廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

別館 電影魔窟で拾い上げるVHS③

早くもVHS談義第3弾です。VHSディグを音楽関連以外のソフトに拡張してから、明らかに映画を観ることが増えました。私はドラマが(独特のノリや展開、また12,3回は絶対に観ないといけないという拘束感により)苦手で『孤独のグルメ』以外は全く観ません。まだ映画の方が好きなのですが、それでも2時間じっくり観るというのはちょっと辛いので、これまでは年に観て3本程度でした。しかし今年は20本くらい観てます、VHSで屑映画たちを。バブリーものは何故か大体90分程度で観れるものばかりですし、演者のファッションや都市の雰囲気、ベタな展開を楽しんでいればストーリーなんてどうでもよくなるので楽ちんです。映画がマジで好きな方々にタコ殴りにされそうですが、いずれにせよ「結構映画を観ている」というのはこれまでの自分になかった感覚なので純粋に嬉しいです。「良い映画」を観ない、という気負いのなさがまたディグライフの醍醐味なのかもしれませんね…。今回もそんなお気楽な作品からご紹介致します。


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『どっちにするの。』(1989)

渋谷TSUTAYAにてレンタル。赤川次郎の小説『女社長に乾杯!』を原作とした、中山美穂主演の快活ラブコメでございます。監督は『就職戦線異状なし』の金子修介

ひょんなことから玩具メーカーの副社長となった中山、彼女が周囲を巻き込み倒産状態にある会社の再建に乗り出す、とまぁ大筋はそんなところ。同時に社長に就任するのが中山の後輩役であった伊藤智恵理(あんまり存じ上げないのですがバラドル?メガネのせいで斉藤祐子にしか見えなかった)、専務には万年係長だった小林克也。3人の要職就任直後の浮かれっぷりがベタベタで気持ちいいです。

ブコメなので当然中山を2人の男が取り合うのですが、それが若かりし風間トオル真田広之という構図。本作を観て私確信致しました、若い頃の風間トオル滅茶苦茶いいな。以前Twitterの方で紹介した『東京Xマス・ラブウォーズ(出演:菊池桃子鈴木京香風間トオル吉田栄作etc.)』というドラマビデオでも鈴木京香の相手役として風間が好演していたのでレンタルした際にも期待を寄せていたのですがやはりバブル期の風間は良い。純朴で控えめ、しかしながら熱いときはとことん熱いのです…。終盤にはオフィスを花で敷き詰めたりしちゃいます。「クイーン」ぽさが未だ成熟しきっていない頃の中山とのギクシャクぶりは微笑ましい限りですね。一方の真田はテンプレなワルい色男を演じつつ「絶叫マシーンに乗ると奇声を放ち爆笑しながら仕事のアイデアをメモしまくる奇人」という役柄でもありまして、そこは十分本作の見所なんじゃないでしょうか。

「序盤にディスコに遊びに行っちゃう作品は大体良作」理論を提唱する私にとっては理論の裏付けに足る作品だったなぁと感じましたが、一方で本作がDVD化していないのも頷けます。だってノリがモロ植木等の映画ですもの。「オフィスで起こった偶然の不遇を偶然のゲットラックの連鎖で成功に持っていく」という、こういう確定ボーナスなノリって映画を無駄に後味悪くして有無を言わさず傑作足らしめたがる現代には流行らないのでしょうね。

あ、忘れてました。アイドルとして絶頂期だった頃の宮沢りえが、風間を想う会長の孫娘役で出演してます。当時の宮沢の服用方法がいかなるものだったかがよく分かる役柄でした。ゲロゲロ~。はしゃぎすぎで篠原ともえかよ、とすら思いましたけど。何故に宮沢りえはしっとりサブカル側にベン図を拡張できたのか、バブル期のアレコレを追っているとつくづく不思議なんですよね。あの頃のCMNOWを読んでても、こういう映画なんか観てても、ただただ「宮沢りえ今回もスベってんな~」としか思わないのに。もしかしたら凄く明白な事情があるかもですが(無垢なので宮沢りえの諸々について何も知りません…)そんなに興味ないのでパスで。ついでですが乙女塾の(平成の昭和アイドルこと)中嶋美智代も宮沢の友達役で一瞬出てきます。エンドロール観るまで全く気づきませんでした。

主題歌は中山美穂の16thシングルでもある「Virgin Eyes」です。杏里が作った滅茶苦茶「杏里~」な曲ですね。こういう映画にはゴージャスかつ中庸な曲が映えますね。

