廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

番外編 沢田研二の90年代ジャケが最高すぎる

反駁に及ばない大スター。そんな言葉を聞いて、皆様は誰を思い浮かべますか。私はジュリーこと沢田研二を思い浮かべます。GSグループ「ザ・ダイガース」で華々しくデビューし、先日亡くなったショーケンこと萩原健一らとのロックバンド「PYG」を経てソロに転向。当時は奇抜な衣装を携え「勝手にしやがれ」「TOKIO」等の大ヒット曲を連発。俳優としても「悪魔のようなあいつ」「太陽を盗んだ男」といった代表作が幾つもございまして、その活動・リリースは現代までに及びます(今でも毎年何かしらアルバムやシングルをリリースしておりますね)。彼の音楽を飛び越え昭和の「文化」を背負った活動ぶりは、最早アイドルの枠を優に超越し正しくスーパースターとしていつまでも君臨していると思います。

ところが近年では反体制派的活動や(2011年以降は原発反対ソングばっかりリリースしております)コンサートのドタキャン、そして激太り等の話題が先行し、かつての面影は拭われてしまったかのような印象をお茶の間に与えてしまっています。彼への正当な評価が崩れ去ってしまっている時代だと言えるかもしれません。しかしそれも、彼の「スーパースター」という大前提ありきなような気がします。「大スターがあんなことになるなんて」という部外者の勝手な落胆、そんなことは本人や古参ファンにはあまり重要でないのでしょう。彼は例えどのようになろうとも、あくまで「スーパースター」としていつまでも玉座でふんぞり返ってくれていればそれでよいのです。かく言う私も古参ファン、でこそありませんが幼少期からのファン。人生で2番目に聴いたCDは沢田研二のベスト「royalstraightflash」でした。なので(?)彼に関する数々の悪評は割とどうでもいいです。
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前置きはこれくらいでいいですね。今回は番外編として彼のバブル期・90年代のアルバムのアートワークについてのコラムとなります。お茶の間に大スターとしての彼が浸透してから約10年が経過した頃、彼はそれまで以上にアルバムにセルフプロデュースの感を強めていきます。アートワークも殆ど彼の専属デザイナーであった早川タケジ氏(山口小夜子などの衣装デザインも担当した方です)と共に、早く言えば好き勝手やり始めます。それらが病的にかっこいい。サイケ・デカダン・トレンディ等多様な要素を絡ませ、ドギツくエロティックかつ悪趣味なジャケ・アートワークを連発しております。ちなみにそれまでのアートワークは↑の「royalstraightflash」を見ていただければ。どれも大体あんな感じでしたから。

 では以下から時系列順にかいつまんで見ていきましょうか。番外編の癖に膨大な分量になりますがどうぞお付き合いくださいませ。


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「彼は眠れない」(1989)

ハイ、出ました。なんだこれ。和洋折衷な印象のコラージュに囲まれて片目を手で塞ぐジュリー。長野あたりの古びた現代美術館の片隅に飾ってありそうな。丸尾末広を彷彿とさせるタッチでジュリーが描かれていますね。色味のせいかパッと見地味かもしれませんが十二分に異常。少なくとも「カッコいいジュリー」とはかけ離れていますが、デザインとして見れば最高すぎません…?ちなみに内容ですが、忌野清志郎とのデュエット曲があったり、ユーミン徳永英明・奥井香など固める脇が豪華すぎる。中身だけでも名盤です。1「ポラロイド・ガール」は中年的アイドルソングしてて最高。

https://youtu.be/k0KU0Mkmcwg

「ポラロイド・ガール」


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「パノラマ」(1991)

純正Vaporwaveジャケの最高峰、といっても過言でないこちら。沢田研二のアートワークの中で一番好きかもしれません。アートワーク、お耽美とCG創成期がお上手に融合できてる。ディナーにスケルトン・ルナを、という感じでしょうか。ジュリーの目付きも色っぽすぎ。インダストリアルノイズバンドのジャケと言われても初見ならば疑わないかも。内容もデカダン歌謡の応酬。シングルカットされた「Spleen」(作詞はコシミハル!)とそのB面でもあった「二人はランデブー」(こちらはサエキけんぞう作…!!)が最高です。

https://youtu.be/C8tVLuf9hDk

「Spleen~六月の風にゆれて~」


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「Really Love Ya!!」(1993)

