廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

玉石混淆な収穫まとめ その8

いつもご愛顧有り難うございます。突然ですが今回より、廃サロンの「中級な収穫まとめ」を「玉石混淆な収穫まとめ」に改題いたします。これに伴い、中級盤(主観ですがそこそこ聴ける盤)の上下に位置する作品もここで紹介する方針に変更します。単純に「名盤を発掘しても長文を認めるのが面倒だから」というズボラな理由によるものなんですが…。どちらにせよ中級の頃から結構な名作を紹介したりもしてたので、今後とも何卒宜しくお願い致します…。

さて、2/22,23に東京・渋谷にて、Local Visionsとlightmellowbuによるジョイントイベントである「Yu-koh β」が開催されました。かつて京都にて開催されていて、その際は「いいなー」と指を咥えてTwitterのTLを見るしかなかったのですが、今回は生息エリア(渋谷に住んでる訳ではないですが)で開催してくださるということで当日まで期待に胸を踊らせていました。しかし実物の本イベントはその期待を大きく超え、さながら怪物のようなスケールでした。

私は2日目のCIRCUS開催の方のみに参戦しました(1日目のあの時間帯は何故かシェリー酒を飲んだりとそれはそれで優美な時間でした)。初actで発表時に騒然となったAOTQ氏のライブ(初音ミクシリーズや「e-muzak」のラインにある楽曲にクラブ対応な歪み・エフェクトを現場でかけていく進行が妖艶でした)を始め、念願叶って観れたwai wai music resort(妹さんであるlisa氏の第一声「よろしくお願いします」が、溜めのインストが一瞬スッと退いた瞬間に発せられたのが格好良すぎた…ライブ自体も勿論至高でした)や、下北Threeの無題イベント以来のTsudio Studio氏(森で暮らすさんを含めたバンドセットが豪勢で、しかもサックスマシマシの「Dragon Taxi」までやってくれて昇天しかけた)等の「ここでしかなかなか一堂に会さないタイムテーブル」なライブの応酬が当然ながら最高でした。更にlightmellowbuのトークでは体操の資料集?に付属のCDや、(そういえば)声優兼歌手だったTARAKOのアルバムを聴いたり、台車氏より「2020年はニュージャックスウィング(初耳)が来る!」との大予想が飛び出したりと…。「知らないCDを直で紹介してもらう時間久しぶりだなぁ」と思いつつかぶり付きで聞いていました。その中でも最も嬉しかったのはやはりイベント題通り「Yu-koh=友好」でしたね。anoutaのお二人、柴崎さん、柴田さん、鯔さん等これまでこの手のイベントで何度か邂逅を果たしている賢人たる方々と久々にお会いしたり、来場前にディグっておいたCDを見せ合ったりできて、音楽に関して「直」でコミュニケーションをとることの気持ちよさを本当に久々に経験しました…(「元アーティストに付く「エッセイスト」の肩書きは鵜呑みにするな」の至言、しかと胸に刻みました)。更に、tamao ninomiyaさん(相互フォローなの気づいてなかった…)や台車さん、はらわたちゅん子さん(前日に吉原・カストリ書房にて開催されていた展示を見に行った時に初めてお会いしてYu-kohでもお話できた)等、SNSでは既知なものの初めて直接お話できた方もちらほら。その他にも一方的に見知った顔ぶれのアーティストやトラックメイカー等の方々が普通に散見され、ちょっと意味合いに語弊ありそうですが良い意味で「業界のパーティー」という印象もありました。時間はあっという間に過ぎてしまいましたがその流れ行く時間はこれ以上なく上質で、主宰の捨てアカさんをはじめ今回のYu-kohに関わった全ての方々に感謝の気持ちで満たされました(私はいち客でしかないですが…)。と同時に「廃サロン頑張らねば」という気概も高まりました。今回も何名かの方々に「「廃サロンで手に取るCD」というブログをやっているながいという者です」と自己紹介しましたが、いつか「あーー、読んでますよ!」みたいな反応があると気持ちいいんだろうなぁなどと思ったり…。動機が余りにも不純ですが、ともかく糞みたいな境遇にあるCDたちをサルベージしていく行為が色んな意味で実る時が来ればいいなと切に願いますね、密やかなlightmellowbuフォロワーとして…。

Yu-kohの余韻に拘泥してしまう今日この頃ですが、中級レビュー改め玉石混淆レビュー始めていきます。


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ポチ!「お気に召すまま」(1992)

