廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

第7回 WINK「Para Para Wink !」

ご存知の方も多いかと思いますが、WINKが今年で結成30周年だそうです。相田翔子鈴木早智子により1989年に結成されて以降、「淋しい熱帯魚」「愛が止まらない~turn it into love~」を始めとする大ヒット曲を次々連発したWINK。主にハイエナジー調にアレンジされた洋楽カバーをアイドルが歌うという、古典的なやり口ながら王道の縁石を進むようなプロジェクトでした。また、歌唱中殆ど笑顔を見せない等のコンセプチュアルなアイドル像でも注目を集めました。しかしながら1996年に活動休止、その後未だに「解散」はせず今年の30周年を迎えました。昨年は歌番組で一夜限りの再結成を果たしお茶の間を驚かせたのが記憶に新しいかと思います。

余談ですが、私のWINKとの出会いは幼少期に鈴木早智子がセクシーDVDに出演したニュースを見て、なんですよね…。その時はWINKというアイドルデュオのサイズ感を知らなかったので「ふーん」位にしか思いませんでしたが、今思うと中々のニュースでしたよね、あれ。そんなことは今回どうでもいいんですが。

ともかく、WINKは結成30周年という節目を迎え再注目を集めております。Vaporwave界隈からも重宝されており、しばしばFuturefunkトラックのサンプリングネタに使われています。つい先日には、Futurefunkトラックメイカーの大御所であるNightTempo氏がWINKの楽曲を公式にアレンジしたEP「Wink- Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ」を発表し「世界初のオフィシャル公認のFuturefunk」として話題となりました。以下のリンクから聴けますので是非。ある種「妥当」なアレンジですが良くできてるなぁと思いました。原曲の完成度の高さが浮き彫りになるリミックスになっていて素晴らしいです。

https://open.spotify.com/album/11cN7Rtq2oIVeMnfEqErur?si=t3P6z8E7Q56UBkrNLuMWDQ

 

さて、長々と導入を書いてしまいましたが本題へと参りましょう。

f:id:rikimikiri:20190425083036j:image

WINK「Para Para Wink!」

fameba! / PSCR-5880

私が(新参な今のところ)一番好きなWINKのアルバムがこれです。2年前位に代官山の蔦屋書店のレンタルCDコーナーで発掘しました。初めて聴いたWINKのアルバムでもあります。まずすごいジャケですよね…。洋モノチックというか、こういうイラストを見ると叶姉妹が海外で発表したアニメの作画を思い出してしまいます。

ご覧になってお分かりかと思いますが、こちら、WINKの楽曲をパラパラトラックにアレンジしたアルバムでございます。↑のNightTempo氏の作品もそうでしたが、こちらも原曲のトラックを元に制作されています。元々WINK自体がハイエナジー・Jユーロなので、それを更にユーロビートアレンジするというプロジェクトには色々思うところがありますね。「マシマシ」であり「味濃いめ」であり…。「アイドルソング」を深化させたジャンルで作品を作り上げてきたWINKのリミックスとは、どこぞのアイドルのリミックスと意味合いが違ってくるのです。

ジャケ及びコンセプトからなんとも取っ付きにくそうな本作ですが、これが聴いてみると最高傑作。楽曲自体の素晴らしさは原曲を聴けば分かるので割愛しますが、パラパラアレンジによりそれらに秘められている狂暴性がドーピングの如く高められています。原曲のWINKはマネキン・ドールに例えられることがありますが、本作の二人は汗だくで絶唱してます。確実に。一度アレンジ版のトラックにのめり込んでしまうと原曲に戻ったときに若干の物足りなさを感じてしまうほどのBPMの高さ・音圧の暴力性。ユーロビートってそういうものなんですが「音楽に気持ちよい程度に殴られている」という印象すら受けます。

淋しい熱帯魚」や「愛が止まらない~turn it into love~」のアレンジも(あくまでユーロビートとして)卓越していますが、「夏のトレモロ」「sexy music」「トゥインクルトゥインクル」といったライトファン以上が有り難がる楽曲も選曲されていて、その何れもがこれまた秀逸です。「泣きメロ」なんて言葉を使うのはこっ恥ずかしいですが、そう言わざるを得ないものがあります。しかし確実に踊れそうな仕様になっているという。いや、本作でギャルが踊ってる姿はなんか見たくないですね。聴き惚れる類のトランスです。オッサン向けでなく、かといってギャルトラでもない、なんとも不安定なアルバムだと思います。リリースが2000年なので第二次パラパラブームの多少前の作品であり、ますます「何故コレが出たのか」が非常に気になるところ。

 

WINKは本作以外にもリミックス作品を幾つかリリースしていますが、大体がハウスミックスで正直つまらない出来になってしまっています。一方こちらはその狂暴性から飛び道具のように使うこともできそう(?)で、今現代に聴くにも耐えうるアルバムだと個人的には思います。やはりジャンル的に古くささは拭えませんが、WINKという世紀末アイドルの持っていたディストピア・スターとしての狂気を浮き立たせるには格好の手法でありましょう。なんかWINKって「終末」のイメージが付きまとっていて(短命だったのもあるんでしょうか)、それがなんとも似合うんですよね。だからこそ良くも悪くもアイドル感が薄いというか。

改めて本作をきちんと聴きなおして、WINKのオリジナルアルバムの方にも真面目に手を出していこうと思いました。最後にソレかよって感じですが、アレンジ盤から聴き始めるのって良くないですよね。すみませんでした。皆さんは最後にここに辿り着いてくださるとよろしいでしょう…。

 

https://youtu.be/Y652ZIZhtk4

WINK「夏のトレモロ

エスノ・サイケデリックWINKでお別れです。