廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

中級な収穫まとめ その6

「2020年なんて語られ過ぎて始まる前に終わってるようなもんだよなぁ」などと思っていたら遂に2020年ご本人がやって来てましたね。超ご無沙汰しております。各位、今年も宜しくお願い致します。

さて、先日待望の「オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド」が発売されました。ブックオフディガー集団「lightmellowbu」を中心に編まれたこの奇書、勿論愛読させていただいております。というか、廃サロン的には本書を片手にスマホで図書館サイトを巡回するのが最近の日課となってしまっています。賢人達の汗と涙、一喜一憂と身銭の集大成ガイドを図書館ディグに使用するとはある種の冒涜かもしれません。謎の背徳感に苛まれています。しかし実際問題、本書で紹介されている盤が図書館に所蔵されている例、結構あるんですよね…。原みゆきのディスコグラフィーは全て身近な図書館で揃ってしまいましたし、石田純一「EGOIST」やディガーの必修盤「芍薬」までもが税金でどこかの市区町村が購入していたという事実(どこかは全国のディガーのやる気を削ぎかねないのであえて申し上げません)…知りたくなかったし公表すべきでないような…笑 でもとりあえず音源が手に入れられたのは有り難いです。しかしながら「ディスクガイドを読み込んだ上でアルバムを入手する」行為と「純真なディグ」は全く別であることは余りにも自明で、各々の良し悪しがあります。「確認」と「発見」の違いなのですから。ディスクガイド由来の音源探求は「チートでズルい」と言えてしまう一方「ディグの種集め」と考えれば肯定的に自己催眠可能です。そして純真なディグは偶発的な喜びへの途方のない旅です。大変ですよね。この2つを上手く反復横跳びしていければ…と思いつつ今は本書を使った「種集め」の時期なのかなぁとモヤモヤする日々です。

そんな中でも一応「純真なディグ」は継続しています。今回は年末年始に手に入れた盤をつらつらと取り上げていきたいと思います。


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KONTA「Jane Doe」(1996)

渋谷レコファンにて750円で入手。こちら、実は渋谷公会堂にてBARBEE BOYSの再始動ライブ(1階5列目という好座席だったことはずっと自慢していきたい)を観る一時間ほど前に入手したものです。ネット上でも簡単に購入可能だったのですが、見つけたときは「巡り合わせだ!買わねば!」と興奮しましたね。

言わずと知れたBARBEE BOYSのボーカリスト兼サックス奏者KONTA(近藤敦)の3rdソロアルバムにして角松敏生プロデュース盤です。ツンツン頭でお馴染みの彼が初めて下ろし髪姿を見せたジャケが印象的ですね。このヘアースタイル、それまでのKONTAのパブリックイメージからの隔たりによって生まれるショッキングな印象を含めての髪型だなぁとつくづく思います。誰かが普通にこの髪型にしても、受ける印象はまるで違う、はずです。それはともかく。

まずリードトラックである2「otherwise…nightbreak」ですが、これが最高傑作。先行シングルの「otherwise…daybreak」の方はアニメ『シティーハンタースペシャル~ザ・シークレットサービス』の主題歌であり、PVも製作されました。

 

https://youtu.be/DwXUNvApZLg

KONTA「otherwise…daybreak」

 

こちらはこちらでKONTAソロらしい疾走感あるハードなトラックとして純粋に素晴らしいです。しかし本作収録の「nightbreak」の方はどうでしょう。いや~ヒネクレまくり!まず、これジャングルじゃないっすか!カッチョイ~! シングル版よりも若干スローにした代わりにシンセメインで妖艶な音使いがなされていますね。サックスも大して登場しないけどこれはこれで。後半とアウトロで唐突に現れる知らない誰かのラップもご愛敬、というか本アレンジにおいては寧ろ「アリ」に感じてしまいます(このラップのせいかファンの中では評判良くないっぽいんですけど)。タブラ?のビートも気持ちよすぎて「アレンジャー、タルヴィン・シンか…?」と勘違いしてしまいそうになったり。ともかくアルバムremixとしては至高の出来だと感じました。

その他の楽曲も、角松の意図なのか全体的にはゴージャスなアレンジが施されています。1「早射ちマック」は入りの弾むような進行がガールズポップを彷彿とさせていたり、ホーンセクションバリバリだったりと、KONTAからストイックなイメージを取り除いたような印象を受けます。3「cats and dogs」はこれまた珍しく打ち込みぐにゃぐにゃなクラブ歌謡。サビでは「いつだって俺が謝るのは好きだからさ」となんともひ弱なKONTAが見れます。後半からはダンサブルなノリが影を潜めてしまうので息切れ気味ですが、いずれも電子メロウなナンバーに乗るKONTAを堪能できます。が、前半のソリッドに爆裂する角松節の方が丁度よく「俗」なので、緩急入れず全編これで突き抜けて欲しかったなと個人的には思います。