渋谷レコファンにて650円で購入。Yu-kohに着く二時間前に入手しました。いきなりちょっと高いですが前々から実店舗で引き当てたいと願っていた盤だったので歓喜しました。

名から判然としていますが、以前VHSをご紹介したビーイングのアイドルユニット「Mi-ke」の二番煎じユニット(あっちがミケならこっちはポチじゃい!という意地でしょう。そういえば美川憲一が名付け親の「タマ」ってのもいたような記憶が…)。高橋摩弥、石塚早織、山下智美という3名のモデルにより結成されました。1stシングルはザ・ピーナッツのカバー「恋のフーガ」で、本作のラストに収録されています。

まずジャケですが、バブリー好事家のツボをビンビンに刺激する良衣装に身を包む3人。左の二人の雑貨屋で売れ残った絨毯然とした衣装はともかく、右の山下の溶けた超合金のような服は何だ?あくまで褒め言葉ですが「気味が悪い」。ブックレットの中では3名とも肩パッドの入ったスーツを纏っているのですが、正直ジャケの衣装の方がインパクトはありますね。ブックレットといえば、この手の作品にありがちな3人のプロフィールも添えられています。それによると高橋はマドンナ、石塚はドリカム、山下はチャゲアス(特にASKA)のファンだそうですが、本作には一切関係ございません。良かった。

で肝心の内容ですが、これ名盤です。名盤だと思ってなかったので尚名盤味が増して聴けました。中庸なガールズポップのようなものを予想してましたがちゃんとハードめなディスコアレンジしてますね。Mi-keの面影を感じつつも同期のセクシーアイドルの楽曲(以前ご紹介したギリギリガールズ等)に見受けられるエッセンスもひしひしと感じられます。何より全体的にBPMが高めなのがいいですねー。雑なハウス歌謡もほとんど皆無ですし。頭の中空っぽでノリノリになれる作品です。1「恋はFiftyFifty」がいきなり凄い。1分にも及ぶ「ハウスデジロックミーツチョップド&スクリュー」(そんなもの存在しません)なイントロは圧巻。しかしながら全体を覆うどこか歌謡チックな進行は流石Mi-ke路線、と匂わせるものがあります。イントロが長いと言えば、ハイスピードダサダサディスコ歌謡な3「危険でごめんあそばせ」もやはり約1分のイントロから始まります。こちらはズンチャズンチャという年寄り臭いリフにギターのフィードバックノイズやジャスコテックなファンファーレ的シンセ音が絡む謎イントロ。感想にも「Dancing Queen」の世界一有名なフレーズや「パイプライン」のテケテケが引用されており、加えて「天まで届く梯子を持ってる男なんていないよね」「お金の成る木を持ってる男なんていないよね」等の「?」な歌詞の応酬。到底「格好いい音楽」からは縁遠いパーツで構成されていますが、あくまでベースが「ディスコ歌謡」なので今聴く分にはこの狙いっぷりが清々しくて何度もリピートしてしまいます。そんなの私くらいのものでしょうが…。4「Eternal Eyes」は本作唯一のスローに聴かせるタイプの楽曲。本作を紹介しているガールズポップもののブログの筆者はこの曲を絶賛していますが、確かにガールズポップの観点で言えばこの4が「唯一聴ける曲」になりそうなもの。他の楽曲がほぼ3名のユニゾンで歌唱されているのとは異なり、本曲は石塚のみで歌われています。彼女は3人の中で唯一ソロデビューしたみたいですね。歌は普通に上手いので聴き入ってしまうのですが、廃サロン的には聴き流してしまうタイプの楽曲。「「バカディスコ歌謡」のアルバムなんだから別に無くてもいいなぁ」と罰当たりなことすら思います。緩急付けるためには必要なんでしょうけどね。ずっと前に何故か聴いた「涼宮ハルヒの憂鬱」のキャラソンシングルのB面で、声優の小野大輔が歌う「ただの秘密」に似ているなぁくらいの感想でした…。(↓で「知らねぇ曲」と「知らねぇ曲」を比較してください)

https://youtu.be/GHC1s2S3ul8

https://youtu.be/TthwZJfwtL0

 

