterを覗いてみたら知り合いがフォローしてたりと謎の縁。本作はそんな彼のソロアルバムとなっております。全6曲収録でそのうち2曲がリミックス、尚全ての楽曲名に「愛の」が付きます。まず、私はQueenリスナーでないので楽曲がQueenにインスパイアされたものかどうかについては一聴したのみでは殆ど判断できませんでした。③④がシンフォニックロックバラードものなので若干それっぽいのだろうか…などと思う程度。どちらかと言うと①②の「俗テクノ歌謡」がQueenのコピバンをする人間との解離・意外性を感じ楽しめました。①「愛の救助隊」はいきなり主張の激しい安っぽい四つ打ちから始まり、「イェーイ!」との雄叫びに続いて歌われます。この時点で「イ・パクサの旧譜か…?」と思ってしまう位にはポンチャック的。歌詞の内容も安直に「愛を、君を助けるぜ!」のみ。玉置浩二イズム。安テクノロジーで作られたスーパー戦隊のOP曲のようでもあります。それにしても波多江氏の声、フレディ・マーキュリーのそれとは異なった、ヘナチョコ高音域なんですよね…。これも安っぽさを強調する要因。大好物なので一向に構わないのですが、全体的に2013年の産物とは思えません。②「愛のマニアック」、これもタイトルヤバ過ぎですね~。まずイントロがなんとなくKRAFTWERK「Radio-activity」のパクり。ロボボイスまであります。そこから荒仕事な転調と共に「イェッイェッイェー!」の雄叫びと共に四つ打ちになだれ込みます。電車の中で聴いていてちょっと笑ってしまいました。こっちの曲はギターソロなんかもあって味付けが若干①より格好いいかな?なんて一瞬よぎりますが波多江のヘロヘロボイスで我に帰る、というような感じ。歌詞はマニアックたはちょっとズレて「愛の形に決まりはないさ」という暗にゲイへのリスペクトか?と察せ得るもの。そして気になるリミックス2曲ですが、どちらも①のリミックス。びっくりするのが両者共にボーカルをほぼ排除したインストトランスものになっているという点。原曲の面影は完全に影を潜め、そこそこ低クオリティなものの安牌のような気もするトランステクノです。⑥の(HI-C REMIX)がタブラを抜いたオマール・スレイマンのような気もして面白い…ような…。考えすぎかな。

ブックレットには波多江の半生やアルバムの制作秘話についての寄稿や波多江のステージ上での写真が載っていたりと、波多江ファンには堪らない仕様となっておりますね。

感想は「100円なら全然いい。」に尽きます。以上。


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佳山明生佳山明生のデュエット・スペシャル」(2015)

渋谷レコファンにて100円で入手。渋谷レコファンといえばあとわずか、2020年10月11日をもって閉店してしまうことでディガーから再注目がなされているレコード店です。私もこちらが大好きでちょくちょく利用させていただいているのですが、いざディグをするとなると正直なかなか芳しい成果を挙げられないんですよね…。他のディガーの方々が純邦楽ニューエイジの邂逅盤のようなものだったりイカれた自主製作盤を発掘しているのをTwitterで見ると「私も!」とレコファンに駆け込んでしまいますが、100円コーナーを凝視しても「毒にも薬にもならないアルバム(思えるもの)」しか見つからず…。この時も諦め半分で棚を見つめていました。そんな中で唯一抜けたのが本作。どういうことなんだよ。

1977年にリリースしたムード演歌「氷雨」が5年後の1983年に大ヒットし「ザ・ベストテン」(TBS)にチャートイン。現在は大御所としてひっそりと定期的なシングルリリースを継続している佳山。Wikipediaによると芸名は美輪明宏による命名だそうですがこれ如何に…。そんな彼には元々デュエット曲がちらほら存在していました。本作の①「泣きながら夢を見て(with貴美)」は彼の2番手の代表曲で、何故か美川憲一とのデュエットバージョンもリリースされたことがあります。件の「氷雨」も歌番組なんかではたまに女性歌手とデュエットされますね。そして本作は佳山が、彼と縁深い女性歌手とデュエットした楽曲を集めた企画盤です。

まずジャケが最高…。Twitterでも言及しましたが、ベテランホステスの顔写真をHPから切り貼りして佳山の周りを円環させた結果dangdutのカセットテープのジャケっぽくなってしまった傑作アートワークです。ベテランホステス、いえデュエット相手である女性歌手たちですが、正直誰も存じ上げません。お名前を列挙しますと鮎川ゆき・瀨生ひろ菜・梓夕子・藤みえこ・荒井千津子・おりん・伊藤さくら…し、知らね~。勉強不足で恐縮です。一応調べてみるとアマチュアの方々もちょくちょくいますね。

収録曲を見ますと佳山の持ち歌とムードデュエット歌謡の代表曲が織り混ぜられた様相です。本作の先行シングル②「かけおちスペシャル」はミドルテンポロック歌謡っぽく、サイケデリックなギターサウンドがちょくちょく介入してくるのが良いですね。

 

https://youtu.be/kA0M_dv8knA

佳山明生+瀬生ひろ菜「かけおちスペシャル」

 

③「氷雨」は「スペシャルバージョン」と記載のあるように、佳山と3名の女性歌手の合計4人で歌唱されたよくばり仕様です。この曲、主人公が完全に独りなのであんまりデュエットしてほしくないんですけど…。サビの大合唱には笑ってしまいます。⑥「別れても好きな人」のカバーはデュエット相手の荒井さんのマイクのエコーが強すぎるのと歌声のベテランスナックママ感とで、シルヴィアに全然敵わないなぁという感想です。⑦「新宿そだち」は、一緒に歌っているおりんさんの顔が恐すぎるの一点です。⑧「今夜は離さない」は中々良いですよ。伊藤さくらさんの顔写真は売れないソプラノ歌手のようですが声の艶が楽曲に合ってます。本家の橋幸夫と安倍里葎子バージョンよりもずっしりしたクオリティ2なってます。そして皆さん、吉報です!本作には全曲の女性用カラオケバージョンも収録されていますので、収録曲は全部で16曲と大ボリューム!やったね!

私がたまたま佳山明生が好きだったこともあり個人的には当たり盤ですが、通常の価値観で言いますとしっかりネタ枠だと思います。これがレコファンでの最後のディグにならないように閉店まで足繁く通いたい…。