さりげないロシアアヴァンギャルドの引用。そしてその上方で燃え尽きるジュリー。シンプルでいいですねー。下品すぎない美麗とはこういうもんよ、とジュリーが語りかけているようで。逆に演歌のジャケみたいなイキフンもありますがご愛敬です。内容としては歌謡曲ありファンクあり、耽美なバラードありの豪華な面子。3「そのキスがほしい」は現在でもライブのテッパンですし、5「幻の恋」は色気の塊としてのジュリーが堪能できます。

https://youtu.be/vcxHYw-UyK8

「そのキスがほしい」


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「Sur←(ルーシュ)」(1995)

ここからですよ本旨は。本作から沢田はアルバムを完全セルフプロデュースするようになり、「パブリックイメージとしてのジュリーからの脱却→アーティストとしての沢田研二」としての活動をスタートさせます。TVに殆ど出演しなくなるのもこの頃からですね(前年彼は最後の紅白歌合戦出場を果たしています。真っ黄っきのヘソ出しセーターで)。それにしてもどうですかコレ。私はめっちゃくちゃカッコいいと思うのですが。悪趣味の力業ですね。一言目で「サイケ」、二言目で「フィリピンの激ヤバポップス歌手みたい」と言いたくなる。原色まみれで目が痛くなりますが、内容は意外にもそこまでド派手でない。歌謡ロックな秀作を中心に、やんちゃなオジサンとしてのポップスを聴かせてくれます。タイトル通りダリの絵画を歌詞に落とし込んだような1「sur←」から、パーカッションのジャングルぶりが絶妙な根倉ソング2「緑色の部屋」へのガタンと落ちる繋ぎが最高です。シングルカットされた7「あんじょうやりや」はクソダサですが案外和モノレアグルーヴとしてイケるのではないでしょうか。

https://youtu.be/Kh191WZgL5g

個別のライブ映像がなかったのでアルバムのフルを…

 

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「あんじょうやりや」(1995)

↑で述べたシングルのジャケもアルバムに打ち勝つ程の爆弾なので載せておきます。マジで誰これ。


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「愛まで待てない」(1996)

前作のアートワークの世界観を踏襲しつつ微妙にブラッシュアップされた感のある作品。タイの仮面ライダーかな?とかく真っ赤ですね。エナメルな衣装でテッカテカ、変態的。頂点を極めた者とは思えませんね(褒め言葉)。内容は吉幾三玉置浩二による作品があったりしてやはり豪華。表題曲2「愛まで待てない」はこちらもライブの定番です。全体的に軽くこなす感じでなく無骨な沢田研二を味わえますねぇ。

https://youtu.be/ZADxFy1ibGo

「愛まで待てない」(2008年東京ドーム)


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サーモスタットな夏」(1997)

沢田研二アートワークの中で2番目に好きな一品です。まずタイトルが最高じゃないですか、サーモスタットですよ。なんて汗っぽいんでしょう。ジャケもこれまで培われてきたサイケ・悪趣味をベースにしつつ申し訳程度のお耽美をふりかけたかのような。右半分を占めるメタリックでアブストラクトな彫像が本ジャケの均衡を調整していますね。内容も申し分なく捨て曲ナシです。例により表題曲1「サーモスタットな夏」はサイケデリック・パワー・サーフソングといった赴きですし、8「ダメ」はドロドロにエロティック。こちらは夏に部屋を真っ暗にして冷蔵庫を開けっ放しで聴きたい。バラードである9「恋なんて呼ばない」は沢田研二が歌うから説得力のある楽曲のひとつです。

https://youtu.be/h9sklAO-TUg

サーモスタットな夏」「恋なんて呼ばない」


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「いい風よ吹け」(1999)

あいたたたた…。これは素晴らしいですね…。サーモスタットの紫が「東南アジアの繁華街」だとしたらこちらの紫は「裏町、風俗街」かな、と。真ん中の沢田を「武田鉄矢美輪明宏を足して2で割った」と表現したレビューサイトもございましたが納得…。壮年スターの憂鬱を可視化させた秀逸なアートワークですね。内容はハードですけどね。ただ1「インチキ小町」4「無邪気な酔っぱらい」8「ティキティキ物語」等オフザケ系が多いのも特徴でありまして…。エネルギーが高く感じられる楽曲が多いのもあり苦笑ものです。

https://youtu.be/TwCF5fjpYxE

「無邪気な酔っぱらい」


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「耒タルベキ素敵」(2000)

