廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

玉石混淆な収穫まとめ その12

最近「廃サロン、もうこのまま放置でいいかぁ」と思ったりしてました。決してディグをしてない訳じゃないんですけど、なんかこう、YouTubeで「都内をひたすらドライブするだけ」の動画とか観てたらレビューとかする気起きなくて…。大体、最近ブックオフの品揃え軒並み悪くありません?「コロナ禍→ステイホーム→断捨離→好盤がブックオフに並ぶ」という図式を期待していたのにガッカリ。CDを買うのもすっかりメルカリ頼りになってしまいつまらない今日この頃。しかも私がメルカリで買うような盤は、既に誰かがレビューしたのを見て気になって買うパターンが多いので、改めてレビューし直そうとはならないんですよね。よってディグやレビューへの気力が最近はめっきり失せていました。軽いCD弄りならTwitterでいいですし。

しかしそんな私を改心させたのが渋谷・頭バーで9.12に開催されたDJ.Pigeon氏主宰のDJイベント「DJ.Pigeonの知らない音楽」。約半年ぶりに訪れた音楽イベントとなりましたが、ここで柴崎祐二氏・珍盤亭娯楽師匠氏・数の子ミュージックメイト氏(先日発売された素人カラオケ音源CDが最高でした)、そしてデラ氏のDJを拝聴し、「未知なる音楽」への欲望がグツグツと増進されました。催眠療法のCD、幼稚園児の歌う「勇気100%」、一世風靡セピアの糞ダサ口上楽曲等々…、「あぁ、こういうこってりしたDJが聴きたかったんやワイは…」と号泣してしまいました。あと柴崎さん・パ音柴田さん・たまおさん等と久々にお話できたのも本当に良かったです。

てな訳でイベント熱が冷めないうちに、2ヶ月ぶりに玉石混淆レビューです。小出しにして次回に繋げていこうという意思から3枚のみですがご了承ください。


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平部やよい「彩響-平部やよい作品集」(1994)

五反田のブックオフにて510円で入手。アートワークの淡い幾何学模様がなんとも教科書チックな本作は、エレクトーン奏者・作曲家の平部やよいの2ndアルバムです。CD掘りし者はすべからくエレクトーンという単語に敏感なような気がします。別に現在でもバリバリ使用される楽器なはずなのにどことなくトレンディを汲み取ってしまう、なんとなく安っぽい癖にスノッブ、そんな衣を纏っているのがエレクトーン、という印象があります。と言っても本作は基本ライトクラシックもの。マリンバ、バイオリン、チェロ、ピアノとの共演で、「癒し」よりかはやや硬く張りつめた作風です。それもあって無心に聴き流してしまいそうになるのですが、④「ART 1907-1931」の連作は白眉です。面白い。近代美術の1907-1931年までの流れを念頭に制作された楽曲だそうで、「Ⅰ.キュビスム」「Ⅱ.エコール・ド・パリ」「Ⅲ.ダダ」「Ⅳ.シュルレアリスム」の4部から成っています。肝心のエレクトーン具合は、導入部で中村幸代の「Space Bee」っぽい忙しなく跳ねる音が聴けてそれだけで満足。あー、後は「映像の世紀」のサントラっぽいような…?こういった実験曲が入っているとアルバムの冗長な印象がグッと引き締まるというか、ニューエイジ解釈も全然可能になるというか。12分ある楽曲なのでそう頻繁に聴くというもんでもないでしょうが、ともかくこの手の斬新さが顕著に散りばめられたアルバムだったらもっと好盤だったかなぁと少し惜しい気持ちです。


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フレディ波多江「ミスター・グッド・ガイ」(2013)

冒頭に挙げた件の某激ヤバDJイベントに特設されていた「100円CDコーナー」にて入手。イベントの告知ツイートにこのジャケの画像が映っていたことと、どうしてもこれは気になるでしょ‥ということで半ば「諦め」のような気持ちで購入しました。しかしこれが「俗テクノ歌謡」してまして、100円にしては中々の当たり盤だったのです。

フレディ波多江はその名前から察し得るように(ビジュアルは谷村新司なものの)Queenのカバーバンド「Gueen」のボーカルを務めつつ、普段は大手楽器メーカーで国内マーケティングを担当するというなかなかおカタい職業の方。しかし国内のQueenファンからはそこそこ知られた存在のようです。彼のTwitterを覗いてみたら知り合いがフォローしてたりと謎の縁。本作はそんな彼のソロアルバムとなっております。全6曲収録でそのうち2曲がリミックス、尚全ての楽曲名に「愛の」が付きます。まず、私はQueenリスナーでないので楽曲がQueenにインスパイアされたものかどうかについては一聴したのみでは殆ど判断できませんでした。③④がシンフォニックロックバラードものなので若干それっぽいのだろうか…などと思う程度。どちらかと言うと①②の「俗テクノ歌謡」がQueenのコピバンをする人間との解離・意外性を感じ楽しめました。①「愛の救助隊」はいきなり主張の激しい安っぽい四つ打ちから始まり、「イェーイ!」との雄叫びに続いて歌われます。この時点で「イ・パクサの旧譜か…?」と思ってしまう位にはポンチャック的。歌詞の内容も安直に「愛を、君を助けるぜ!」のみ。玉置浩二イズム。安テクノロジーで作られたスーパー戦隊のOP曲のようでもあります。それにしても波多江氏の声、フレディ・マーキュリーのそれとは異なった、ヘナチョコ高音域なんですよね…。これも安っぽさを強調する要因。大好物なので一向に構わないのですが、全体的に2013年の産物とは思えません。②「愛のマニアック」、これもタイトルヤバ過ぎですね~。まずイントロがなんとなくKRAFTWERK「Radio-activity」のパクり。ロボボイスまであります。そこから荒仕事な転調と共に「イェッイェッイェー!」の雄叫びと共に四つ打ちになだれ込みます。電車の中で聴いていてちょっと笑ってしまいました。こっちの曲はギターソロなんかもあって味付けが若干①より格好いいかな?なんて一瞬よぎりますが波多江のヘロヘロボイスで我に帰る、というような感じ。歌詞はマニアックたはちょっとズレて「愛の形に決まりはないさ」という暗にゲイへのリスペクトか?と察せ得るもの。そして気になるリミックス2曲ですが、どちらも①のリミックス。びっくりするのが両者共にボーカルをほぼ排除したインストトランスものになっているという点。原曲の面影は完全に影を潜め、そこそこ低クオリティなものの安牌のような気もするトランステクノです。⑥の(HI-C REMIX)がタブラを抜いたオマール・スレイマンのような気もして面白い…ような…。考えすぎかな。

