廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

中級な収穫まとめ その3

こんにちは、廃サロン恒例となりつつある寄せ集めコーナーの始まりです。

先日元ハロー!プロジェクト所属の加護亜依辻希美によるユニット「W(ダブルユー)」の13年ぶりのTV歌唱がありましたね。私もそれ目当てでテレビ東京の「テレ東音楽祭2019」という番組を視聴していました。この手の番組ってほとんど「現代の音楽産業で目に見えて稼ぎ頭となっているアーティストの生ライブ」と「昔の歌手の懐かし映像」で構成されてるじゃないですか。で、この番組における後者が平成の歌手・アーティストだけだったんですよ。令和になったんだなぁって感じですね。こういう番組でミポリンの「派手!」なんて流れなかったですよ、ついこの前まで。この件で特にもの申す事がある訳でもないんですが、ともかくこれからは「名曲番組」でジュリーの姿をお目にかかることもなくなるんですね~ってくらいです。

 

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midori takahashi「プラス思考」(1993)

ディスクユニオン新宿店にて380円で入手。その以前にも吉祥寺のブックオフで発見していたんですが500円だったので躊躇して購入を断念してしまっていたので正に邂逅。レーベルは柴崎氏曰く「俗流アンビエント界のブルーノート」な「Della」です。遭遇頻度が割と高い(はず)ので見かけたことのある方やお持ちの方もある程度いらっしゃるかもですが、いや~名盤ですよこれ。マジで毎朝聴いてます。

まずジャケが堪らないですね。プラス思考のイメージとして途方もない階段を登るメタルピクトグラムくん。CG創成期感がビンビンで「狙ってるのか?」と思ってしまうほど。こんなアートワークで「プラス思考」だとさぞかしハードビートなフュージョン寄りのインスト集だと察してしまいますが実際は美メロなピアノ&シンセのアンビエント集。なんと言いますか、この手のアルバムにしては十分に「作品」として成立しているんですよね。長尺(全5曲ですが各曲9分程度です)の「Energy Flow」ばりな「上手」なクオリティのインストが気持ちよく作用し、流し聴いていると心地よい眠気が…。おなじみの「聴き取れない程度のサブリミナルメッセージ」も四か国語で隠されているようです。音色が押し付けがましい「プラス思考」でなく、険しい現状を肯定し抱き止めてくれるかのような、そんな優しい世界観に包まれています。と言ってもある種の俗っぽさは確実に潜んでいて、商業的作品という前提をもって聴くとそれはそれで合点がいく展開ですね。しかしこのような「高尚な雰囲気を匂わせておきながら確実に「音楽作品」としては(恐らく)落第」という作品は最高です。第1回でご紹介した「サロンミュージック」と非常に近しい作風に感じられますが、あちらが多様な色味の楽曲で構成されていたのに対しこちらは全曲テンションが一定です。プラス思考のくせに泣き曲ばかりというか、アンニュイを超越し慕情ですらあります。

俗流アンビエントを掘ろうとしてブックオフイージーリスニング棚をじっと見つめてても「波の音をバックに…」とか「クラシックの名曲の中から効用に合わせて選曲し…」みたいな「温泉かよ」と言ってしまうようなアルバムが殆どなのが現実。ですがこのようなアルバムに出会えると勇気づけられます。私にとっては「作品の効用」より「作品の発見」によってプラス思考がもたらされたような気がします…笑


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ゲンスブール・トリビュート′95~ゲンスブールに捧げる俺の女達~」(1995)

大田区の図書館にて入手。なんですかねこのヒエログリフ調のジャケは。ヌーヴェルヴァーグの教祖として名高いセルジュ・ゲンスブールが手掛けた楽曲を、サエキけんぞう小山田圭吾小西康陽あがた森魚など錚々たる面子のプロデュースにより、細川ふみえカヒミ・カリィ夏木マリなどの歌手・俳優に歌唱してもらう、という企画ものコンピ。この手のアーティストトリビュートアルバムってあんまり好みでなく、本作に関しても全体を通して聴いたことは正直未だにありません。では何故ご紹介するのかというと、細川ふみえが歌う「恋するシャンソン人形」が余りにも最高すぎるからです…。

フーミン、90年代を代表するグラビアアイドルとして余りにも有名ですが、歌手活動も至高なまでにクオリティが高いです。オリジナル楽曲はことごとく「何故?」と疑問視してしまうほど大御所が担当しており、デビュー曲「スキスキスー」は小西康陽福富幸宏コンビ。2nd「にこにこにゃんにゃん」と3rd「だっこしてチョ」の作曲は石野卓球(3rdは作詞もピエール瀧!)。そしてラストシングルとなった「ポチに八つ当り」は大槻ケンヂ作詞でございます。ナゴム界隈を中心とした、いずれも佳作なアイドルテクノ歌謡ですのでそちらも是非。そのいずれでも聴くことのできるのがフーミンの鼻にかかったどこかタリナイ感じのする浮遊ボイス。しかし音痴という訳でもなく、ウィスパーする瞬間などはフーミンにしか出せない独自のセクシーを醸し出していてハマってしまう。アイドルポップとして正しく機能的というか、軽やかなバブリーを堪能できます。