実店舗で遭遇することは稀に感じられますが、メルカリや駿河屋をはじめとするネット店舗ではかなり安価で手に入るので気になる方は一度聴いていただきたいです。KONTAのソロアルバム、本作以降の「KONTA」「GUYS」はやたら高いのに1st~本作はべらぼうに安いんですよね…軒並み300円くらい…。(最後の最後で脱線しますが)先日ヤフオクで「KONTA」を500円で落としたので歓喜したくらいです。


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AJA+Sandmans「月の海月」(2000)

渋谷ディスクユニオンにて350円で購入しました。ジャケのチープルナティックな印象だけに牽かれて買いましたが、このAJAというアーティスト、うかみ綾乃の名で官能小説家としても活動する異色の歌手。これまでに4枚のアルバムをリリースしており、1stはテクノポップ好事家にはちょっと知られた「クスコー氏の宇宙船」(P-MODELの中期メンバーである中野テルヲが参加)です。で、本作はセカンド。いやぁ、これはいいものですよ…。

まずAJAの歌声が、なんと言いますか「神秘的ながらも猥雑」。大半の楽曲で、そのあどけなさが色濃い声で囁くように歌っているのですが、どこか(決してマイナスにはならない)いやらしさを携えていて、いずれの時代にも見受けられない「音楽におけるセクシー」を醸し出しています。

一方サウンドは、これはかなり俗寄りのプログレッシブと言っては大袈裟でしょうが、そういうものを感じます。インディーロックに寄り添う訳でもなく、かと言って歌謡的でもなく。時にシャープに、時に大胆に奏でられるバンド編成。つまり端的に言うと「一周回って普通」かもしれません。やはり本作を支配しているのはAJAの独特な妖艶さ。俗世間とはちょっとズレた気持ちよさを提供してくれているのは彼女の声だと思います。低音で密やかに歌われることで本作の中でも特に緊張感が強い3「天国のプログラム」やラテン?ともちょっと違う独特なリフによってやや歌謡曲テイストに感じられる5「真夏の果実」が特に気に入りました。

私はとっても好きな作品ですが、いちいち内省的な歌詞のどことない中2感や電子音控えめな音作りによって「今多く聴かれるべき作品ってこともないかな」とは思ってしまいますね…。しかし決して中庸な作品ではなく、いつか再評価タイミングが来そうな気もします。機会があれば是非。


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various artists「才色兼備2」(1997)

下北沢ディスクユニオンにて230円で購入。久々にこの手の「一曲でも当たりがあればいいや」なノリのCD買いました。こちらは当時のフジテレビアナウンサー(主に女子アナ)勢揃いで各自割り当てられたオリジナルを歌うという企画モノ。本作以外にも二枚出てるみたいです。ジャケの「97年!」な色味がいいですね。化粧具合といい服装といい、そのまんまアマチュアガールズポップ歌手の寄せ集めにも見えます。

案の定当たりは一曲だけだったのですが、それが1「YOTAKA」。こちらは元フジテレビアナウンサーで現在はフリーかつ日本大学芸術学部、放送学科特任教授を務める近藤サト(すみません、本作を聴くまで知りませんでした。超美人ですね…)による歌唱です。当時はその低音な声で人気を博していたようですが、本楽曲ではその特質が最大限に発揮されています。というかですね、この声完全に「浅い眠り」辺りの中島みゆきとおんなじじゃないですか…!第一声を聴いてたまげてしまいました。アナウンサーとしての声を聞いてみるとそんなきらいは全くなく、どちらかというと「ホステス」でイメージする声質に近いのかなぁなどと思ってしまうのですが(失敬)、この歌声に関しては完全にご乱心期を抜けたぐらいの頃の中島みゆきクリソツだと思います。曲調のせいもありますが「渚へ」(1991年リリース「歌でしか言えない」収録)のパクりか…?とすら。いつぞやに買った中島みゆきのパチソンカセットの歌手なんか目でないくらいの激似っぷりです。YouTube上に音源がないので誰とも分かち合えないのが悔やまれますが…。ともかく、アニソンのアルバムに一曲だけ入ってる妖艶な当たり楽曲を発掘したかのような喜びがありました。他ですか?別に聴いてないですし聴かなくていいと思います。

 

https://youtu.be/N8h3mayS1iA

歌唱動画とか無いのでおまけです。


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Steven Halpern「アルファ波ミュージック ハルパーンのスペクトラム・スイート」(1988)