ミレニアムにして最お耽美ジャケが来ました。天井桟敷のポスター寄りのコラージュデザインをバックにマネキンのようなジュリー。いやマジでスーパースターじゃないとこんなカッコできないってば。前年までのアートワーク達とは別の方向に変態の舵を切ったアートワークですね。本作は二枚組で、全てオリジナル楽曲で23曲を収録。サイケな楽曲やスピードロックもありますが、何よりザ・タイガースの頃を懐かしむ1「A・C・B」に始まり23「耒タルベキ素敵」で21世紀へのひんやりとした期待感を歌い上げて締める、この流れが最高です。

https://youtu.be/8FB_-yQ8ZnE

「耒タルベキ素敵」

 

…如何でしたでしょうか。沢田研二のジャケを見ているとつくづく「アートワークは「アート」ワークなんだなぁ」と考えさせられるのですが、それが皆様にお伝えできたなら幸いです。

私が図書館で初めて借りた沢田研二のCDが「パノラマ」でした。当時は純粋にかっこいいなと反応したのを記憶しております。私の中でジャケ借りとしての廃サロンディグの起源であります。本稿で紹介した作品、割とあちこちの図書館にございますので興味のある方は探してみてください。買うとなると結構お高めですので。

ちなみに2001年以降、ジュリーのジャケは本人が全く登場しないイラストや写真に統一されてしまいます。それまでの反動ですかね。華々しかった頃のジュリーやその頃の面影のない沢田研二だけでなく、この時期の弾けてるジュリーについても思いを馳せ続けていきたいものです。ジュリーよ永遠に!

 

https://youtu.be/-zV6a1A8LYM

「Hello」(1994)

前述済みの最後の紅白ジュリーでお別れです。秋元後次コンビの鉄板っぷりを全く感じさせない中庸作です。

第5回 岡部東子「STAY THE SUN」


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岡部東子「STAY THE SUN」

プラッツ P28K-11

 

アルバムの曲全てが、殆ど同じような風景・画を想起させてくることがよくあります。それには、楽曲毎のグラデーションの変化が大きくない、つまり変化・緩急に乏しいから、はたまたボーカルがあまりに特徴的だから、等どっかしらに理由があるのでしょう。それはそれとして、そこで想起される風景がそのアルバムのアートワークの風景そのものという場合も多いはずです。海が写っているジャケ写ならば海岸が、都会的なジャケであれば街の喧騒が…。楽曲だけでなくジャケも合わせた「パッケージ」を以て作品となる、ということでしょう。これは画像だけでなく、PVやカラオケビデオに関しても起こり得る現象ですよね。至極フツーのことですが、音楽は「視」「聴」覚なんですね。

 

つまり何が言いたいか、というとですね、本作「STAY THE SUN」を聴いてると、どの曲からも「夕焼けに染まるアリゾナ?の風景」しか浮かばないってことです。本作はシンガーソングライター岡部東子の2ndアルバム。1989年発表の隠れたトレンディ名盤です。神保町の某古びたレコード屋で700円くらいで入手したんだったと思います。1st「アムネジア」は目黒区の図書館で音源を入手済みだったので(そっちも最高です)、正直ずっと探してた作品でした。

この岡部東子もネットで殆ど情報が皆無でして。写真もジャケでは後ろ姿だったり横向きだったりシルエットだったり。ちょっと気持ちいいくらいの匿名感ありますね。その癖強烈なハスキーヴォイス。掠れこそないものの、墨汁をひたひたにした大筆で書く太い一本線のような(、で分かりますかね)。濃くて、それでいてアーバンなお声。同世代のガールズポップなんかとは一線を画してる、汗っぽくないハスキー。大黒摩季たちとは別物でシャーデーと親戚?なハスキー。匿名性とその内から発せられるエネルギー、そのギャップがいいのかもしれません。

 

「ジャケからアリゾナの夕暮れしか浮かばない」と申し上げましたが、詞と曲は至極トレンディ歌謡として機能してるんです。散りばめられた単語の中に「これは狙いすぎだろ」というようなものはありませんが、強いて言うなれば「ギムレット」「午後のギャラリー」「想い出のフォトグラフ」なんかが丁度良くファニチャーとして佇んでくれている。ラストを飾る9のタイトル「スノー・キャンドルの夜」なんかはちょっとこっ恥ずかしいくらいですが、それもよしです。どちらかと言うと各曲のサビ辺りでソウルフルに絶唱される英詞が素晴らしくアーバンかと。