そして本作はそんな細川ふみえのアイドルとしての活動が一段落した頃のカバー。イントロは「ラジャラジャマラハジャー」と聴き違うようなシタール音が響き、直後にシャンソン人形お馴染みのフレーズが切迫したシンセ音で再現されます。原曲のフランスギャルverはなかなか張り上げた歌唱法ですが、こちらは全編前述のウィスパーボイスで貫徹。フランス歌謡曲としての原曲を更にソフィスティケイトさせた優雅で重厚感のあるテクノポップで、カバーとしては無視できないほどのクオリティ。「あえてダサく」としてのアーティストイメージで統一されていた頃のフーミンだけを知った後に聴くとちょっと驚いてしまいますね。極めつけはアウトロ。伴奏がフェードアウトしていく中で、演出なのか照れからなのか微かにフーミンの「フフッ…」という笑い声が聴こえます。これがなんとも「カバー曲」の中で意味深に作用し「してやったり」なのか?などと考えてしまいます。

細川ふみえ、最近だとガキ使や波乱爆笑に出演し貴重映像を生産しているみたいなのですがどちらも見逃してしまったんですよね…。こういうカバー曲なんかを聴いていると願わくばセルフカバーもしくはまさかのバンド結成なんかを「夢見て」しまうんですが…。彼女も結構苦労されているようなのでそっとしておきましょうか…https://youtu.be/poMpAExmeU8

細川ふみえ「恋するシャンソン人形」


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Risky「My life is…」(1999)

メルカリにて500円で入手。廃サロンで取り上げるには多少名の通りすぎたCDなのかもしれません。こちらは1989年にアイドルとしてデビューし、現在ではその過去を感じさせないほどにTheタレントとしてオールマイティーな活躍を魅せる島崎和歌子が発表したシングルです。本作は島田紳助がバリバリ出演していた頃のTBS系列「オールスター感謝祭'99春」内の「放送中に島崎和歌子のシングルを50,000枚完成させる」という企画で誕生しました。放送内で島崎和歌子に企画が伝えられ、困惑の中楽曲発表・レコーディング(エイベックスへの移動中にデモを聴き覚えたようです)・ジャケット撮影等々が進められました(どこまで本当なのかは定かでありませんが)。島崎の本作での名義も番組内のお馴染みの方式(スイッチオン!)によって多数決で決定。それが「Risky」だったという訳です。
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うん、どちらか選べと言われたなら「Risky」ですわね。そんなこんなで企画開始から4時間28分、遂に「My life is…」は完成したのでした。ギネスにも載ったそうですがどんな部門なんだよ。

作詞:秋元康に作曲:織田哲郎というテレビっぽいゴテゴテなキャスティングですが、案の定ビーイングっぽい磐石ガールズポップ作品となっております。島崎和歌子の声ってなんというか、あまりに上手すぎるんですよね。ビジュアルに伴うが如くな、悪く言ってしまえば限りなく凡庸。正統派アイドル氷河期かつバラドル黎明期な90年代にさえデビューしなければ、かつての所属事務所社長が彼女に言ったように「第二の山口百恵」クラスの歌手になれたと信じて止みません、私は。

歌詞を聴き流していると「またアキモトの片手間リリックか」となってしまいそうですが実際そんなこともなく。特にかつての秋元のひねくれは炸裂していませんが、島崎に「愛に囲まれて生きてきたけど独りで歩き出すよ、慰めはいらないよ」といった歌詞を歌わせるのは犯罪的というか、本人もそこまで短絡的な思い詰め方をして生きているとは思えないんですが。サビの「人混みの中じゃ足跡もないよ 生きている証拠がないね」の部分はあまりに澄んでいて・実直すぎて、なんとも鼻血が出そうです…。最高なシングルなのですが、なにしろビーイングぽい曲なのでどうも女の子と恋愛する類いのゲームのテーマソングにも聴こえますね。

和歌子さん、マジで大好きなのでこれからも応援してます。あわよくば全曲集+DVD付きのBOXを再販してください。f:id:rikimikiri:20190625221438j:image

 

https://youtu.be/7QCX-jRV0kE

Risky「My life is…」(うたばん)

このうたばんの映像が一部始終が分かって素晴らしいです。うたばんの空気感って今思えば最高ですよね…。もう一歩なCGの使われ方とか、嵐の大野くんが中居とバトる感じとか…。歌唱用のスタジオが殺風景と神聖さの狭間を行っていて不思議。

島崎和歌子の楽曲、実は既にちょこちょこ収集し始めているので本寄せ集めコラムの恒例行事にしようと思います。第2弾をお楽しみに。


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「Sound LSD SUBLIMINAL SEX XTASY」

蒲田の500円DVD屋さん(レンタル落ちとか売ってるアレです)のワゴンで100円で入手。始めに申しておきますがいやーこれは酷かったです。完全にジャケのデジタル黎明期のヤンチャ具合に惹かれて買ってしまったのですが…。何しろコンセプトが「セックス時のエクスタシーをCDを聴くだけで感じられる」ですから。中身は女性の喘ぎ声のサンプリング音源がハウス風地味ーテクノに被さっている曲が複数のパターン収録されているだけです。それ以上でもそれ以下でもなく、聴き流そうと決め込んだら一瞬もディープリスニングする部分がないというお粗末さ。おまけにアーティスト名が「ヘンリー川原」とかいう監督ぽさ満載な駄名(幽体離脱のCDもリリースしているようです)。

皆さんは例えレコード屋の片隅で見かけても(インテリアという目的が無ければ)決して買わないでください。あっけないですが以上。

 

番外編に相当するコーナーばかりで恐縮です。懲りずに今度は私の好きなダサダサPVを紹介するコラムなんかを書こうと画策してますが誰が期待してくださるんでしょうか。では若干短いですが今回はこんなところで。