廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

中級な収穫まとめ その7+目黒区図書館サイトディグについて

廃サロン的ディグではネットを利用してディグる機会が多々あります。実店舗にて正体不明のアーティストによる作品と遭遇し、彼らについていかに情報がネット上に存在するか、あるいはしないのか(全くと言っていいほどなければそれはそれでソソるものですよね)を確認する行為は言うまでもありません。それに加えて、図書館やブックオフオンライン、駿河屋等の所蔵・在庫の有無を調べることも日常茶飯事です。これはディスクガイドを読んでいたりTwitter等にて気になる盤を見つけた時も行います。「何を今更」とお思いになるでしょうが、現代ディグはかなりの割合をネットによる裏付け(あるいは「裏付けられていない」という事実)に頼ってしまう場合が多いです。そんな中、各種サイトの便利さ・不便さについてどうしても気になってしまうのです。

図書館サイトでCDを探す上で「日本中の図書館サイトが目黒区図書館のようにならないかなぁ」と懇願してしまうほど、目黒区図書館のサイトはえげつないです。目黒区と言えば90年代前後のCD、特に邦楽に強く、これまで数多のディガーの方々が本・ネットでご紹介してきたその頃の無名盤がちょっと信じられないくらい所蔵しています。前回ちょっと触れた原みゆきは1stの「私風景」以外のオリジナルは全て所蔵してますし、トレンディもので私が一番好きな作品である小田育宏「Talk To You」、エレクトーンものの名盤である中村幸代「目の前のにんじん」、中原めいこ久野かおりの各種等…、こちらで音源入手したバブル期シティポップは数えきれません。まして90年代に活躍した著名アーティストの盤なんかは必ず何かしら所蔵していると言っても過言ではありませんでしょう。これには目黒区購入の盤だけでなく「心優しいけどとち狂ったどこかの元ディガー」による寄贈盤も貸し出していることによるもの。「え!このアルバム目黒区にあったのかよ」と思って借りてみるとそのCDには水色の「寄贈」とプリントされたシールが大体の場合貼ってあります。

そんな目黒区図書館のサイトなのですが、何故か各CDの多くのページにCDジャーナルのレビュー文が引用されています。アイドルのアルバムをちょろっと聴いて「顔はカワイイけど声に抑揚がないねぇ~」などとこき下ろしているアレですね。そこには「作詞で○○が参加」というクレジット情報や「打ち込みがなんともアーバン」といった作風に関する情報が紛れていることもしばしば。つまり、そのような文章に含まれるどこかのワードに引っ掛かれば検索した時に結果としてそのレビューを受けた盤が上がってくるということです。例えばこのサイトで「山口美央子」と検索すると、山口が作詞で参加したアイドルのアルバムが二枚出てきます。彼女自身のアルバムは所蔵がないので出てきませんが…。
f:id:rikimikiri:20200202092132j:image

また「リゾート」と検索すれば何故か村松健や成田路実「イリュージョン」、金沢朋子「ハウス・ミックス2」等、何の脈絡もない盤がズラズラっと登場します。そういうことです、本サイトの使い方は。出鱈目にそれっぽいワードを打ち込みCD絞り混み検索をすれば、未知のトレンディ盤に出会える可能性があるのです。これってちょっとスゴいよなぁと高校生くらいの頃から思っていました。

f:id:rikimikiri:20200202092655j:image

一点の目的(あのCDは所蔵してるかな?等)をもって行われがちな図書館における検索機能ですが、このようなシステムを採ってもらえるとバーチャルディグの場として十二分に役立ってくれますよね。私の廃サロンディグも(本ブログを読んでいただけていればお分かりかもしれませんが)約半分は目黒区の恩恵を受けていると言って過言ではありません。貸し出しに関しても一度に本・CDごちゃ混ぜで20枚まで借りられるしね。皆様も目黒区図書館ディグ、是非お試しください。これだけ語ってアレですが、私は目黒区民でもなんでもありません。

蛇足ですが、逆にブックオフオンライン及びアプリ。アレなんなんでしょうね。憤慨です。いつ開いても重い、とにかく重い。しかも検索機能も融通が効かないというか、「出会い」に乏しいですよね…。ネット注文商品の店舗受け取りができるようになったのはグーですが、もうちょっとサクサク検索できるようにならないと余りにも使いにくい。実店舗行けよ!ってことなのでしょうか…。

 

前置きが長くなりましたが、今回も徒然なディグ戦利品のご紹介です。「中級収穫」とか言いつつ、実は一枚でいち記事書くのが面倒で超お気に入り盤も含めていることをお許しください…。


f:id:rikimikiri:20200202094457j:image

木屋響子(Kyoko Sound Laboratory)「See You Again」(1992)