ブックレットには波多江の半生やアルバムの制作秘話についての寄稿や波多江のステージ上での写真が載っていたりと、波多江ファンには堪らない仕様となっておりますね。

感想は「100円なら全然いい。」に尽きます。以上。


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佳山明生佳山明生のデュエット・スペシャル」(2015)

渋谷レコファンにて100円で入手。渋谷レコファンといえばあとわずか、2020年10月11日をもって閉店してしまうことでディガーから再注目がなされているレコード店です。私もこちらが大好きでちょくちょく利用させていただいているのですが、いざディグをするとなると正直なかなか芳しい成果を挙げられないんですよね…。他のディガーの方々が純邦楽ニューエイジの邂逅盤のようなものだったりイカれた自主製作盤を発掘しているのをTwitterで見ると「私も!」とレコファンに駆け込んでしまいますが、100円コーナーを凝視しても「毒にも薬にもならないアルバム(思えるもの)」しか見つからず…。この時も諦め半分で棚を見つめていました。そんな中で唯一抜けたのが本作。どういうことなんだよ。

1977年にリリースしたムード演歌「氷雨」が5年後の1983年に大ヒットし「ザ・ベストテン」(TBS)にチャートイン。現在は大御所としてひっそりと定期的なシングルリリースを継続している佳山。Wikipediaによると芸名は美輪明宏による命名だそうですがこれ如何に…。そんな彼には元々デュエット曲がちらほら存在していました。本作の①「泣きながら夢を見て(with貴美)」は彼の2番手の代表曲で、何故か美川憲一とのデュエットバージョンもリリースされたことがあります。件の「氷雨」も歌番組なんかではたまに女性歌手とデュエットされますね。そして本作は佳山が、彼と縁深い女性歌手とデュエットした楽曲を集めた企画盤です。

まずジャケが最高…。Twitterでも言及しましたが、ベテランホステスの顔写真をHPから切り貼りして佳山の周りを円環させた結果dangdutのカセットテープのジャケっぽくなってしまった傑作アートワークです。ベテランホステス、いえデュエット相手である女性歌手たちですが、正直誰も存じ上げません。お名前を列挙しますと鮎川ゆき・瀨生ひろ菜・梓夕子・藤みえこ・荒井千津子・おりん・伊藤さくら…し、知らね~。勉強不足で恐縮です。一応調べてみるとアマチュアの方々もちょくちょくいますね。

収録曲を見ますと佳山の持ち歌とムードデュエット歌謡の代表曲が織り混ぜられた様相です。本作の先行シングル②「かけおちスペシャル」はミドルテンポロック歌謡っぽく、サイケデリックなギターサウンドがちょくちょく介入してくるのが良いですね。

 

https://youtu.be/kA0M_dv8knA

佳山明生+瀬生ひろ菜「かけおちスペシャル」

 

③「氷雨」は「スペシャルバージョン」と記載のあるように、佳山と3名の女性歌手の合計4人で歌唱されたよくばり仕様です。この曲、主人公が完全に独りなのであんまりデュエットしてほしくないんですけど…。サビの大合唱には笑ってしまいます。⑥「別れても好きな人」のカバーはデュエット相手の荒井さんのマイクのエコーが強すぎるのと歌声のベテランスナックママ感とで、シルヴィアに全然敵わないなぁという感想です。⑦「新宿そだち」は、一緒に歌っているおりんさんの顔が恐すぎるの一点です。⑧「今夜は離さない」は中々良いですよ。伊藤さくらさんの顔写真は売れないソプラノ歌手のようですが声の艶が楽曲に合ってます。本家の橋幸夫と安倍里葎子バージョンよりもずっしりしたクオリティ2なってます。そして皆さん、吉報です!本作には全曲の女性用カラオケバージョンも収録されていますので、収録曲は全部で16曲と大ボリューム!やったね!

私がたまたま佳山明生が好きだったこともあり個人的には当たり盤ですが、通常の価値観で言いますとしっかりネタ枠だと思います。これがレコファンでの最後のディグにならないように閉店まで足繁く通いたい…。

 

玉石混淆な収穫まとめ その11

東京の自粛要請がほぼ解除されて早ひと月。やっとこさ図書館ディグもできるようになってきました。渋谷レコファンの消失予告が出てしまった今、私がディグの主戦場と言えるのはもう図書館しか無いのかもしれません。ブックオフでの収穫も最近不発だし…。とはいえ都内感染者数も再び増加してきていますし、図書館にすら行けないディグ不可状態に再び陥る時もそう遠くないのかもしれません。士気落ちるなぁ…。そんなわけで(?)今回は図書館で入手した2作をご紹介致します。

 

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ロス・インディオス&桑江知子「Romance」(1995)

世田谷区の図書館にてレンタル。発見したときは驚きました、「私のハートはストップモーション」でお馴染みの桑江知子がロス・インディオスに参加していたとは!「別れても好きな人」「それぞれの原宿」等でシルヴィアとデュエットしたアーバン・ラテンムード歌謡の印象が強い彼らですが、実は女性メンバーは現在に至るまでかなりコロコロと変わっています。その内桑江が参加していたのは1993-1998の5年間。とはいえYouTubeに歌唱動画などはアップされておらず、本作の存在が現時点で唯一このジョイントを証明するオーパーツとなっています。ジャケ、かなり「いい天気」の時に撮ってますね~。皆いい顔してる。ロス・インディオスのキャリアの中でも恐らく最多の7人構成で画面がパンパンです。

曲目に往年の名曲セルフカバーが存在しないところは本作の◎ポイントです。桑江バージョンの「別れても好きな人」、恐らくステージなんかでは観られたことでしょうが、それが収録されていないことにより(良い意味での)珍盤度が増していると思います。参加陣は荒木とよひさ三木たかしのような演歌人脈の大御所から、「ロンリーチャップリン」「寿司食いねェ!」等の作詞を手掛けた岡田冨美子や大アレンジャーの若草恵、徳永英明との癒着でお馴染み(?)の坂本昌之、とそれなりにバラエティー豊かです。それもあってか、本作を一聴して受ける印象はあの往年のムード歌謡とは一線を画しているように感じました。とはいえ1995年感もそれほどでなく、1992年くらいのショボくれかけたアーバン歌謡をややゴージャスに焼き直したような…?しかしこれが結構良いんですね。あ、あと勿体ないのは、10の収録曲中半分の5曲が桑江のソロで、デュエットは4曲にとどまり、ロス・インディオスの看板である棚橋氏とのデュエットは僅か2曲のみという点。このせいで二組のジョイントアルバム、寧ろ「桑江知子、ムード歌謡を歌う」とかいう企画ものまがいの印象が強くなってしまっています。全曲良質でそこまでダレていないので文句のつけようがありませんが、もう一枚デュエット主体の作品を出してくれていても良かったのかな…と。

