廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

第2回 シシリア「香港ハーバーライト」

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シシリア「香港ハーバーライト」

ビクター / VICL-169

 

こちらも目黒区の図書館で入手。目黒区万能説。余談になりますが、目黒区図書館はマジで90年代前後のマニアック盤に強いです。TSUTAYAにもブックオフでも、サイトですら引っかからない希少盤がゴロゴロ。そのいずれも、盤を実際に見てみると「寄贈品」のシールが。かつてトレンディ歌謡・ガールズポップ大好きおじさんが「来るべき時代のために」と大量に目黒区に託したに違いありません。

目黒区図書館万能説はちょくちょく出てくるので、また別の機会にでも。

 

シシリアは90年代の香港のアイドルだそうですが、ネットで一切情報がありません。向こうで幾つもCDを出して、その後世界進出、というか日本進出の足掛かりとして本作を発表した…と考えるのが定石ですが、何も分からずずっとやきもきしています。そう、やきもきするほどの名盤なのです。

この頃のアジア系アイドルのアルバムは「それっぽい」「アジアっぽい」味付けのされた音色のアイドルソングが多くて聴いてて楽しいのですが、こちらはアイドルソングを通り越して「アジア歌謡」といった趣の曲ばかりです。派手さはありませんが、しっとりと日本人のオタク共に媚びてくれてる。8の「Chotto Matte Kudasai」のカバーが全てを物語っています。元々ほとんどの曲がシンプルに日本語歌唱なので、この曲のカタコトぶりが一周回って異様。しかもいい声。フィリピンパブにいるかのような幻想に包まれます。香港なんですが。

↓彼女の「Chotto Matte Kudasai」はYouTubeに無かったので近いものを。本末転倒。https://youtu.be/zT4hc83roWg

 

その他の曲もエレクトーンと中国伝統楽器の応酬をバックにシシリアがしっとりと歌い上げるものばかりです。ある意味ゲルニカっぽいかも。ジャズ調の曲もあるし。

2と9はマハリックハリーリという同時代のエスニック系バンドがプロデュースしているそうです。マハリックハリーリも滅茶苦茶最高なバンドなので(アルバム三枚しか出してませんが)、どこかでご紹介したいです。日本のバンドです。

https://youtu.be/M-Zyo4IPCKw

 

90年代のアジア系アイドルはまさに「沼」なので、正直集め疲れちゃいます。といってもこの辺は入手手段が限られてるので打ち止めも簡単です。が、またすっごいやつをご紹介できたらと思います。

 

https://youtu.be/NxyVIF7Nx6o

シシリアとは別の人ですが、バラードの癖にブラウン管がめっちゃ飛び交ってる中国人アイドルのPV。爆笑くださいませ。

 

音源がYouTubeで聴けないアルバムばっかですみません。次回はネットでも試聴できるものを紹介したいと思います。

 

第1回 「サロンミュージック」


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「ヨーロピアン・モード・ミュージック・シリーズ・サロン・ミュージック」

release:アルファレコード

その他詳細不明

 

「サロン」と銘打ったコラムなので「サロン」と名の付くCDから紹介したいと思います。

こちらのCD、最初は秋葉原ブックオフの500円コーナーで発見しました。ですがその時は「ジャケもタイトルもビンビンキテるけどつまんない室内楽コンピっぽいしな」とスルーしてしまったのでした。しかし暫くして目黒区の図書館サイトでバンドの方の「Salon Music」のCDを調べようと検索したときに再び本作がヒットし「意図せずに二度も出会ったのだから運命にちげぇねぇ」と即予約。結果これが大当たり。正に「サロンミュージック」の名に違わない、軽やかにユーガな世界観が広がる音世界でした。

 

当初のイメージである室内楽、というよりかは正に「近世ヨーロッパの知識人たちの語らい・社交界としてのサロンのBGMにかかっていてほしい音楽」としか表現できない佳作の数々。一曲一曲毎にシンプルかつギミックの効いた変化がつけられているため 、飽きずに、しかし深入りしすぎない、素晴らしい距離感で付き合うことのできるCDです。だからといって言って古臭くダラダラと冗長な音使いでもないのが不思議。パーカッションやシンセも案外ふんだんに使用されています。それらも含めて「お耽美」ってことなんでしょうか。

各曲のタイトルを見てみても「亡き王女のためのパヴァーヌ」「飾り窓のセバスティアン」「エモスィオンの記憶」…。なんのこっちゃですね。ですがその「なんのこっちゃ感」までもが本作の実態の見えない「サロン」を装飾しているような気がします。

 

どの曲も割と最高なんですが、5「リボンを入れた小箱」が一番好きですね。手回しオルガンのゴージャスバージョン(俗だ…)的なサウンドが、まんまメリーゴーランドで流れてるあの音楽 !!通勤で聴いてるとマジで眠れます。通勤回転木馬、オススメ。

 

とりあえず目黒区の図書館では借りられます。実物を入手するにはAmazonが手っ取り早いですかね。今でもアキバにあれば別ですが。YouTubeに一切音源が上がってないのでお聞かせできませんが、皆さん是非一度はお聴きくださいませ。

 

Amazonリンク載せときます。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF-BGM%E9%9B%86/dp/B000UVEEVK

 

廃サロンについて

年甲斐もなくブログを始めてしまいました、ながいです。これから暫く「廃サロン」で手に入れてきたCDについて軽いコラムを書いていきたいと思います。

 

まず「廃サロン」とはなんだ、という話になるかと思います。私もそう思う。そんな言葉はない。というか今考えました。

文化の集積所としては余りにオープンな場であるが故、いつしか俗物・メジャーの中に綺羅星が埋もれてしまっている場を「廃サロン」と呼ぶことにします。具体的にはブックオフ・図書館・TSUTAYA駿河屋etc.。普段私はこのような場所やサイトでCDを掘り漁っております。

暇さえあれば図書館のサイトで所蔵CDを調べて予約。休みの日にはいの一番に予約した10枚程度のCDを受け取り、ついでにブックオフTSUTAYAのCDコーナーを物色。駿河屋ではCDだけでなく安っすいVHSをちょくちょくチェック。日々こんなん。アホですね。

しかし「ジャケットが変わってる」や「ネットに一切情報がない」などの理由で興味をもち、そのような場所でCDを手に取り聴いてみると、それらがどんなメジャー音楽にも勝るエネルギーを秘めていることもしばしば。このような発掘に喜びを見出だせることのなんと幸せなことか。ハズレも多い作業ですが、その分大当たりを引いたときの悦の入り方は尋常でないです。

 

そのようにして手に入れてきたCDを、音楽の専門的知識の殆ど無い身からの観点で紹介していこう、というのが本コラムの趣旨です。専門用語よりかは「聴いたときの感覚」を重んじて、その雰囲気を伝えられるような文章にしていきたいです。anouta様による「トレンディ歌謡」(http://anouta-jp.tumblr.com/)や柴崎祐二様による「肴は炙ったイカでいい」(http://shibasakiyuji.hatenablog.com/entry/2019/02/10/014400)等、普段参考にさせていただいているブログは数多くありますが、なるべくそちらでは紹介されていない作品を取り上げていきたいと思います。

 

渋谷のブックオフ跡地がGUに成り下がってしまった今、このようなブログに意味があるのか否か、そんなことを全く気にせずに書いていくつもりです。よろしくお願いいたします。


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↑近所のブックオフでございます。