本作を「名盤」と申し上げましたが、ここら辺から早くもダレてくるのも事実。5「Like a Venus」は若干ハウス寄りでC.C.ガールズみたいですし(廃サロンで何度かC.C.ガールズを肯定的に取り上げましたが、なんだかんだ基本C.C.ガールズの曲は良くないです)、6「Sugar Moonが消えるまで」はTRFというティーバッグを三杯分くらい使った後の出涸らしのような印象(爽やかでそこそこ良いですけどね)。8「黄色いRentACar」はやたら音圧の強いハウス歌謡ですがスラップベースが主張し過ぎてて笑ってしまいます。そして大トリである「恋のフーガ」のカバーですが、プログレディスコティック!とちょけたくなる程の高速変調ぶりがキモチワルくてアガります。間奏のどこかで「恋のバカンス」のフレーズが引用されている、とブックレットに記載がありましたがイマイチ分からず…。原曲の戦後歌謡独特のクールネスのネジを少しずつ緩める代わりに高品位なジャンク性が高まっているような、要するにこれまたおバカな魅力溢れる可愛らしいカバー作品でした。1~3曲目のハードな音色が再起されていて一安心。

本作を聴いていると、結局大半をオールデイズ歌謡のカバーに徹したMi-ke織田哲郎その他ビーイングの懸命具合を感じてしまいます。この手のOLノリでオリジナルばっかりは普通に聴くにはキツいや。とはいえ賢くないディスコ歌謡は大好物なので総体的には満足です。2ndが大田区の図書館にあるようで、近々借りに行きます。


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Dream Dolphin「FORCE SOUNDS AND PSYCHEDELIC BEATS:愛の彼方へ」(2000)

三軒茶屋ブックオフにて510円で購入しました。「イルカジャケ=Vaporwave」というイメージの強い昨今なので、90年代にイルカがニューエイジやスピリチュアルのアイコンだったことを忘れそうになりますが、こちらはニューエイジな音ではありません。ずばりトランス・ユーロビート系。Dream Dolphinは女性アーティストNorikoを中心とした日本のハードコアテクノユニットで、具体的には「ハイスピード& アンビエント&ハードコア」を標榜しています。このNoriko、初期は渋谷系チックなスタイルでジャケやブックレットに写真で登場しつつハードコアトランスものを次々に制作していたのですが、数作後にはスピリチュアルに傾倒し始め、制作する楽曲も次第にトランスよりもアンビエントの割合が増えるようになります。アンビエントに関してはあのSUGIZOとのコラボもあり、ネットにも情報が多いことから「界隈」ではそこそこ有名なアーティストなのかもしれません。

そしてこちらは彼女の活動後期に発表された(ほぼ)最後の全編ハードコアトランスなアルバム。2000年前後といえば日本の音楽界でこの手の哀愁トランスが入り乱れていた頃で、駄作も山ほどありましたよね。ですが本作ははっきり言って滅茶苦茶アガります。個人的にゴリゴリなトランスやユーロビートに目がないという理由もありますが、こちらは音数の多さやもったいぶらなさ、パキり(と言うのでしょうか?)具合がとにかく振り切っていて最高。BPMが180近い楽曲もあり、正直これで躍るのは難しいでしょう。かといって頭文字D的な疾走感あるトランスともまた違うような…。まさしく「スピり故のハードコアトランス」としか表現しようのないアルバムです…。特に2「BABE RAINBOW Ⅱ COSMIC MOTHER」がエクスタシーに導いてくれる度合いでは最高です。もしテクノアイドルをプロデュースすることになったらこれを出囃子にしたい…。

Dream Dolphin、調子こいて幾つも作品を集め始めるとキリがないですし(アルバムだけで20枚くらいあります…)全体的には中庸なのでドはまりするのは危険ですが、ネタと本気の間のノリで見かけたら購入してみてはいかがでしょうか。ライト層のVaporwaveオタクたちを騙して高く売り付けるような奴らが現れる前に…。

YouTubeにまともな動画はありませんでしたが、Dream Dolphinのテクノ寄りの楽曲を纏めた動画(↓)がニコニコにありましたのでご参考までに…。

【作業用BGM】Dream Dolphin 好きな曲をまとめてみた -その2- http://nico.ms/sm4531933?cp_webto=share_others_androidapp


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Lio「LIO」(1980)