音に関しては何よりシンセがエレクトーン・フュージョンといった趣で唸ってくれているのがいいですね。ここに夕焼け連想の秘密があるかもしれません。パーカッションは芯がありつつ爽やか。カラフルに各曲を彩ってくれています。1「VACANCY」は正に夕焼けを見つめながら聴きたくなり、4「果てしない時の砂丘で」はサビ入り前のリフレインが素晴らしい。かと思えば5「9月のハリケーン」はキューバンアレンジ(合ってるか分かりませんが)。7「SLOW DOWN」なんかは(他の曲もそうなんですが、特に)夕暮れのドライブにうってつけなやつです。日々に疲れきったサバサバ系女性の気分になれそう。

 

本作を最後に表舞台から姿を消した短命な岡部東子ですが、正直いま聴かれるべき歌手だと思うんです。シティポップの真夏の灼熱青空的軽やかさ・眩しさも最っ高ですが、たまには肌寒い中で夕暮れを黙って見つめましょうよ。という訳で、最後まで本作から夕焼けがこびりついて離れませんでした。夕暮れアーバンポップに絞って漁っていくのも良さそうですよね。

 

https://youtu.be/ZMwO8qD5l14

岡部東子「想い出の瞳

「STAY THE SUN」の楽曲がYouTubeに皆無だったので、代わりに1st「アムネジア」から一曲お送りします。本作の世界観とはちょっとズレますが、ボーカルの張りを感じていただきたいので。この曲も結構ドライブ向きな気がする。

 


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帯の詞の引用の仕方、最高すぎません…?

第4回 HAL FROM APOLLO '69「Pyramid Of Venus」


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HAL FROM APOLLO '69「Pyramid Of Venus」

スイート・スプエスト! TOCT8546

 

こんにちは。なんだか予想外に沢山の方に見ていただけているぽくて。リツイートやいいね等有り難うございます。数多いらっしゃる先人の後追いなので色んな意味で追い付けやしないんですが、今後も楽しく書いていけたらと思います。のでご支援宜しくお願い致します。

 

さて、唐突ですが「宇宙っぽい音楽」ってなんでしょうね。もちろん皆さん各々で異なるイメージをお持ちでしょうが、「2001年宇宙の旅」の「ツァラトゥストラはかく語りき」のような荘厳なクラシックだったり、或いは電子音楽だったりアンビエントだったり、サイケデリックロックこそ宇宙だというような意見もございますことでしょう。「スペースミュージック」というジャンルとかありそうですけどね、ないです。

とりあえず、本作は私の主観では最も「スペースミュージックしてるじゃん」というアルバムです。バンドの名はHAL FROM APOLLO '69。ほらもう宇宙。男女ユニットで、本作が日独同時発売のメジャーデビュー作。

こちらも去年の金沢一人旅で、ふらっと入った汚いレコード屋で掘り当てました。確か680円くらい。東京行きの新幹線に乗る3時間位前に漁ってて、我ながら計画性のなさに恥ずかしかったのですが、結果大当たりだったので良しです。

 

https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lEcs1Ev9YpT98XJZE0PSNfFjsWxUw3bBk

YouTubeにストリーミング用で全曲上がってたのでとりあえず聴いてみてくださるがよろしいかと。私の言ってることもなんとなくお分かりになるかと思います。でもなんか言語化できないんですよね、この作品の宇宙感。

特別シンセがバリバリという訳でもないし、女性(Halさん)のボーカルも澄んではいるものの、これが宇宙の声なのかというと「?」ですし。強いて言うなれば、本作を包んでいるのは「浮遊感」かと。特別歌詞に「事件」が起きている訳でもなく、シュールで現実味や香りの欠いた世界観がのっぺりとばらまかれているような。ディレイのかかったアコギやパーカッションの音色によってふわふわと制御されている、そんな宇宙。「動」のアンビエンス。

それにしてもHalのボーカル、面白いですよね。1「Icecreaming」では囁くような可愛らしい声で、2「Darker Than Your Eyes 2」ではキヨシローばり?のねっとりヴォイス。かと思えば表題曲である5「Pyramid Of Venus」では低音を交えた凄みを見せてくれる。「歌が上手い」にも数多の形態がございますが、こういうバンドの中で一番活きる上手さなのでしょう。