良盤なのかそうでないのかあやふやなコメントばかりでアレなので内容にも触れていきます。先行シングルがリリースされた1「Destiny~最後の彼氏~」は、いきなりロス・インディオスの既成イメージから逸脱したジェネリックテレサ・テン歌謡。エレピが切なく鳴く様やバラードものにおけるベタを突き進むメロウ構成は桑江の歌の上手さをしっかり引き立てているように感じます。遥か以前紹介したシシリア「香港ハーバーライト」の俗メロにも近いですね。とか思っていると2「いまさら赤い薔薇」は初っぱなから「ふたりきりのビアガーデン(「ハートカクテル vol.1」)」の松岡直也か?と聴き違うようなド・ラテン歌謡。BPMも早めで普通にクラブ使いしたい隠れた名曲。本作中では個人的にはベストです。アレンジャーは西木栄二という、フォークバンド「猫」やシティポップバンド「カーニバル」に在籍していた方だそうです。のりピーの「ノ・レ・な・いTeen-age」の編曲も彼、なるほど。彼の名アレンジは6「東京楽園(トウキョウパラダイス)」でも光ります。こちらは桑江とドラムの東郷太郎・本作からの新メンバー三崎一平の三名による歌唱。しかし2と同様ラテン風味の味付けが丁度いいですね…。1995年にも関わらずウォーターフロント周辺しか登場しない東京ソング、貴重です。スナックで歌いてぇ~。チャゲアスじゃないよ!な7「ひとり咲き」も、落ち着き払ったラウンジ気味ラテンが妖艶でお勧め。完全にポップスとは別次元の桑江の「上手」な歌声に惚れ惚れします。ホントに丁寧に歌う人だなぁ。

ロス・インディオス作品の中でも、また桑江作品の中でも比較的図書館における所蔵が見つけやすい作品なので聴くのにそれほどハードルは高くないのではないでしょうか。中古市場ではほとんど見たことないですが…。スナックをはじめとした-夜の街-に行くのが世間的に憚られる昨今ですが、だからこそ今求められているのがこの手のアルバムなのではないでしょうか。ぶっちゃけ今年のベストに入りそうなくらい好きです。

 

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陣内孝則「旋風児」(LP:1982 CD:1995)

大田区の図書館にてレンタル。福岡県出身で、めんたいロックバンド「ザ・ロッカーズ」のボーカルとして1980年にデビュー、2年後のバンド解散後には俳優業もスタートさせ「君の瞳をタイホする!」「愛しあってるかい!」等のトレンディドラマの名作に主演。現在も俳優活動と音楽活動を平行させて活躍しています。ですがやはり大方では俳優としてのイメージが定着し切っている印象ですね(蛇足ですが、自粛期間中は上記二作のドラマをTSUTAYAのレンタルで初めて観ました。久しぶりに通しでドラマ観た…)。

本作はそんな陣内のソロデビュー作。意外にも入手困難なようで、中古市場にもそれほど上がっていません。またもや図書館の恩恵に与りました。内容としては8割方は大したことありません。60年代を引きずったような舶来ロックンロールの体現サウンドに陣内の「俳優としての声と全く同じ歌声」が重なり、イナタくこっ恥ずかしくも嫌味のない作風となっています。シティポップなど皆無。シンセなんかもほとんど出てきません。予想通り。

では何故こんなものを借りたのかと言うと、小林旭のカバーが2曲入ってるからなんですね。希代のマイトガイである小林旭の唯一無二のコミック歌謡「ダイナマイトが150屯」「自動車ショー歌」がカバーされています。陣内は小林の信奉者で、「日本ロックの原点」として「狙って」カバーしたようです。「自動車ショー歌」の方はソロデビューシングルでもありましたが、車名が列挙されまくる歌詞ゆえに歌番組や有線で殆どかからず売れなかったそう。小林がスカパラとコラボし「アキラのジーンときちゃうぜ」をリリースしたのが1995年ですからその遥か13年前のアキラ節再評価となります。ちなみに甲斐バンドが8th「破れたハートを売り物に」で「ダイナマイトが150屯」のみをカバーした翌年でもあります。植木等大瀧詠一に担がれてリバイバルしたことを思い出しますが、小林もまた大瀧が大ファンだった人物なんですね、ここでは直線的には無関係ですが若干キモいほど似た流れ…。ちなみに陣内は後に小林と映画にて共演を果たしたり「美空ひばり物語」というドラマで小林役を演じたりしています。売れなかったのに演じさせてくれるのか…。

「ダイナマイトが150屯」は大きな変化ではないものの、必要最小限のロックンロールアレンジで、金管楽器主体である種「日本臭い」原曲の印象とは確実に別物となっています。「自動車ショー歌」は「陣内の自動車ショー歌」と改題(「孝則の」じゃないんだ…)され、詞も一部変更。特に「ここらでやめてもいいコロナ」が、最初期に使用されていたものの当時「要注意歌謡曲指定制度基準」なるものに抵触し変更させられた「ここらで一服シトロエン」に戻されています。アレンジはかなり(ロックなるものにおいて)大人しくなった印象です。爆走感のあるアキラバージョンに比べると、一般道を静静と進んでいるような…。YouTubeに一番のみを歌った動画が上がっていて、その印象に引っ張られているのかもしれませんが…。歌唱が陣内の癖が特に強いですね。

https://youtu.be/KZBq5GPxfv0

「陣内の自動車ショー歌

 

他だと4「スリップダウン」が若干ニューウェーブっぽくて気持ちいいかなぁ、とか6「ロックンローラー数え歌」がキャラソンじみていて彼らしいな、くらいの感想で特筆すべき部分はありません。ロックンロール俗盤としては面白いと思いますが何しろ専門外なので…。聴けて良かったです。

第14回 Martin Denny「EXOTICA'90」

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Martin Denny「EXOTICA'90」(1990)

わーい皆大好きマーティン・デニーだー。悠久のトロピカルサウンド、エキゾチカの大御所である彼のラストセッションアルバムです。当時現役を退き隠居生活状態だった彼を引っ張り出し、東京でヤン冨田が、ハワイ・ホノルルで盟友ジュリアス・ウェクターがセッションをプロデュースして制作された作品だそう。収録曲としては代表曲「QUIET VILLAGE」「FIRECRACKERS」の再録を中心に新曲を数曲織り混ぜている感じです。これ、中野のブックオフで見つけたんですが驚きましたね。中野のブックオフ、CDコーナー自体激セマで基本的に何も掘り出し物が見つからないじゃないですか(謎の同調圧力)。この盤の存在すら知らなかったしマーティン・デニーの音源自体そんなに改まって聴いてこなかったので買っとくか~となりました。

