廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

第4回 HAL FROM APOLLO '69「Pyramid Of Venus」


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HAL FROM APOLLO '69「Pyramid Of Venus」

スイート・スプエスト! TOCT8546

 

こんにちは。なんだか予想外に沢山の方に見ていただけているぽくて。リツイートやいいね等有り難うございます。数多いらっしゃる先人の後追いなので色んな意味で追い付けやしないんですが、今後も楽しく書いていけたらと思います。のでご支援宜しくお願い致します。

 

さて、唐突ですが「宇宙っぽい音楽」ってなんでしょうね。もちろん皆さん各々で異なるイメージをお持ちでしょうが、「2001年宇宙の旅」の「ツァラトゥストラはかく語りき」のような荘厳なクラシックだったり、或いは電子音楽だったりアンビエントだったり、サイケデリックロックこそ宇宙だというような意見もございますことでしょう。「スペースミュージック」というジャンルとかありそうですけどね、ないです。

とりあえず、本作は私の主観では最も「スペースミュージックしてるじゃん」というアルバムです。バンドの名はHAL FROM APOLLO '69。ほらもう宇宙。男女ユニットで、本作が日独同時発売のメジャーデビュー作。

こちらも去年の金沢一人旅で、ふらっと入った汚いレコード屋で掘り当てました。確か680円くらい。東京行きの新幹線に乗る3時間位前に漁ってて、我ながら計画性のなさに恥ずかしかったのですが、結果大当たりだったので良しです。

 

https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lEcs1Ev9YpT98XJZE0PSNfFjsWxUw3bBk

YouTubeにストリーミング用で全曲上がってたのでとりあえず聴いてみてくださるがよろしいかと。私の言ってることもなんとなくお分かりになるかと思います。でもなんか言語化できないんですよね、この作品の宇宙感。

特別シンセがバリバリという訳でもないし、女性(Halさん)のボーカルも澄んではいるものの、これが宇宙の声なのかというと「?」ですし。強いて言うなれば、本作を包んでいるのは「浮遊感」かと。特別歌詞に「事件」が起きている訳でもなく、シュールで現実味や香りの欠いた世界観がのっぺりとばらまかれているような。ディレイのかかったアコギやパーカッションの音色によってふわふわと制御されている、そんな宇宙。「動」のアンビエンス。

それにしてもHalのボーカル、面白いですよね。1「Icecreaming」では囁くような可愛らしい声で、2「Darker Than Your Eyes 2」ではキヨシローばり?のねっとりヴォイス。かと思えば表題曲である5「Pyramid Of Venus」では低音を交えた凄みを見せてくれる。「歌が上手い」にも数多の形態がございますが、こういうバンドの中で一番活きる上手さなのでしょう。

改めて歌詞についてですが、「カプセルボム」「スクリュー」「ピラミッド」等、やっぱりなんとなく遠回しに宇宙・近未来的。もっとテクノテクノしてる楽曲に乗っててもおかしくない言葉の数々。でも(自分自身がそうなのでアレですが)決して「オトコノコ」を喜ばす為の歌詞という感じでもないですわね。どっちかというとポエティックで中性的な歌詞で、正に香りのしない感じ。そこにも好感が持てます。

 

HAL FROM APOLLO '69のアルバム数枚の中で、このような世界観が展開されているのは本作だけ。その後はデジロックと渋谷系の中間っぽくなっていき、最後は普通にデジロックで終焉。ギタリストのzoeこと山田貴久氏は2006年に悪性リンパ腫のため亡くなっております。

もうちょっと流行っててもよさそうな…と思うのは私だけでしょうかね。ネットにも全然情報がなく、その割には音源だけ結構聴けるという。ディグによって出会わなければまず聴くことのなかったバンドだろうなぁと思われますが、出会えて良かったとも心底思います。皆さんも本作で前澤さんより先に宇宙に行ってみませんか。

 

https://youtu.be/_9zqBnN3wrM

「Rocket Khaos」

本アルバム収録ではありませんが、彼らの中で最大のヒット(らしい)シングルをご紹介して終わります。なんかポンキッキぽくありません?斉藤和義「歩いて帰ろう」とか和田アキ子「さあ冒険だ」とか、それらを聴いてる時と似たような気持ちになる楽曲で大好きです。ネットで6000円くらいしますが。