ブックオフ三軒茶屋店にて110円で購入。Kyoko Sound Laboratoryこと木屋響子は1971年生まれのシンガーソングライター兼マリンバ奏者。コロムビアエデュテインメントの元社長である父親の「命令」もあり、本名の木村恭子から始まり、木谷恭子、木谷響羽子、安倍恭子など幾度も改名を繰り返しています。これまでにドキュメンタリーやたまごっちの音楽等を手掛けた経歴があるそうです。本作はそんな彼女のKyoko Sound Laboratoryとしての1st。アーティスト名からもしや…?と察しましたが、やはりなかなかのテクノ(気味)歌謡アルバムです。と言っても彼女が本格的にテクノ化するのはこれ以降のようで、本作はまだ電子抑え目でバラエティに富む作風となっています。ジャケは谷村有美みたいなのに…(廃サロンディグのルールとして「谷村有美大江千里には手を伸ばさない」というものがあります。アレルギーだから)。普段こういったテイストのジャケはまず買わないんですが、Kyoko Sound Laboratoryという名前と110円という投げ売り加減に牽かれて買いました。しかし、これは聴かないと分かんないもんですね。

結論から言うと、バラエティに富んでいることが災いしてどうにも俗にもバラードにも振り切れてない悲しさがあります。良曲が多いだけに少し残念。木屋の声は声優の島本須美にも似た、突き詰めた清純さがあり、バラードはバラードで相応なクオリティに仕上がっていますが、中庸なガールズポップアルバムの一曲ぽいものに過ぎないよなぁという感想。どちらかというと、やはり打ち込みに寄った曲の方が違和が強調されていて良いです。表題曲の2「See You Again」は「5年後のランバダ」というアレンジ。イントロからしてそっくりで、軽やかな南米風打ち込みに乗せて木屋が淡々と別れを歌います。4「ASKA」は安いニューウェーヴチックな高鳴りするシンセと金属パーカッションになぜか民謡的な笛の音が絡み合うスピリチュアル系ガールズポップ。5「TOMODACHI」、これは良い!私「しゃべる!DSお料理ナビ」のBGMが大好きなんですが、それにも通ずる優しいボッサ風に刻まれる柔らかなシンセ。歌詞こそ「男女の友情は…」云々の普遍的なやつですが、相変わらずな淡々としたボーカルとニューエイジボサノヴァの連携がこれ以上なくアンニュイ。TinyPop等と比較するのは強引かもしれませんが「今聴きたい音楽」の一種に該当するのではないでしょうか。6「ELECTRIC LOVE」これまたタイトルド直球なテクノ歌謡が来ましたね~。サウンドのベースはハウスなので序盤は大したことないんですが徐々にギミックが効いてくるいぶし銀的テクノポップマインド。歌詞は元気OL版「Computer Love」といった趣。アウトロで薄れゆく木屋の声に少しずつヴォコーダーのエフェクトがかかっていくのが「妙」です…。「島本須美(風の声)が歌うテクノ歌謡」と思って聴くとグッドかもしれませんね。7「孤独のobjet」はイントロが中森さんちの「1/2の神話」や久宝さんとこの「男」風ですが、例によって淡々とした発声なのでプレーンマフィンのようなガールズポップになっています。本曲に限りませんが、氷を入れた熱湯を飲んでる気持ち。間奏のギターソロが恐ろしくドベタな気持ちよさで、好みっすよこれ。極めつけは10「See You Again(single version)」、先ほどのランバダ風アレンジから一転、アラビアンブギーな謎ミックスが展開されています。90年代の作品ですが、これほど無時代的な音楽も久々に聴きました。前回紹介したKONTAの「otherwise」のDayとNightの違いほど顕著ではありませんが、聴き比べが興味深いです。

本作以外の木屋の作品はジャケがとにかくスピリチュアルに寄っていて聴くのが怖いのですが、この人の声からしてそういう作風に合いそうだなってのも分かります。だからこそ本作のような俗っぽいアルバムの奇妙さが輝き出すようにも思いますね。110円という価格から考えるとかなり面白い買い物になりました…。


f:id:rikimikiri:20200202183225j:image

NUU「唄波」(2002)

件の目黒区図書館にて借りました。

唐突ですが、私は2000年代前半のJ-POPにおける過剰なオーガニック感が苦手です。沖縄ブームとかを筆頭にした、俗な癖に有機体を気取っていたあの頃の音楽が結構嫌いです。バブリー歌謡が好きなのがその裏返しなのか、テクノ偏向が先なのか、そこら辺はよく分かりませんが。本作もそのリスニングアティチュードから考えるとスルーしそうなもんなのですが、パーカッションやリズム隊を基調としたカラッカラに乾いた(「オキナワ」が取り除かれた、無国籍な)「離島感」が何故か気持ちよく、愛聴盤、とまで行かないまでも好きな作品でした。NUUは1998年デビューの女性シンガーソングライター。作曲行為を「産曲」と称しています。1stシングル「青いドレス」はあの頃のR&Bスタイルですが、本作はそこから少し年月を経て、オーガニック路線に寄ったようです。なんか印象からUAとかに近いのかな、と勝手に思っています。