まず、(ネット上でも既に書かれてる方がいらっしゃいますが)音が当然ながら彼の全盛期に比べて遥かに綺麗で広がりがありますね。そのせいでエキゾチカ特有の「物語上・架空のジャングル内における高揚感の連想」のようなものは薄れているようにも思います。でも流石、聴いていて実に気持ちいいです。正しいRevisionというか、廃サロン的には理想の音楽ですね…。ホノルルセッションに関してはそれ以外に言及したい点もないんですが、東京でのセッションは加えて来日記念なのか「お祭り感」が強いです。レコーディングには日本の大御所が多数参加し「コーラス&ハンドクラップ」などというやってもやんなくても良いんじゃないか、という仕事をしていっています。面子をかいつまんで列挙してみますと、あがた森魚いとうせいこうS-KENホッピー神山桑原茂一小西康陽近田春夫・サンディーetc.の25名くらいといった感じ。加えて近田春夫は4「SAKE ROCK」でシンセとベースを、サンディーは6「CHOTTO MATTE KUDASAI」(この曲廃サロンで3回目の登場ですね…嬉しい…)でボーカルを担当してますね。一応15「FIRE CRACKERS」にも触れておくと、高揚感を煽るような前奏が追加されていたりオーケストラ・テクノっぽいアレンジになっていたりとやたらゴージャスです。このくらい変化があった方が聴きごたえがあって面白いと個人的には思いますが、エキゾチカを本腰入れて好いている方々にどう思われるかは謎です。この曲は東京セッションなのですが、最後に前述したような面子による三本締めが行われています。やっぱりセッションという名のお祭りだったんだなぁ。

全体の質感から、エキゾチカはテクノなんだという事実が再レコーディングで浮き彫りになった作品だったのだと感じました。無国籍・無時代な音楽ではありますが、ただ科学が・楽器が進化してしまったんだなぁ…と。凄く興味深いアルバムでした。

ホノルルセッションで撮られたと思われるマーティンたちの写真が可愛かったので最後に載っけておきます。おじいちゃん…。
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https://youtu.be/VbyuHreBHYs

Martin Denny「Burma Train」

一曲だけ試聴できるものがあったので載せておきます。

第13回 明日香「橋 vol.Ⅱ」


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明日香「橋 vol.Ⅱ」(1994)

(ネットで拝借した画像がサイン入りだったのですが、手元にあるものはサイン無しです)

川崎のブックオフにて290円で購入。アーティスト名「明日香」、潔い。ジャケを見る限り読み方は「アスクァ」?やっぱ潔くない。この方全く知らなかったのですがジャケ写が同時期の今井美樹っぽいですね…。んでタイトルが「橋 vol.Ⅱ」とシンプルかつどことなくVaporwave味を感じます。この明日香さん、1982年にヤマハ・ポピュラーミュージックコンテスト(ポプコン)で優秀曲賞を獲得、同年には彼女の代表作「花ぬすびと」で世界歌謡祭グランプリを受賞しデビューしたようです。経路がまんま中島みゆき。しかしリリース物は極端に少なく、本作含めて純粋なオリジナルアルバムは5枚だけでした。そのうち本作は「橋シリーズ」と銘打ったミニアルバムの連作の2作目。と言っても2で終わりなんですが。尚この明日香さん、2013年にお亡くなりになっています。彼女のホームページが現存しているので諸々気になる方はご参照下さい。

http://www.asqua.com/index.html

 

https://youtu.be/-CfaxtAxLOo

明日香「花ぬすびと」

本作収録曲ではありませんが歌唱映像がありました。こんな感じの声です、が本作中では何故かも~っと甘くなっています。後述。

 

で、内容ですが「悪くない」です。屈託のない笑顔から中村あゆみ(今井はどこ行った)系のハスキーボイスで元気ソングまみれという想定もしてましたが全体的に穏やかな曲調です。当然ながらピアノが前面に出てますよね。シティポップ皆無、バブリー感も薄いですが全6曲というコンパクトさ故にそれほど飽きのこない作品となっています。編曲者が5を除いて「明日香プロジェクト」になっているのが良い。以前紹介した木屋響子の「Kyoko Sound Laboratory」っぽい。

1「夢 追い求めて」は小気味良いラテンメロウ。シンセのパーカッションがスーパーでお惣菜を入れてあるプラ容器くらい軽いな。彼女の芯のないヌメヌメした歌唱がどこか色っぽいです。今井優子の妹、彩裕季をバグらせた感じ。3「誰もいない部屋」はトラックだけ聴けば本作中では唯一のミディアムダンスチューン。ですが歌詞はタイトルから察せる通りのウジウジ系なので、詞・曲・ボイスの三竦みギャップが面白い。演歌みたいなタイトルの5「ふるさと列車」、急に舌足らずな歌い方になるな。そのせいか純情な歌詞の癖にヤラしさが増してしまっています。オルゴールみたいなチャラチャラした入りやアコーディオン?の色付けが余計な気が…。でもまぁ良いですよ。

安価だし声はそこそこ好みな感じだし、それだけでめっけもんなんですが、アルバムとしてトータルを考えたときには1と3が収録されていて良かったな、という程度のアルバムでしょうか。510円の棚にあったものを買ってしまってたとしたらガッカリしてたかも。ポプコン枠でリリースされたベストアルバムが渋谷のTSUTAYAにあるみたいなので気が向いたらレンタルしてみようかと思います。

玉石混淆な収穫まとめ その10

家に籠りっきりで暇な今こそ玉石混淆レビュー。10回目記念ということで今回こそは名盤に絞りましたよ。導入ゼロでいきなり始めていきます。

 

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光岡ディオン「アクエリアム」(1991)

大田区の図書館にてレンタル。ハーフタレント・コメンテーターとして活動する光岡ディオンの唯一のアルバムです。彼女の夫はThe Boom宮沢和史、息子も芸能界で活動中。

本作、先日Twitterでななきさとえさん(元MAHALIK HALILIのボーカリスト。先日ソロ2ndアルバム「パンドラの呪文」がCDで再発しました。おめでとうございます)にオススメしていただいた盤でございます。廃サロンのシシリアのアルバム「香港ハーバーライト」の記事をご自身のTwitterにてご紹介下さったななきさんにお礼をしたところ「本作と聴き比べると面白いですよ!」と。調べるとどちらにもななきさんがご参加されていまして…。どうやら2作の参加陣の被りが多いらしく、楽曲に関しても「香港ハーバーライト」「ちょっと待って下さい」の2曲が被っています。シシリアのアルバムが大変お気に入りな身からすると「これは聴かねば!」な案件。即図書館サイトで取り寄せたという訳です。というか、このジャケなら聴かない手はないでしょう。トロピカル過ぎて現地(どこ?)の歌謡盤が霞みそうなインパクト。俗名盤の匂いがビンビンします。トレンディエスノな雰囲気とはまた違った濃さ。