バブリー邦画を集めてると、結局こういう映画を現代に観るとき「演者のキャラクターと組み合わせ」に良し悪しが全て委ねられるなぁと痛感しますね、当たり前なんですけど。「当時どういうキャラクターだったか、今現在どういうキャラクターなのか(当時はトレンディ俳優でも現在ハチャメチャで全然違う個性で活躍しているとまた見る目が変わってくる)」「主演級俳優の組み合わせがトレンディ濃度を丁度よく保っているか(個性派がひとりワンマンで引っ張って行っちゃうバブリーものは正直あんまり観なくてもいいかな、クニコさんとか純次さんとかが主演だとまず視聴候補から外してしまう)」など、ストーリー等はそっちのけで考えて観ています。何の役にも立たないですが、無益なことを時代遅れのツールで行えることがただ幸せなんです…。そういう意味では本作には大満足でした。テンポもよくスカッとする作品ですのでお時間のある方は一度暇潰しに視聴されることをオススメします。あ、あの、またYouTubeに上がってしまってることですし…(レンタルしてから気づいた)。

https://youtu.be/Y-DoGfWLZYk


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『愛と平成の色男』(1989)

こちらも渋谷TSUTAYAにてレンタルした代物です。簡単に申し上げると「石田純一が「我々が一般的にイメージする石田純一像」を演じたイメージビデオ的映画」です。「不倫は文化」的石田の方です。監督・脚本は『の・ようなもの』等でおなじみ森田芳光。彼のキャリアを汚した可能性もある本作ですが、結論から言うとなかなか面白かったです、突っ込み所が多くて。

鈴木保奈美演じる妹と共に昼は歯医者を経営し、夜はサックス奏者なジャズメンという2つの顔を持つ男、長島道行はドチャクソなプレイボーイ。治療中に若い女性客を口説いたりディスコで「ウチの歯医者で治療しない?」と口説いたり…。しかし女性から結婚のアプローチを受けると上手くかわす。彼は結婚嫌いなのです、プレイボーイなので。そんな彼の悩みは不眠症、ある夜「不眠症を解消してくれそうな女の子」と出会ったことで長島のセックスアンドザシティライフは徐々に崩壊の匂いを漂わせる…。あらすじだけでも本作のコメディっぷりはお分かりになっていただけるかと思いますが、ストーリー(そんなものが本作にあるとしたら、ですが)は淡々と進行します。しかしながらちょくちょく流れる長島のポエジーな心情描写が滅茶苦茶で爆笑もの。何が「差し歯ならホタルイカを噛むことができるけど、指輪ではツメも噛めないよ」だよ。そんな「100万ドルの夜景よりも君が~」的なクサい台詞まみれな作品、まさに「全盛期の石田純一」ならでは、というか代役のなかなかきかない適役であったことには違いありません。

個人的には、数多く登場するプレイメイトのひとりとして鈴木京香が登場するのが残念でした。片田舎?に住む鈴木演じる坂木恵子はたまたま出張演奏に来ていた長島に惚れ上京。最終的には長島に「心配しないで、経験はあるから…」と迫る始末。初期の鈴木京香にやってほしくない役柄一位でした…。そういえば彼女がCD出したの今年でしたね。もっと前に感じるな。こちらはその30年前のお話…。逆に妹役である鈴木保奈美お転婆ぶりは適役でした。兄の彼女から結婚を迫られると演技で助け、報酬として指輪を受けとる歪んだ兄妹関係には当時「白鳥麗子でございます!」等でもぶっ飛んだ演技をしてくれていた彼女が釣り合います。

私的にはトレンディラブコメとして完璧だった本作。都知事に立候補しようとしてドスベリした挙げ句たるんだ顔つきが何故か嫁の親父に似てきてしまっている現在の石田からは想像できない「あの頃の彼」をお腹いっぱい拝めます。元来役者志望だった彼の精一杯の棒演技をご賞味あれ…。

https://youtu.be/AbuIxD-_dBs

こちらもYouTubeに上がってしまってました…。


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『フォーエバー・フィーバー』(1998)

今は亡きVHSショップ「大山LINK」で100円で購入。アジア映画のVHSはちまちま集めてますがこちらはちょっと珍しくシンガポール映画(DVD化されているので希少価値自体は無し)。イナタい青年のトラボルタっぷりが気恥ずかしいジャケですが、内容もそのまま「トリビュート・オブ・『サタデーナイトフィーバー』」な映画です。舞台は1977年、ブルース・リーを愛する青年ホックはたまたま友人と観に行った『サタデーナイトフィーバー』にドハマり。即座にガールフレンドのメイとダンスレッスンに通い近日開催のダンスコンテスト出場を(賞金5000ドルを目当てに)目指すがそこには執拗に嫌がらせをしてくるライバルがいて…といった内容。

大筋自体は毒にも薬にもならない青春映画です。しかしあくまでアジアンコメディということでどこか特有のダサ~が散りばめられており、そこが本作の見所なんでしょう。ホックは『サタデーナイトフィーバー』を何度か一人でも映画館に観に行くのですがその時毎回スクリーンからトラボルタがニュッと出てきて話しかけてきたり。ジャケの通りホックがダンスコンテストにトラボルタコスプレで出場するシーンなんかは爆笑しつつ「日本でも『サタデー~』公開当時は流行りたてのディスコにマジであの格好で来てた寒い奴も結構いた」らしいというエピソードを思い出し、つくづくアジアの虚しさなんかを…笑。