改めて歌詞についてですが、「カプセルボム」「スクリュー」「ピラミッド」等、やっぱりなんとなく遠回しに宇宙・近未来的。もっとテクノテクノしてる楽曲に乗っててもおかしくない言葉の数々。でも(自分自身がそうなのでアレですが)決して「オトコノコ」を喜ばす為の歌詞という感じでもないですわね。どっちかというとポエティックで中性的な歌詞で、正に香りのしない感じ。そこにも好感が持てます。

 

HAL FROM APOLLO '69のアルバム数枚の中で、このような世界観が展開されているのは本作だけ。その後はデジロックと渋谷系の中間っぽくなっていき、最後は普通にデジロックで終焉。ギタリストのzoeこと山田貴久氏は2006年に悪性リンパ腫のため亡くなっております。

もうちょっと流行っててもよさそうな…と思うのは私だけでしょうかね。ネットにも全然情報がなく、その割には音源だけ結構聴けるという。ディグによって出会わなければまず聴くことのなかったバンドだろうなぁと思われますが、出会えて良かったとも心底思います。皆さんも本作で前澤さんより先に宇宙に行ってみませんか。

 

https://youtu.be/_9zqBnN3wrM

「Rocket Khaos」

本アルバム収録ではありませんが、彼らの中で最大のヒット(らしい)シングルをご紹介して終わります。なんかポンキッキぽくありません?斉藤和義「歩いて帰ろう」とか和田アキ子「さあ冒険だ」とか、それらを聴いてる時と似たような気持ちになる楽曲で大好きです。ネットで6000円くらいしますが。

第3回 菊池桃子「ESCAPE from DIMENSION」


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菊池桃子「ESCAPE from DIMENSION」

Vap – 80036-32

 

熱の籠った内はガンガン書いていきたいと思います。3回目にして菊池桃子を持ってきてしまいました。YouTubeで音源が聴けるとなるとこの辺が手堅いので。

本作、昨年ひとりで金沢に旅行へ行った際にブックオフで出会いました。ホテルのチェックインを終え「飲みにいこうかな」というところで付近にブックオフを見つけ、慌てて駆け込むと、お馴染み500円コーナーに本作が鎮座(?)しておりました。

菊池桃子のアルバムはヤバい」と、噂は予々見知っていたのですが、モノホンを見るのは初めて。旅行中の高揚感も相まって、即レジへと運びました。といっても聴くまでは「タイトルのエッジに対してジャケが牧歌的すぎる」くらいの印象。旅行から帰宅し全曲聴き流してみたところで本作の「ヤバさ」を痛感したのでした。というか、このアルバムが良すぎて菊池桃子の他のアルバムが殆ど聴けていない状態です、未だに。

 

本作は菊池桃子にとって4作目のアルバムであり、それまでの作品もそうであったようにプロデューサーはオメガトライブでもお馴染み林哲司です。それまでの彼女のアルバムでもオメガトライブばりの80年代式シティポップが炸裂しているのですが、本作は「シン・ゴジラ」のサントラを担当した鷺巣詩郎やテクノ寄りだった頃の久石譲等が編曲者として参加していることで、ゴリゴリのテクノ・エスノ歌謡アルバムと化しております。しかも菊池桃子のボーカルは抑揚なし・張りなし、といった具合。ロリ声って訳でもないんですが、ともかくテクノポップとしての要件を満たしまくりです。ボーカルとサウンドが全く癒着していない。

説明が説明になってないので、とりあえず数曲聴いていただきましょうか。

 

https://youtu.be/ET_qfsBDjW4

「Dreamin' Rider」

ヤバヤバPVと共にお送りいたします。入りの「チチチチッチチッ」って音にまず持ってかれますね。F1の映像と一緒に聴きたい。パワーアイドルポップ。ゴッリゴリのテクノ歌謡。それにしても声が能天気すぎる。 

 

https://youtu.be/9FL2xWLJ86c

「Ivory Coast」

ガムランのようなパーカッションに支配されたエスノ歌謡。こちらが久石譲の仕事です。恋愛の歌でもなんでもない、砂漠の情景を歌ってるだけってのが最高ですね。なんか、他に言いようがないんですが、この曲「お値段が高そう」。

 

https://youtu.be/1i2Al3Hi3xo

「Yokohama City of Lights」

砂漠の次はヨコハマ。横浜にしては高貴すぎるんじゃありませんこと、この音使い。歌詞が「横浜」って単語以外に明確な横浜要素が皆無です。それがいいんですが。ズズズッとしたシンセ使いが蔓延しまくってて、トレンディ歌謡好きには堪りません。