一聴したところ、全体的に常夏の穏やかさ漂う、BPM抑えめ(ディスコ歌謡など皆無)の平和なユートピアアイランド作品という印象を受けました。安西史孝氏による全曲アレンジが俗と上品を優しく往き来している。光岡の声は天真爛漫でキュートな、悪く言うと「ガールズポップ歌わせていたら中庸で収まって終了かも」な危うさのある質感。しかしながらハーフタレントという特性?を活かした南国コンセプトな本アルバムの中では、声量の加減が良いのか心地よく聴けます。技巧的でない故の無垢さが正しく作用している。

いきなりチャチャチャで始まるのがいいですね。1「マーメイド・チャチャ」は家にいながらにして「南フランスの小島のマーメイド」気分よ!という可愛らしい楽曲。ななき氏による一戸建てファンタジアな作詞がなんとも「らしい」というか、穏やかに変で最高です。ななき氏は2「南極のエンジェルフィッシュ」でも作詞を担当しています。こちらは水族館デートの曲ですがキュートの中に潜む独特な女の子の価値観が味。ガールポップライクな能天気さを纏う歌詞にボッサなアレンジが「正しい」です。タイトルの文言がBメロに一回だけ登場する曲好きなんですよね…。ハワイアンカントリー(初見の概念)な3「ブルー・ムームー」、タンゴなのにエキゾチックな4「Somewhere in Time」を経て次は野村義男(あのよっちゃんなんですかね…)作詞の5「太陽san-sanパラダイス」。アレンジ自体は奇をてらわない正統ハワイアンですが歌詞は一言で「エアコン大好き」というもの。タイトルどこ行った?でも愛嬌あるなぁ。フーミンのデビュー曲じゃないよ!な7「ズビズビズー」は森山加代子という歌手のカバーなんですね。安井かずみが「みナみカズみ」名義で日本語訳。タイトルを何度も繰り返して歌唱しているという体裁の楽曲ですが、どうにも架空のノスタルジックを誘う南国恋慕な好カバーです。アコーディオンの作用?

 

https://youtu.be/i0EBXF8ZoY8

森山加代子「ズビズビズー」

折角なので元のカバーをどうぞ。

 

件の9「香港ハーバーライト」ですが、アレンジはシシリア版よりも豪勢でガチャガチャしています。「オールドスクールチャイナ」なベースは同じですがそこそこ印象変わりますね…。光岡の歌唱も他の楽曲よりも押さえ目で終盤にもってこいな加減になっています。シシリア版を聴いている身からすると、無名なオリジナル楽曲なのにも関わらず二人も歌ってることから優しい曲調も相まって「チャイナの唱歌かな?」と錯覚してしまぃす。ラストを飾る11「ちょっと待って下さい」もシシリアと共通で、これもまた良い。シシリア版のカタコト具合はエキゾチズムの権化で素晴らしかったですが、ボーカルの違いでグッと来方が変わりますね。こちらの方が伸びやかで、シシリア版の迫真さが抑えられていることから聴きやすい。シシリア版、理由も証拠もない「ごめんなさい」感があるんですよね、男だからかな…?以上の2曲、南国ナイズなアルバムの中で異質なはずがメロウものとして溶け込んでいるのが意外。

いやぁ、良いアルバムでしたね…。ワールドミュージックブームの最中に生まれた日本産エスノ歌謡はこれまでの私のディグの中でもちょこちょこ散見されてきましたが、ジャケの完璧さとそれに反して楽曲の圧の程よさから考えるとかなりの名盤だと言えます。ここまでの作品を自力で見つけられなかったのは惜しいところですが、出会えて良かったです。改めてななきさん有り難うございました。

 

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パウロ・セザール・トリオ「ボサノバ・ブリージン~アイドルのバイブルをボサノバで」(1991)

砧のブックオフにて290円で購入。タイトル通り70-90年代の女性アイドル歌謡ボサノヴァアレンジ作品です。ボーカル無しのインストもの。ヒット曲の成れの果てのひとつである伝統芸能こと「ボサノヴァアレンジ」ですが、素材がJ-POPではなくアイドル歌謡であったことやシャープな安西水丸のようなタッチのジャケに惹かれ手に取ってしまいました。カクテルが題材のジャケ、良いですよね…。ブックレットを開くと曲の解説やクレジットを差し置いてキュラソ(リキュール)の解説や「ボサノバ・ブリージン」なるカクテルの作り方が載っていました。こういう「音楽と併せてみてはいかが…」なオマケ、大好きです…。

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パウロ・セザール・トリオはネット検索の限り本作とクリスマスソングのアレンジアルバムを発表しています。トリオを率いるパウロ・セザールは小野リサと活動を共にしていたキーボーディスト、パウロ・セザール・ゴメスのことかと思われます。あとはアレンジャーとしてアニメの劇伴の仕事が多い荒川敏行宮崎慎二が参加。それ以外の情報はあまり分かりません。

えてして馬鹿にされがちなボサノヴァアレンジという手法ですが、本作はなかなかクオリティが高いと思います。演者が匿名でないことから自信が窺えなくもなかったのですがここまでとは。シンプルながら貧相でもない楽器・音数、無理なく聞き流すことも浸ることも厭わないアレンジ具合。「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」という漫画の存在を思い出すまでもなく、カフェよりもダイニングバー以上の場に対応可なクオリティを全編通して保っていると思います。2「MUGO・ん…色っぽい」7「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」のような、原曲が打ち込みまみれな楽曲がそつなくボッサ化されているのは凄い。サポートのフルートによる妙でしょうか。楽曲によっては「JAZZとボサノヴァの違いって…?」という問いに発展するようなものもありますが、単一の作品として聴くには問題ナシ、ですかね。あ、でも8「艶姿ナミダ娘」は入りが完全にフラメンコ。別にいいけど。選曲は聖子・明菜が3曲、ミポリンと百恵が2曲、その他は一曲ずつです。捻り無しの順当なところかと。

カバーだと意識せずにふとした時に聴いたとしたら「普通に良いボサノヴァだなぁ」と思ってしまうほど無理のない作品。私は初めて見つけて購入しましたが、さして入手困難ということもなさそうなので安価でしたら買ってみてもいいかと思います。結構愛聴盤になりそう。


