廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

別館 電影魔窟で拾い上げるVHS②

毎度ご無沙汰しております。最近それほどCDディグをせずにVHSや古雑誌ディグの方にかまけているので、前回に引き続きVHSの紹介をすることに致しました。


f:id:rikimikiri:20190916183552j:image
f:id:rikimikiri:20190916183602j:image
中原めいこMEIKO TV』(1985)

こいつは希少盤ですよ!80年代にラテンとエスノポップだけを武器に歌謡界を邁進、森雪之条との共作「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね」を残し、90年代前期に姿を消して以来伝説と化している中原めいこ。その(ほぼ唯一市販されていた)映像作品です。中原めいこの映像はYouTubeなどにも当時のTV番組やライブ映像等多数上がっていますが、本作については断片的にもほぼ上がっていません。メルカリで6000円と高価でしたが迷った挙げ句購入。「MTV」をもじって『MEIKO TV』だそうです。

本作は「PV」「撮り下ろしのスタジオライブ」「ミニコーナー」の3要素によって構成されております。収録楽曲はジャケからも分かるように「CHAKI CHAKI CLUB」からのもの多し。中原の黄金期と言っていい頃でしょう。ジャケの正しいキッチュ感が好きなんですよね。

PVについては、まず本作のいの一番に前述の「君たち―」が流れます。こちらだけは各種映像サイトで視聴可能ですね。TVでの歌唱時の「め組」の世界観に近いような。作りは歌詞をなぞっただけの陳腐なものですが、だからこそのチープゴージャス。メンソールのタバコをバスケットいっぱいに抱えてはしゃいでるシーンが大好きです。

https://youtu.be/BF7VDSzKBfc

中原めいこ「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね」

 

 他にも「Cloudyな午後」の「昭和の大衆が思い描く「美大」感」溢れるPVや「ホットラインは内線424」の丸の内オフィスを教育ママメガネをかけて闊歩しつつ途中でBasta Pastaのメニュー紹介が挟まっちゃうという素敵なPV等は必見です。そして本作の目玉でもある「やきもちやきルンバ♥️ボーイ」のPVですが、これが素晴らしい。まさに「CHAKI CHAKI CLUB」のジャケ写を映像化した内容で、ピンクのバスルームでくつろぎはしゃぐ中原、そこにディスプレイが幾つも設置されサイケ色な映像が流れ、周りでは原色しちゃってる熱帯魚が泳ぐ…。恥ずかしくなってしまうくらいA e s t h e t i cで、この悦楽にだけでも6000円払う価値アリです。

スタジオライブも良きです。「恋の秘訣」「ルナルナ・TIKITIKI」「FANTASY」等の代表作・寡作を堪能できます。↓「FANTASY」については(字幕が邪魔ですが…)一応ありました、YouTubeに。エセ一風堂なBackbandがイカしてます。あと中原はこの頃のヘアースタイルが一番可愛いですね、最後期のロングソバージュもイイですがこっちの方が似合ってる。

https://youtu.be/3EElU3TpKCs

中原めいこ「FANTASY」


f:id:rikimikiri:20190916192223j:image

最後にオマケのミニコーナーのご紹介を。まず、オフィスレディーの一週間の着こなしを中原自ら着用しナレーション(は別人なんですよね~)と共に紹介する「めいこのワンポイントレッスン」(「めいこ」となってるのが可愛い)。オフィスの回転扉を通過する中原を見下ろすかたちで撮影しているので大変見辛いですがご愛敬。次に当時の流行りのカフェバーをひたすらスライドショーで紹介する「東京カフェバー図鑑」。購入前、このコーナーを中原自らがカフェバーを訪れてリポートなんぞするのだと勘違いしていたので実際視聴してガッカリしてしまいました。当時のカフェバーの雰囲気を見るのには良いんですが肩透かし…。最後に、こちらが最も謎な「田村哲也 MOD'S HAIR 徹底取材」。こちらにも中原は登場せず、タイトル通り有名美容室であるMOD'S HAIRの田村哲也が「パリの女の子は良いですよ…」とかなんとか言ってるだけの映像です。いや、なんで?