三軒茶屋ブックオフにて280円で入手。ブックオフディガーにはお馴染み過ぎる「アルファ波」という単語。もし現在「ブックオフディグ用語辞典」のようなものが製作されるとしたら絶対に収録されますよね…。とはいえ「アルファ波」という文言=当たり、ということもなく、コンセプトもありきたりなら聴取感覚にも引っ掛からない駄作がほとんどなはずです。しかしこちらは大当たりでした。最近の通勤時うたた寝のお供として役立ってくれています。というか、柴崎祐二氏「CDさん太郎」の第1回にて言及されていましたが、こちら電子ニューエイジものとしては有名盤みたいですね。アルファ波盤の括りとは別軸だとは思いますが…。

哲学博士にして作曲家・演奏家・プロデューサーの肩書きを併せ持つ、音楽療法の権威として名高い(らしい)Steven Halpern。確かにそう言われるとメディテーションにうってつけな心地よさを提供してくれる作品ではありますし、実際眠るためにあるような音の群れと感じます。ミニマルで温かい、整頓されたお香のような。「音楽」というよりはシャトルランとか体操に使われそうなムード。更にブックレットによれば各トラックが用いる音階に人体の中心点(チャクラ)が割り当てられており、その部位を意識しながら聴くと「効く」らしいです。色々と御託が並べられておりスピへの耐性のない私などは困惑してしまうのですが、「まぁ、各自好きに聴くのもええんちゃうん?」と締められているので安心しました。そうします。

 

https://youtu.be/KCd43TWa6JA

Steven Halpern「Spectrum Suite」

 

後は、アルファ波盤あるあるなテイストのジャケが好きですね。地球を凌駕するデカさの鍵盤が虹色に煌めきながら宇宙に進出するという、この手のつけようのなさ。サウンドのこじんまりとした美学とは正反対な気もしますがダサカッコイイので良しとします。現場からは以上です。


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Tiara「Pyxis」(1993)

アマゾンの中古で310円で購入。これ、気になってたんですよ。20世紀アイドル系のツイートをよくする方のツイートで存在を知り、その方の「WINKの二番煎じコンセプト系アイドルだと格別に良い」との文言で「いつか見つけたら買わねば…」とは思っていたのですが中古系の実店舗で遭遇することは全く無く。結局アマゾンに破格で上がってたので諦めて買ってしまいました。しかしこれはよいものですね。

Tiara(ティアラ)は、元乙女塾の浅山美月と菊地奏衣によるアイドルユニット。かつてもう一人加えて三人組でFairyTaleというユニット(おニャン子のカバー8cmシングルを見かけたことがあります)を組んでいた二人ですが、1993年にTiaraとして再出発。しかしながらシングル一枚と本作をリリースしたのみで活動を終えてしまったようです。

本作からTiaraは、全体的には正にWINKの二番煎じ、というか若干幼くしたような印象を受けます。声の渋みがなくクリアで、そこそこの上手さですが特徴に欠けるような。ビジュアルやアートワークもお金かかってない感じで、インパクトが弱いように思います。そんな中シングルカットもされた1「いけない…わからない…好きならばかまわない」は秀逸。タイトルがそそりますよね。サビでもタイトルがそのまま用いられ、大味なアンニュイを構成。音の方もラテン気味でダンサブルかつごっついギターソロがエクスタシーを誘います。というか、好事家の中で本曲からWINKを連想しない人なんていないんじゃないでしょうか(強いて言うなれば「夜にはぐれて」のテイストに近いんでしょうか)。割とエネルギッシュな二人の歌唱法のせいで若干中庸に寄ってしまっている気もしますが、トラックをこの路線でもう少し引っ張っていれば…などと悔やんでしまいます。

 

https://youtu.be/bqPuagf0DfQ

Tiara「いけない…わからない…好きならばかまわない」

衣装の突き抜けたダサさ。ティアラは仕方ないにしてもさ…。

 

その他の収録曲も悪くはないけどスルメ曲は無いかなぁという印象。あくまで1を聴くためのアルバムですかね…。安価に入手できるなら良いですが、バブリーアイドル研究家の方々以外は血眼になって探すようなものでもないかも知れません。

蛇足ですが、本作を一通り聴いた後何気なしにWINKを聴いたら滅茶苦茶良く聴こえました。サウンドのゴツさがまるで違う…。

 

さて来月は渋谷CircusにてYu-Kohが開催されますね。私は2日目に行くつもりです。生でAOTQ氏(実在するのか…という謎の感想)やwai wai music resort等のアーティストを観れるまたとない機会なので楽しみです。どなた様か、お会いしましたら宜しくお願い致します。あ、あとキノコホテルの創業10周年公演も行くんだった。そっちも楽しみ。5年前くらいに「真夜中のヘヴィロックパーティー」で観たきりだもんなぁ。