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ペク・ジヨン「Baek Ji Young 2集 Rouge」(2000)

こちらも砧のブックオフにて290円で入手。韓国の歌手ペク・ジヨンのアルバムです。本国ではメジャーなアーティストっぽいですが日本ではそんなにかな?私も存じ上げませんでした。のっけから少し脱線しますが、最近のブックオフの290,510円CDコーナーで邦楽をディグろうとすると、「J-POP あ行」の前に「アイドル」「ヴィジュアル系」「K-POP」が構えてますよね?前2者はここ10年以内の新しめな盤が殆どなので好み的にスルーするのですが「K-POP」のコーナーはそうでない2000年前後の盤もごくたまに潜んでいるのでウォームアップも兼ねて一応目を通すようにしています。もちろん韓国ディスコ歌謡「ポンチャック」目当てです。本作も色味のどギツいジャケから漂ういかにもな2000年感に打ち込みの重めなポンチャックが収録されているのでは、と軽くYouTubeで試聴した後に購入。聴き流してみたところ、そこそこの名盤でした…。

とはいえ全体的にはこの時代のK-POPと似たり寄ったりな作風なので特筆すべきところが少ないのも事実。そもそも私自身K-POPに明るい訳でもないんですが…。ここで触れておきたいのはやはりリードチューンである3「Dash」と5「Sad Salsa」。どちらもPVが制作されていますが、音にしろ映像にしろポンチャックの掟を遵守していて良い。3は泣きメロな仕組みなものの打ち込みの圧が気持ちよく、おまけに間奏でKONTAっぽいサックスが小気味良く吹かれています。ポンチャック(その意識が本作に込められている訳はないのでしょうが)にサックスが介入しているのを初めて聴きました。PVは安っぽいスパイ映画オマージュ?嫌いじゃないですこういうの。

 

https://youtu.be/X6cYhLZuLhI

ペク・ジヨン「Dash」

 

一方5はタイトル通りサルサポンチャック。いやーこちらもシンセが重い。どっしんどっしん言ってます。廃サロンの中で「打ち込みまみれで格好いい」というような評価をしてあるものは大体本作のようなレベルのものだと覚えておいください。やっぱり俗っていいなぁ。PVではベリーダンスの衣装?で踊り狂っていますね。

 

https://youtu.be/7dl9srk--dc

ペク・ジヨン「Sad Salsa」

 

尚本アルバムには件の2曲の「Club Cut(「ハードコアリミックス」のような意味合いだと認識しています)」も収録されておりお得。ビートがマシからマシマシになっているのでなにか物足りない時にいいですね。

その他触れてない収録曲もダンスものが多くて大満足でした。ブックオフで入手したアジア盤の中だとかなり当たりの部類です。YouTubeで大体聴けるので必ずしも所有している必要はないかもな本作ですが、どんな形であれ聴いてみていただけると面白いと思います。もっと気が向いたらポンチャックにも触れてみてね。


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「商売繁盛」(1995)

荻窪ブックオフプラスにて290円で購入。おなじみのニューエイジ・ヒーリングレーベル「Della」から発売された「マインドコントロールサウンド」シリーズのひとつです。本シリーズ、「集中力アップ」だとか「実力発」「プラス思考」等、潜在能力や感情に作用するテーマのものが多いんですが、一部極端に俗っぽい効果をもたらす作品も潜んでいるようです。「開運」「禁煙」等は知っていましたが、本作はずばりタイトル通り「商売繁盛」。ネット上に詳細な情報がないのは勿論、ソニーウォークマン用音楽管理アプリ「Music Center」に取り込んでもCD情報が登録されていませんでした。今までどれだけニッチな作品でも大抵のCD情報が登録されていたのですが…。アーティストや曲目も全く分かりません。

ブックレットを開きつつ聴くという段階に至るまで「聴く者が営む商いが繁盛するようになるのか…」と勘違いしていたのですが、一聴してそのあからさまなミューザック感を堪能して「あ、客に聴かせんのね」と気づきました。案の定ブックレットには「聴くと何か買いたくなります(概略)」との記載が。Dellaからリリースされているニューエイジ作品はどれも素晴らしいですが、こちらはしっかりジャスコテックしているように感じます。と言ってもオマージュとしてのジャスコテック作品と比べると当然実用的で牧歌的要素が強いのも確かで、決して大袈裟な展開のものではありません。スクリューさせればきちんとMallsoft化すること間違いなし。ちょっと昔の中流層向けスーパーマーケットにいる気分になれますよ。七福神ジャケに抵抗が無ければ見つけ次第拾ってあげてください。

 

蛇足ですが。この間仕事帰りに自由が丘のブックオフに行ったんですけど、あの店舗にしては久々に何もめぼしい物が見つからず虚ろな目で棚を見つめていました。そんな時中村善郎というボサノバアーティスト(恥ずかしながら知りませんでした)の90年代のアルバムが目につきました。何気なしにケース裏を見るとクレジットに木村恵子の名を発見。数曲にデュエットで参加しているようです。慌ててYouTubeで試聴してみるとやはり「Style」やケルカンでお馴染みのあの木村で間違いない。まー今日の収穫はこんなもんかな、と一応地元の図書館サイトで検索を入れてみると「所蔵あるじゃん…」。ディグでこれほど白ける瞬間も他になかなか無いかもしれません。隠れ名盤が2000円以上するのを発見したときくらいですかね。勿論タダで借りられてラッキー!なのは違いないのでしょうが、それ以上に「辛うじて一枚」収穫として持ち帰れるかもという時に出鼻を挫かれるあの感じ。結局全てが時間の無駄だった、で終わってしまうんですよ。入荷の入れ替わりがさして無い内に同じ店舗に2度行ってしまったときにも同じようなことが起こりうりますね。なので最近は交通費を費やしてでも少し遠めの地に赴いてディグをすることも増えてきました。無粋…。

ではまた次回お会いしましょうー。

玉石混淆な収穫まとめ その9

さて今回も玉石混淆レビュー始めていきます。Yu-koh以来ディグ欲が増進された気があって、こないだは中央線沿いのブックオフを、今日は世田谷奥地のブックオフをがっつり攻めてしまいました。お陰で積ん聴き盤の増えること増えること。やっぱり聴く時よりもディグ自体が楽しいっていうのはあるんですが、その割合をいい加減にしたいですね。買ったのに聴かないのは勿体ないですよ。と、自分に言い聞かせて5年くらいは経つんですが…。

話すことが特に無いのでコロナが与える廃サロン的ディグへの影響を。↑の通り中古屋には相変わらず足を運んでしまうのですが、図書館には全然行かなくなりました。現在都内の図書館の殆どでは有事(とか言ってはいけませんね)に対応した開館方法を採っており、基本返却と予約資料の受け取りしかできません。館内資料をディグるのは禁止。それでも普段から予約資料をごっそり受けとるのが利用方法の基軸な私なので実際それほど影響ないはずなんですがね。なんですが、最近なんだか図書館には足が向かなくて…。無論コロナの心配をしているのではなく、どうにも今図書館ディグの限界を感じてしまっている時期なんですよね。暫くは実店舗でのディグをメインでやっていきたいと思います…。今回紹介する盤も全て「購入」したものです!