 

映像をご覧になっていただいたのでお分かりかと思いますが、このテの楽曲たちにPVが付けられていたり、バラエティ番組での歌唱が許されていたのを見ると、どうしても懐古厨にならざるを得ないというか。いずれもシングルカットされてませんからね、↑の楽曲。

本作からのシングルカットは「Say Yes!」という楽曲なんですが、正直アルバムから浮きまくりです。小学校低学年向けの運動会用の曲みたい。嫌いじゃないんですけど。

https://youtu.be/2DdRE9ceP4Y

 

本作の直後に来るのが、菊池桃子伝説のピークである「ロックバンド」、ラ・ムーです。

本作はアイドルシティポップとしての最高傑作「菊池桃子」と、和製ブラックコンテンポラリーの最高傑作「ラ・ムー」とのInterludeとして、いいとこ取りのアルバムとなっております。ので、楽曲単体ごとでなく、是非アルバムとして聞いていただけますようよろしくお願いいたします。

 

https://youtu.be/C-jLEi2uvrE

ラ・ムー「愛は心の仕事です」

バンドメンバーが菊池桃子以外ほぼシルエットでかっこいい。曲は言わずもがな。

第2回 シシリア「香港ハーバーライト」

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シシリア「香港ハーバーライト」

ビクター / VICL-169

 

こちらも目黒区の図書館で入手。目黒区万能説。余談になりますが、目黒区図書館はマジで90年代前後のマニアック盤に強いです。TSUTAYAにもブックオフでも、サイトですら引っかからない希少盤がゴロゴロ。そのいずれも、盤を実際に見てみると「寄贈品」のシールが。かつてトレンディ歌謡・ガールズポップ大好きおじさんが「来るべき時代のために」と大量に目黒区に託したに違いありません。

目黒区図書館万能説はちょくちょく出てくるので、また別の機会にでも。

 

シシリアは90年代の香港のアイドルだそうですが、ネットで一切情報がありません。向こうで幾つもCDを出して、その後世界進出、というか日本進出の足掛かりとして本作を発表した…と考えるのが定石ですが、何も分からずずっとやきもきしています。そう、やきもきするほどの名盤なのです。

この頃のアジア系アイドルのアルバムは「それっぽい」「アジアっぽい」味付けのされた音色のアイドルソングが多くて聴いてて楽しいのですが、こちらはアイドルソングを通り越して「アジア歌謡」といった趣の曲ばかりです。派手さはありませんが、しっとりと日本人のオタク共に媚びてくれてる。8の「Chotto Matte Kudasai」のカバーが全てを物語っています。元々ほとんどの曲がシンプルに日本語歌唱なので、この曲のカタコトぶりが一周回って異様。しかもいい声。フィリピンパブにいるかのような幻想に包まれます。香港なんですが。

↓彼女の「Chotto Matte Kudasai」はYouTubeに無かったので近いものを。本末転倒。https://youtu.be/zT4hc83roWg

 

その他の曲もエレクトーンと中国伝統楽器の応酬をバックにシシリアがしっとりと歌い上げるものばかりです。ある意味ゲルニカっぽいかも。ジャズ調の曲もあるし。

2と9はマハリックハリーリという同時代のエスニック系バンドがプロデュースしているそうです。マハリックハリーリも滅茶苦茶最高なバンドなので(アルバム三枚しか出してませんが)、どこかでご紹介したいです。日本のバンドです。

https://youtu.be/M-Zyo4IPCKw

 

90年代のアジア系アイドルはまさに「沼」なので、正直集め疲れちゃいます。といってもこの辺は入手手段が限られてるので打ち止めも簡単です。が、またすっごいやつをご紹介できたらと思います。

 

https://youtu.be/NxyVIF7Nx6o

シシリアとは別の人ですが、バラードの癖にブラウン管がめっちゃ飛び交ってる中国人アイドルのPV。爆笑くださいませ。

 

音源がYouTubeで聴けないアルバムばっかですみません。次回はネットでも試聴できるものを紹介したいと思います。

 

第1回 「サロンミュージック」


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「ヨーロピアン・モード・ミュージック・シリーズ・サロン・ミュージック」

release:アルファレコード

その他詳細不明

 