目黒区図書館にてレンタル。フレンチポップやワールド・テクノ歌謡が「分かる」方には今更?な盤かも知れないのですが、恥ずかしながらこれまでLioの存在すら存じ上げませんでした。「得意じゃないけど久々にフレンチポップものでも聴こうかな…」と図書館サイトで検索をかけた所本作が「フレンチテクノ」なる用語と共に紹介されており、YouTubeで彼女の代表曲「Le Banana Split」のPVを視聴したところ、加納エミリ「ごめんね」のPVの元ネタか…?となるほどローファイな映像で音もモロにあの頃のテクノポップ!これは聴かねばとレンタルしたのでした。

https://youtu.be/bsqLi9LfiwM

https://youtu.be/20DJlV2YstI

Lio、フレンチアイドルの肩書きを持ちますが実際はポルトガル生まれベルギー育ち。テクノポッパー、というかシンセポッパーの大御所バンドTELEXのプロデュースで↑のようなテクノ娘としてデビューします。1stである本作以後、テクノ路線は影を潜め、純にフレンチアイドルとして活動することになるのですが…。

全体的にペラペラのポコポコなサウンドが魅力な本作。何故これまで聴いてこなかったのか…とテクノポップから音楽を本格的に聴くようになった者からすると悔やまれますが「いつまでも聴いていたいか」と問われるとそうでもなく…。チープで湿気ひとつない軽やかなポップさ故の飽きは拭えません。ある意味完成され過ぎている。日本で言うと最初期の中嶋美智代のような…?いずれにせよ「癒し」であることに遜色ありません。

やはりリードチューン「Le Banana Split」が本作をどっしりと支えているのでしょう。もしYMO畑中葉子をプロデュースしていたらこうなったでしょうか…?そんな安直な妄想をしつつ、フーミンと彼女への豪華楽曲提供陣の関係性から生まれた作品たちにも近いものを感じたり。しかしフレンチポップである、という気概からしかこのような楽曲は生まれ得ないのでしょうね。フレンチポップや渋谷系の「らしさ」というものにしっくり来ないまま随分経ちますが、逆にオタク特有の「テクノポップ」の呪縛から解き放たれる日は来るのでしょうか。俗と洒脱の間で揺れ動くもの悲しさ、そんなことを本作を聴きながら考えています…。


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「肩こりスッキリ」(1996)

駒澤のブックオフにて290円で購入。ニューエイジレーベルとしてお馴染みDellaによるリリースものです。肩凝り、現代病(いつから?)の王様として万人を苦悩させていますが、本作を聴けば心身がリラックスして肩こりも治っちゃう!とのこと。やだー、そんな魔法みたいなことって…結果ありませんでした。なーんだ役立たずじゃん、と廃サロンから出て行かないでくださいね…。

本作、「Music of Esthetics」というシリーズの中の1枚で、他にも「素肌美人」「おふろ美人」「便秘すっきり」が存在し、それぞれ本作のようなフリー素材の女性がリラックスしている写真がジャケに使用されています。本作と「おふろ美人」はなかなかサービスショット的で、エマニエル夫人を彷彿とさせますがそんなことはどうでもいいです。

音の方は声を大にして「そこそこ良いですね!!!」と述べておきます。真偽の程はちょっと微妙なのですが、どうやら界隈で「ジャケは知ってるDellaニューエイジ」として有名な「強い精神力を養う」を制作したアーティスト(?)Mitsuhiro氏が手掛けたアルバムのようで、それにも近い中庸(褒め言葉)なピアノ・シンセによるヒーリングをもたらしてくださいます。
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モブキャラと化したロボコップ四人囃子「NEO-N」のアートワークの世界で全力疾走しているね。私も持ってます。

 

強いて言うなれば「強い~」よりもメリハリがなく、眠気をちょうどよく誘発してくれる音作り・構成になっているように感じます。あぁやった…、また通勤時に眠るための音源ゲットだ…などと油断してウトウトしていると5「Light Music」の「ファファファーーン!」というラッパみたいなそこそこ耳障りな音に眠りを遮られます。ここが惜しいかな…。別に起こすところまでやってくれなくてもいいのに…。そこを加味してもまぁまぁ、Dellaらしい真面目で嫌らしいところのない俗流アンビエント作品として重宝しますね。

監修の馬野詠子先生の当時の近影がブックレットに載ってます。ニューエイジものの監修者を見ていつも思うのですが、単純に音楽に関係ない世界で活動してる方が(ヒーリングものとは言え)アルバムに口出しするのって結構難しいんじゃないの?と馬野先生のグイグイ来そうな(失礼)写真を見て思います。

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馬野先生…

Yu-kohに関する前置きとポチ!についてのレビューが長くなってしまったので今回も4枚という少なさで終了します…。紹介していない名盤をまだまだ確保しているのでまた近いうちに…。