 

45分程度と若干ボリューム不足ではありますが内容にはおおむね満足。中原めいこのチープゴージャスな世界観を冗長感なく楽しめる良作だと思います。これ自体をDVD化希望!とは言いませんが、何かの折りに中原の音楽番組出演時の映像を纏めたBOXとか出たらいいですね…。↓とかがコメント内容込みで大好きなので…。

https://youtu.be/voFdEydpldw

中原めいこ「ロ・ロ・ロ・ロシアンルーレット


f:id:rikimikiri:20190929094601j:imagef:id:rikimikiri:20190929094610j:image
『コンピューター・グラフィクス・コレクション3』(1990)

中野ブロードウェイ内のまんだらけUFOにて300円で購入。みんな大好きCG創成期のイナタいアニメーションの短編が45分に詰まった作品集です。

VHSで観れるこの時期のゴテゴテCGアニメーションといえば「The Mind's Eye」シリーズが有名(?)ですが、そちらはYouTubeで観れるもののVHSを入手するとなると1万近くの値が付いていて、なかなかに夢のアイテムと化しております。ちなみにそちらはDVD化したものがドラッグミュージックの通販サイトでも販売されていることからも分かるように、病気の時に見る夢のような内容で最高です。ウゴウゴの巨人お姉さんのOPが生易しく思えるような。しかし部分的にはVapor感覚に直結しているシーンも多々あり、(Vaporwaveとは無関係ですが)BAVYMAISONという日本のバンド(昨年解散)がPVの素材として引用しています。

https://youtu.be/b5zMtCvWhG0

「Beyond The Mind's Eye」

https://youtu.be/gpjt_XdjTX8

BAVYMAISON「不倫」

 

このような作品集の存在を知っていただけにUFOで件のVHSを発見したときの期待感は…お察しください。しかも二本同じものが並んでいて、どちらも300円だったので思わず両方レジへと運びそうになってしまいましたが、なんとか理性を取り戻して一本購入。

で、肝心の内容はと言いますと正直The Mind's Eyeには敵わないような内容でした。どちらかというとピクサーが以前出した初期短編CGアニメ集のDVDからストーリー性を拝したような。あんまりグロくなくて残念でしたね。でも幾つかは観るべきポイントがありまして、モロにビリー・ホリデイがモデルの黒人CGオネーサンがクネクネしながらディスコソングを歌う小狂気気分な作品だったり、こちらもみんな大好きエドワードホッパーの代表作『Nighthawks』をモチーフに卓上の調味料入れが踊り出す軽く無粋な作品だったり、全体的にアメリカナイズ(出所がそっちなんだから当然なんですけど)された超短編をテンポよく観ることができます。BGVとしては最高なんじゃないでしょーか。でもなんだか物足りなくて、結局YouTubeで「TV's TV」とかをシャッフル再生で観ちゃうんですよね…。

https://youtu.be/f4BOPwQxgjI

「TV's TV」

ダサいCGアニメを観るとアキバや中野じゃなくて上野に行きたくなるのは私だけですか?


f:id:rikimikiri:20190929102134j:imagef:id:rikimikiri:20190929102152j:image
Mi-Ke『白い2白いサンゴ礁 ブルーライト・ヨコスカ』(1991)

『白い白い、白いサンゴ礁』と読みます。1991年、B.Bクイーンズのバックコーラスグループとしてデビューし直後に独立したアイドルグループとしても活動を始めたMi-Ke(ミケ)のPV集でございます。蒲田のレコード屋にて1000円で入手。相場よりも高めでしたがなかなか遭遇しないブツなので思いきって買ってしまいました。ほぼ全シングルのPVを集めたDVDも出てますが、そちらもプレミア付きですし「Mi-KeあたりはVHSで見んと!」という謎の拘りもありますし…。

B.Bクイーンズと同じく彼女らは織田哲郎プロデュースのビーイングアイドル。楽曲の殆どはカバーで、といってもWinkとは別路線でして、主に戦後の昭和歌謡や日本でヒットした洋楽ジャンルを振り替えるようなコンセプトアイドル。アルバムは毎回ガチガチにコンセプトが固められており、順に「グループサウンズ」「60年代女性歌謡ポップス」「フォーク」「サーフソング」「ロックンロール(というかロカビリーか?)」「60年代アメリカン・ヒット・パレード」「リバプールサウンド(主にビートルズ)」というコンセプトで纏められておりました。その都度シングル用に制作されたカバーでないオリジナル楽曲は各一曲ずつ。コンセプトで固めるのはパロディするためでなく、あくまで当時を生きたオジサマ共の涙を誘い乱舞させるため。いわゆるアイドル像とは別のアプローチで媚び媚びな集団でありました。ご推察の通り、当時掠めていた60'sブームも相まって割と人気があった、ようです。1stでは当時のGSの大御所とコラボしたり(かまやつとか、その辺)、そもそもハウスまみれなアレンジカバーを許容された彼女らが受けた恩恵とか、現代の歌手がするカバーとはちょっと趣が異なるような気がします。(織田を含めた)Mi-Keというコンセプチュアルアート集団による「古き良き昭和」を小馬鹿にしながらも朗らかに世間へ再提示する態度、加護ちゃん辻ちゃんダブルユーの1stにも通じるところがあるような(ビチビチ跳ね返る「淋しい熱帯魚」…)。歌によるコスプレというものは、パロディではなくゴリゴリのアンチテーゼにも成りうるのだ、ということを考えてしまいます。そういう所も含めて私は彼女らが大好きです。