「サロン」と銘打ったコラムなので「サロン」と名の付くCDから紹介したいと思います。

こちらのCD、最初は秋葉原ブックオフの500円コーナーで発見しました。ですがその時は「ジャケもタイトルもビンビンキテるけどつまんない室内楽コンピっぽいしな」とスルーしてしまったのでした。しかし暫くして目黒区の図書館サイトでバンドの方の「Salon Music」のCDを調べようと検索したときに再び本作がヒットし「意図せずに二度も出会ったのだから運命にちげぇねぇ」と即予約。結果これが大当たり。正に「サロンミュージック」の名に違わない、軽やかにユーガな世界観が広がる音世界でした。

 

当初のイメージである室内楽、というよりかは正に「近世ヨーロッパの知識人たちの語らい・社交界としてのサロンのBGMにかかっていてほしい音楽」としか表現できない佳作の数々。一曲一曲毎にシンプルかつギミックの効いた変化がつけられているため 、飽きずに、しかし深入りしすぎない、素晴らしい距離感で付き合うことのできるCDです。だからといって言って古臭くダラダラと冗長な音使いでもないのが不思議。パーカッションやシンセも案外ふんだんに使用されています。それらも含めて「お耽美」ってことなんでしょうか。

各曲のタイトルを見てみても「亡き王女のためのパヴァーヌ」「飾り窓のセバスティアン」「エモスィオンの記憶」…。なんのこっちゃですね。ですがその「なんのこっちゃ感」までもが本作の実態の見えない「サロン」を装飾しているような気がします。

 

どの曲も割と最高なんですが、5「リボンを入れた小箱」が一番好きですね。手回しオルガンのゴージャスバージョン(俗だ…)的なサウンドが、まんまメリーゴーランドで流れてるあの音楽 !!通勤で聴いてるとマジで眠れます。通勤回転木馬、オススメ。

 

とりあえず目黒区の図書館では借りられます。実物を入手するにはAmazonが手っ取り早いですかね。今でもアキバにあれば別ですが。YouTubeに一切音源が上がってないのでお聞かせできませんが、皆さん是非一度はお聴きくださいませ。

 

Amazonリンク載せときます。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF-BGM%E9%9B%86/dp/B000UVEEVK

 

廃サロンについて

年甲斐もなくブログを始めてしまいました、ながいです。これから暫く「廃サロン」で手に入れてきたCDについて軽いコラムを書いていきたいと思います。

 

まず「廃サロン」とはなんだ、という話になるかと思います。私もそう思う。そんな言葉はない。というか今考えました。

文化の集積所としては余りにオープンな場であるが故、いつしか俗物・メジャーの中に綺羅星が埋もれてしまっている場を「廃サロン」と呼ぶことにします。具体的にはブックオフ・図書館・TSUTAYA駿河屋etc.。普段私はこのような場所やサイトでCDを掘り漁っております。

暇さえあれば図書館のサイトで所蔵CDを調べて予約。休みの日にはいの一番に予約した10枚程度のCDを受け取り、ついでにブックオフTSUTAYAのCDコーナーを物色。駿河屋ではCDだけでなく安っすいVHSをちょくちょくチェック。日々こんなん。アホですね。

しかし「ジャケットが変わってる」や「ネットに一切情報がない」などの理由で興味をもち、そのような場所でCDを手に取り聴いてみると、それらがどんなメジャー音楽にも勝るエネルギーを秘めていることもしばしば。このような発掘に喜びを見出だせることのなんと幸せなことか。ハズレも多い作業ですが、その分大当たりを引いたときの悦の入り方は尋常でないです。

 

そのようにして手に入れてきたCDを、音楽の専門的知識の殆ど無い身からの観点で紹介していこう、というのが本コラムの趣旨です。専門用語よりかは「聴いたときの感覚」を重んじて、その雰囲気を伝えられるような文章にしていきたいです。anouta様による「トレンディ歌謡」(http://anouta-jp.tumblr.com/)や柴崎祐二様による「肴は炙ったイカでいい」(http://shibasakiyuji.hatenablog.com/entry/2019/02/10/014400)等、普段参考にさせていただいているブログは数多くありますが、なるべくそちらでは紹介されていない作品を取り上げていきたいと思います。

 

渋谷のブックオフ跡地がGUに成り下がってしまった今、このようなブログに意味があるのか否か、そんなことを全く気にせずに書いていくつもりです。よろしくお願いいたします。


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↑近所のブックオフでございます。