全体的に「優しい音楽」ですねー。パワータイプの音楽ばかり聴いている中でこういう作品がスッと挟まると泣きそうになってしまいます。一番好きなのが2「手のひらサイズの心臓」。自然の恵みを食べることを「からだに地球が入る・混ぜる」と歌う、童謡といいか民謡、あるいは「みんなのうた」チックな可愛い一曲。弦楽器や鍵盤に頼らない唱歌というのは素晴らしいですね。

 

https://youtu.be/M95uZQXtGfs

NUU「手のひらサイズの心臓」

ライブ音源がありました。レコーディング版はもっとスローかつミニマムな編成なのでまた印象が違う。

 

自然讃歌というか非欲情な楽曲が殆どなアルバムの中で9「或る女の日記」はオーガニックシャンソンといったドロッとした趣の作品となっています。この手の作風だけのアルバムだと「オッ、椎名林檎フォロワーですか」となりスルーしてしまうのですが、本作の中では程よい緩急として機能しているように思います。

ちょっとNUUは気になるので今後も気にしてみようかと。あとこの調子で猫沢エミとかCHARAとかも聴いていこうと思います。また全然違うのは分かってるのですが。オーガニックな女の子になってハンモックで寝ようかな(雑)。


f:id:rikimikiri:20200202191745j:image

尾崎亜美「AMII'S BEST」(1994)

ここからはサクサク行かせていただきます。これも目黒区図書館にてレンタル。尾崎亜美ってビッグネームですが正直今まで楽曲を殆ど知らず…。そんな中で本ベストを借りた理由はマクドナルドでした。YouTubeでバブル期辺りのCMを観るのが趣味のひとつなんですが、特にマクドナルドのCMが好きで。時に俗、時にアンニュイなあのCM群、眠たい時に観るとなんとも心地よく「堕ち」れます。そのマクドナルドのCMの中でも1992年に放映されたあるシリーズで尾崎の「Walking in the rain」が使用されています。これがマクドナルドCMのイメージ戦略、特にセンチメンタル面を醸し出す良質な作品となっております。

https://youtu.be/-umM8QNfZ-U

思春期あたりの男の子や女の子が悲しみにくれている、そこで友人と触れあいつつマックの製品を頬張ると次第に笑みがこぼれる、最後には夕暮れのロードサイドのマクドナルド大型店が「おいしいね。マクドナルド」なるコピーと共にドーンと映し出される…。何てことないCMですが、ここで尾崎のフォーキーな弾き語りで構成された本楽曲が上手く機能してますね。「みんな、濡れながら、どこへ行くんだろう…」。マクドナルドのハンバーガーが食べたい!とかマクドナルドに行きたい!と喚起するのではなく、「いつでもそばにいるよ」という優しさを訴えかけたCMですよね。逆エドワードホッパー的アプローチ。CMの良さから本作を借り、この曲をフルで聴いてみましたが、途中でバンドがデーーンと登場したりせず、最後までアンニュイでフォーキーさを維持して終わります。CMにしても音楽にしても、こういうノリがいつまでもどこかで生き続けていてほしいものです…。

蛇足ですがこの曲、ガキ使に尾崎が出演した際に番組内で制作され、そのままエンディングとして使用された経緯があるそうです。その後マクドナルドのCMに流用されたという。これに関しては本当に知りたくなかったな。


f:id:rikimikiri:20200202211637j:image

戸田誠司HELLO WORLD:)」(1995)

こんな有名盤ですが、地元のブックオフにて280円(から20%オフで224円か)で購入。存在は勿論知っていましたが意外にもレンタルできる場が無いんですよね(渋谷TSUTAYAに無し)…。正直そこまで興味がある訳ではなかったですが、ジャパニーズテクノの名盤であることと安価さにつられて購入しました。

SHI-SHONENやFAIRCHILD等のテクノポップバンドにて電子の風を吹かせてきた戸田の1stソロアルバムです。レビューは今さら私がするまでもありません。「TECHNOLOGY POPS π3.14」というテクノ偏向な名ブログにて良質なレビューがなされているのでそちらを是非…( http://reryo.blog98.fc2.com/blog-entry-541.html )。でも意外と(ネット以外で)気軽には入手不可な著名盤をこのような形で入手できてよかったです。8「Wiz」はエレクトロ・アンビエント作品の傑作だと思います。

 

https://youtu.be/BmQ62eTLAsc

戸田誠司「Wiz」

 

今回は目黒区図書館ディグについての解説との二本立てなのでレビューもこの辺にしておきます。最近当たりのアルバムに良く出会うのですがどうにも文章化しづらいものばかりで(割と中庸な癖に感覚的に良いと受け止めてしまうアルバムなんかは本当にレビューできない)…。だったら逆にハズレの作品についても触れていけたらいいですかね。それでは!