シリアス展開も要所要所にあるのですが、こちらもまた当時のお国柄テイスト。ダンスコンテストの優勝賞金5000ドルでホックはバイクを買いたいと考えているのですが、そこには「幼少期、通学に毎日8キロ歩かされた。その度に家族にバイクで送ってもらってる連中が羨ましかった。その時「金持ちになったらバイクを買う」と誓ったんだ。チャイナタウンに越してくる前のことさ」という理由が。またホックの家族関係(両親と3人兄妹)は頑固親父のせいで劣悪なのですが、唯一両親にベタベタに愛されていた弟で医学生レスリーが「ゲイであり性転換したい」と告白すると親父に即勘当されてしまいます。これもストーリーに大きく影響を与えるポイントなのですが、それ以前に唐突にセクシャリティの問題をねじ込むあたりシンガポールでは日本以上に身近というか迫るもののあるトピックだったのでしょうか。

こちらも快活極まりない良い作品でした。サントラも『サタデー~』使用曲のカバーの連続ですが遜色なし。サントラ欲しいんですが一部の図書館にしか無く断念しました…。


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『東京ストーリーズ 恋の熱帯低気圧』(1990)

駿河屋にて210円で購入。1989-90までフジテレビで深夜に放送されていた「東京を舞台にした恋愛物」がテーマのオムニバスドラマのビデオセレクションです。各30分の放送で、全44回あるそうなんですが、VHSとして発売されたのは本作ともう一本のみ。各回の主演を見てみると中村由真藤井一子尾美としのり等のトレンディ期の演技を観られる回もあったようなので、現在その中からビデオをもってしても6本しか観られないというのは誠に残念です。またトレンディドラマの「雰囲気」は好きなものの、全12回ほどあるドラマという形式を観るのが苦手な私のような人間にとってはうってつけのフォーマットであったわけですが…限りあるブツを大切に観賞しましょう。

収録作品は表題作の「恋の熱帯低気圧」に加え「バラ色の人生」「ダイナマナイト」の全3本。「恋の~」はお天気お姉さんを演じる屋敷かおり(すみませんが存じ上げません…)の彼とのすれ違い生活を描いた作品。Z-BEAMというお笑いコンビが出演していますが、こちらも存じ上げません。90年代のみ活躍したお笑い芸人を観ると(例え存在を知らなくても)特殊なシュンとした気持ちになるのは私だけでしょうか。

「バラ色の人生」は整形美人役の千堂あきほと同じく整形ハンサム役の宇梶剛士によるラブコメ。たまたま同じ整形外科にて手術を受けていた二人が偶然バーで出会い付き合い始めますが、お互いは整形の過去を隠したまま。そんなある日ひょんなことから宇梶の整形がバレてしまい…という大筋。格安CDディガーの方々にもお馴染み千堂あきほの主演にはガッツポーズをせざるを得ませんが、それにしても滅茶苦茶な美人ですね…。また、(実際は新宿生まれのド・シティボーイ)な宇梶のかっぺな方言丸出し演技が観られるのも貴重なポイントです。当時の宇梶、当時の徳永英明アスファルトフュージョンさせたような濃さのハンサムで胸焼けがしそうです。

そして「ダイナマナイト」は上記2作からの流れで観ると面食らう異色作。銀座のビアガーデン会場へ合コンに来たOL同期7人組、しかし男たちの方は一向にやってこない。最高にかしましい女性陣は方々で不満や愚痴、世間話を矢継ぎ早に繰り広げる。暫くしてやっと「男たち」がやって来るのだが…というあらすじ。ラブコメではなくあくまで純にコメディの体裁です。本作の特徴は、何より出演・脚本・演出を「自転車キンクリート」という劇団が務めている点でしょう。観ていて感じる、良い意味での余白の無さや鑑賞者を飽きさせない台詞の応酬、そして細やかな伏線が次々に回収されていきながらも気軽に観れる作りには感心させられます。カメラワークの切り替わりによってTVであることを意識させられますが、もし固定画面であればそれこそ小劇場でコメディを観ている錯覚に陥ることでしょう。「ダイナマナイト」だけで十二分に元が取れるVHSでした。

バーテンにとってのマティーニのように、物語を編む者にとって短編とは一番技量が如実に試されるフォーマットです。ここで「恋の熱帯低気圧」「バラ色の人生」のようにいかにもラブコメドラマ然とした俗で気楽なものが良作なのか、「ダイナマナイト」のようにほとんど喜劇な強固なつくりのものが良作なのか、それは好き好きかもしれませんが、少なくともそのどちらもを受け入れられる「東京ストーリーズ」という枠がかつてフジテレビに存在したことを脳の片隅に記憶しておきたいものです。

 

という訳で今回は映画・ドラマのVHSのみをご紹介しました。次回はまた音楽系などもご紹介できたらと思います。美川憲一のVHSを4本まとめ買いしたばかりでもあるので…。