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HACO「HACO」(1997)

渋谷のディスクユニオンにて500円で購入。HACOは1981年神戸発ニューウェーヴバンド「After Dinner」を率いた女性アーティストです。本作はそんな彼女のバンド活動停止後の米国レーベルから出たソロ作。After Dinnerって勝手にP-MODELやD-DAYの人脈だと思ってたんですが全然違うみたいですね…。バンド自体聴いたことなかったんですが、とにかくこの手のメジャーマニアック盤(?)にしては安価だったので購入してみました。

しかしこれは…アヴァンポップ全開な内容かな?1「Unguarded」は割かしポップで、デジロック化したSPY「女王陛下のチェスゲーム」のような趣だったので「オッこのノリなら純粋に楽しめそうだ」と期待しましたが、2以降はとにかく神妙で重い。打ち込みまみれなニューウェーヴを期待するとちょっと違うかもしれません。HACOのヘヴィな歌唱といいパーカッションやベースのアトランダムな構成といい、Phewや90年代のヒカシューの方が(広域な意味での)ニューウェーヴ界隈の中では近いかも。そう思って久々にPhew「アワ、ライクネス」を聴いてみたら記憶よりも重すぎて爆笑してしまいました。Phewってこんなオバケテイストだったっけ…?

1の他だと4「Sunday Virgin」が雅楽っぽくて好きです。基軸は日本~な音なのにトイ楽器が主張してきたり歌詞に「マカロニウエスタン」が登場したりと、そういうポエトリー楽曲かな?と思わせるような奇曲。

廃サロンディグでこのような「「聞く」でなく聴き込みたい」と思える作品を見つけてしまうと困りものなんですよね。全然次の収穫に着手できなくて…。でも全体的には大満足です。音楽におけるアヴァンギャルドって実は今かなりシーンや大聴衆の趣向から遠いところにあるような気がするんですよね。要するに「今聴きたい・聴いてもらいたい盤とは違う」ってことなんですが…。復権が待たれます。

https://youtu.be/7DEWd9mbbsA

HACO「HACO」


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Yamagata Tweakster「山形童子」(2012)

荻窪ブックオフプラスにて510円で購入。この間初めてこの店舗行ったんですが、いやーデカイですねー。入り口付近を見ただけだと「あれ…ここCDある…?」と不安に駆られてしまいますが奥に進むとしっかり広めのCDコーナーが。嬉々として3枚ほど購入しました。こちらはそのうちの1枚。

「Yamagata Tweakster」は2005年から活動する、Hahn Vad1人による韓国ダンスユニット。ハウスビートのシーケンスをバックにシンセで80'sディスコな味付けをしたシンプルな楽曲ばかりで、オフザケと社会派を横断する歌詞も特徴的。要するに向こうでも色物な存在みたいですね。こちらはそんな彼の日本編集盤。発売直後には来日公演も開催されたようです。

こう言っては難ですが、騙されました…。帯の「80's」「アリラン」「ポンチャック」、極めつけは「コリアンチルウェイブ」の文言に期待し過ぎた~。歌詞が「韓国語という音」としか捉えられない身としては全てを音として聴くしかない訳ですが、とにかく爽やかすぎて毒を感じない。そして冗長。「80's」という時点でBPMに期待してはならないと気づくべきでした。あのー、例えが非常によろしくないのは承知の上なのですが、俗好きなので砂原氏の諸作を聴くと若干物足りなさを感じることがあってその感じを本作からも受けました。作品自体は文句の付け所がないもののフックが無い、のかな…。

逆に言うと「珍妙なシンセウェイヴ」を期待する方にはうってつけ盤なのかもしれません。それほど希少盤でもないはずなので韓国電子音楽インディーシーンに触れてみたい方は是非(このレビュー読んで聴きたがる人がいるかどうかは別として)。がんばれアジア!

https://youtu.be/ktGqteU28hk


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三田村邦彦「OLD/NEW」(1987)

渋谷レコファンにて500円で購入。テクノ系が二作続いたので急に歌謡曲に寄せていきます。言わずと知れた大御所俳優三田村邦彦のCDですが、意外?にも入手困難で、少なくとも私の活動範囲の中でレンタルできるのが文京区の図書館に所蔵のあるベストアルバム一枚のみです。それには昨年訪れたジャスコテックイベント「ジャスコランド」にてどなたかがかけていた最高なブギー歌謡曲「君はパラダイス」や「追憶のサファイア」といったシティポップ寄りの楽曲も収録されていました。三田村の声、地味ながら染みるんですよね。歌謡曲に振り切った新沼謙治のような朴訥としたクールネス。ベストだけでなくオリジナルも1枚くらい聴いてみたいな、とは思っていたのですが、ネット市場だとどの中古盤もやけに高い!(8000円程度の価格設定が散見されます…)なのでジャケのつまらなさ(失礼)は置いといて500円という価格に惹かれて買ってしまいました。

結論から言うと、全体的に舘ひろし系のハードボイルドロック歌謡という趣なので個人的にはあまりお勧め盤とは言えません。社会のはぐれ者の恋物語…な空気が詞にも音にも充満してます。若干色付け程度にシンセが使われる場面もありますが、基本はバンドサウンドでシティポップといえる楽曲もなし。6「アース・ウィンド」は若干ニューウェーヴ擬きかな?と言える程度。あ、7「東京ホームシックガール」の作曲はソロ作やブランニューオメガトライブ(BNOT)でお馴染み新井正人(同姓同名の可能性アリ)です、が、特に特筆すべき点はないです。ストリングスアレンジの中庸な歌謡曲。悪くはないんですけどね。8「IN・じゃ・NIGHT」は作詞で世良公則が参加。世良が参加してるの、かなり本作の世界観っぽい。メジャーロック歌謡でまあまあ良きですが、タイトルはどうにかならなかったんですかね…。本作のリードチューンは2「ロンリーマン」なんだと思います、前述のベストにも収録されていました。伊武雅刀のソロ作「銀座の爆発野郎」とかザ・ヴィーナス「キッスは目にして!」を彷彿とさせる爆裂歌謡でフックはありますがいきなり「真夜中に行きたくなるオンナ」は無しでしょう…笑 聴いててかなりこそばゆいです。

三田村のベストを安価で見つけたら買ってヨシですがオリジナルは慎重にどうぞ、という結果になりました。彼の楽曲自体、YouTubeには必殺仕事人関連のものしか上がってませんので判断しにくいところでしょうが、悪いことは言わないので「君はパラダイス」あたりが収録されている盤を入手することをお勧めします…。


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増渕容子「気持ちをまわして」(製作年不明、80年代後半~?)