話をVHSに移しましょう。本作には「白い2白いサンゴ礁」「BLUE MOONのように」「ブルーライト ヨコスカ」の3曲分のPVが収録されております。監督を務めたのはあの岩井俊二氏。正直私、彼の作品は全く観たことないのでコメントしようがないのですが、予想外なマジカルバナナの成立という感想です。映像自体も「ヨコスカ」以外は何ともフツーですし。「サンゴ礁」ではMi-Keの3人が江ノ電に乗って江ノ島周辺を回るだけ、ですが宇徳たちが江ノ電内でマーブルチョコやポッキーなんかを食べてるシーンは単純に微笑ましくてありがとうございますという気持ちにさせられます。どちらかというと「サンゴ礁」は楽曲自体にコメントを入れておく方が正しいような気がします。本曲の歌詞はプロテストから卒業した、つまり吉田拓郎以降のフォークソングのタイトルからの引用によって成り立っており、その強引さに笑ってしまいます。「結婚するって本当ですか」とかそのまま使うなよ、サンゴ礁なごり雪を同居させてどうすんのよ、等々楽しい歌詞ですね。

https://youtu.be/nrLruKmpehs

Mi-Ke「白い2白いサンゴ礁

 

「BLUE MOONのように」はオリジナルアルバム未収録のレア曲(一部ベストには収録)で、7割くらいの力でビーイングしてるアレンジです。Mi-Keのギリギリな学生服姿が拝めます。月など一切出てこないひたすら夕方な謎PVでもあります。どうなんですかね、こういう映像観て「いや、岩井のエッセンス割と出てるよ!」ってその道を知ってる人は感じられるもんなんでしょうか。

https://youtu.be/JSSLraj66UA

Mi-Ke「BLUE MOONのように」

 

そんな中「ブルーライトヨコスカ」はMi-Keに興味のない方にも一見の価値アリな良PVに仕上がってます。カラオケビデオの体裁をとっておりサビ時には歌詞が流れてくる点、まだカラオケと言えば「カラオケボックス」よりも「カラオケパブ・スナック」だった頃を彷彿させるギラギラな電飾まみれなセット、小芝居に次ぐ小芝居、思わずこちらまで踊り出したくなるような振り付け…。全てがカワイイ。茶目っ気で成り立ったPVとなっております。全てにありがとう、ありがとう…。本VHSにはこの楽曲だけカラオケバージョンが収録されてます。家で歌えってか。

VHSがなくとも、現在でもカラオケで本曲を歌うと一部の機種ではこのPVを観ることができます。多少なりともレトロ趣味のあるご友人とカラオケに行った際にはチャレンジしてみるのも良いんじゃないでしょうか。一番の出だしでいきなりカーセックスについて歌われている曲なので強くはオススメしませんが…。

何故か本曲のみYouTubeでなくデイリーモーションに映像が上がっていたのでそちらを。

https://dai.ly/x5y2ms

Mi-Keブルーライトヨコスカ

 

最後に。本稿に取りかかっている最中に我が家のビデオデッキが寿命を迎えました。渋谷TSUTAYAでレンタルした「ふ・た・り・ぼ・っ・ち」を観ようとしたところVHSを飲み込んだまま自動で電源オフ。その後何度電源を付けても即座に自動シャットダウン。「終わった…」と思いましたね。VHSを取り出す手段は生きてたのでレンタル品は無事でしたが視聴昨日はオジャン。まだ観てないビデオが20本くらいあるのに…てか今現在も注文してこれから届くビデオが何本もあるというのに…。メルカリでビデオデッキを買うことも考えましたが、それよりいっそのこと前々から欲しかった小型のテレビデオを買ってしまいました。当時車載用として用いられていたという6インチのものです。今後はそちらをビデオライフのお供として愛玩していきたいと思います。VHSギークマン(俺か)に幸あれ…!

f:id:rikimikiri:20190929112503j:image