錦糸町ブックオフにて290円で購入。出ました、ネットに全く情報のない謎盤です。アーティストは増渕容子、レーベルは「林檎プロモーション」となっております。この会社が曲者で、どうやら当時20歳だった増渕が同年代の友人数名と共に立ち上げた今で言うインディーレーベル。音楽に拘らず、「芸能界のシステム(スカウトからの芸能界入り、金・コネ等)に頼らない、やる気と元気と熱意によって」タレント養成を行うことを目指していたようです。当初はかなり苦戦したようですが、やがて「素人によるプロダクション」ということで話題になり、所属していたきゃんみゆき(沖縄の人らしいですね)というタレントも幾つか仕事を得られたそう。↓がそのひとつですが、ヤバいPVですね…最高。カードがグルグルしてるとこ、病気の時の夢かな…?

https://youtu.be/meSuhXgCStw

きゃんみゆき「すたぁ行進曲」

きゃんのことは置いといて、本作はそんな林檎プロモーションの代表であった増渕によるソロ作。こちらの販売方法がまた変で、投げ銭方式でした。

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↑がブックレットの記載なのですが、要するに盤は無料配布で気に入れば指定の口座に振り込んでくれと。気に入らなければ他人にあげてもいいし、逆にもっと人に勧めたいのであれば振り込みの際所定の用紙に希望枚数を記入してくれれば送るよーとのことです。じゃあ元々本作はどこで配布されていたのか…?彼女が参加したイベントやレコード店なのか、全く分かりません。イベントといえば、YouTubeに上がっている数少ない関連動画の中に林檎プロモーションの原宿ホコ天でのPR活動の動画がありました。こういうところで手売りならぬ手配布してたのかな?

https://youtu.be/WL4sEfnhXOU

林檎プロについては以上です。というかこれ以上何も分からないんです。

 

さて本作「気持ちをまわして」ですが、この昭和~で地味~なアートワークにも関わらず手に取った理由は「ネットに全く情報がない」のも1つですが、何より外枠に関するところを除くクレジットが「シンセサイザープログラム…増渕容子」のみだったことです。「これは早すぎた宅録アイドル盤か!?」とフォーキーなジャケを無視して思ってしまった訳ですね。実際聴いてみるとThe宅録以外の何物でもないんですが、これは自作カラオケ音源に合わせて歌ってる素人レベルと言って差し支えないでしょう…。加納エミリじゃなくてジャガーさんかよ!1「田舎のねずみになりたい」の忙しないパーカッションとヘロヘロのボーカルの化学反応はある意味アイドルソングっぽいですがとにかく歌詞がね…。2「眠れない夜が」、一転なかなか良いかも…?ボサ風なパーカッション(とにかくパーカッションが際立つ作品ですね)にメロウな歌詞と展開。しかし高音が苦しそうだなぁ。曲名で唯一期待していた6「B級レディス」はマーチ調…。買い物上手だけど切ない女の子(OL?)の自虐ソングですが、あえてコミカルな歌唱にしてるのがむず痒いです。それよりは2や7「灯りのともる窓から」のような気取った歌い方の方が「普段歌うまいけど今日は酔っぱらってるからちょっと調子悪いかな?って感じの女の子」とカラオケに来た気分になれてまだ良いのに…。シンセ使いに関しては9「銀の天使」のイントロのズズズッぷりからも分かるように「ジャガーさんよりは牧歌的でないけど特に技巧的でもない」というレベル。勿論シティポップやディスコ歌謡は無し。

当時1人で音楽をやるって今よりも何倍も大変だったんだろうなぁ、ということを痛切に感じました。どこまで彼女の頭の中にあったものを再現できていたのかは察することすらできませんが…。もし彼女がDTM黎明期の現代に活動を開始していたならまた違ったんでしょうか…?そのようなことに思いを馳せられただけでも本作を買った意味がありました。聴きたい方、いらっしゃいましたらお送りしますよ。勿論投げ銭方式で。

 

という訳で、今回は図らずも殆ど「ビミョー盤」ばかりの紹介になってしまいました。これなら「中級」のままで良かったかもな。いや、名盤も結構引いてるんですけどレビューする時期を自分の中で逃してしまうんですよ!すっかり愛聴盤になってしまうとアレコレ認めるのが逆に億劫で…。次こそは少しは名盤を入れた玉石混淆にしたいと思います。では。

玉石混淆な収穫まとめ その8

いつもご愛顧有り難うございます。突然ですが今回より、廃サロンの「中級な収穫まとめ」を「玉石混淆な収穫まとめ」に改題いたします。これに伴い、中級盤(主観ですがそこそこ聴ける盤)の上下に位置する作品もここで紹介する方針に変更します。単純に「名盤を発掘しても長文を認めるのが面倒だから」というズボラな理由によるものなんですが…。どちらにせよ中級の頃から結構な名作を紹介したりもしてたので、今後とも何卒宜しくお願い致します…。

さて、2/22,23に東京・渋谷にて、Local Visionsとlightmellowbuによるジョイントイベントである「Yu-koh β」が開催されました。かつて京都にて開催されていて、その際は「いいなー」と指を咥えてTwitterのTLを見るしかなかったのですが、今回は生息エリア(渋谷に住んでる訳ではないですが)で開催してくださるということで当日まで期待に胸を踊らせていました。しかし実物の本イベントはその期待を大きく超え、さながら怪物のようなスケールでした。

私は2日目のCIRCUS開催の方のみに参戦しました(1日目のあの時間帯は何故かシェリー酒を飲んだりとそれはそれで優美な時間でした)。初actで発表時に騒然となったAOTQ氏のライブ(初音ミクシリーズや「e-muzak」のラインにある楽曲にクラブ対応な歪み・エフェクトを現場でかけていく進行が妖艶でした)を始め、念願叶って観れたwai wai music resort(妹さんであるlisa氏の第一声「よろしくお願いします」が、溜めのインストが一瞬スッと退いた瞬間に発せられたのが格好良すぎた…ライブ自体も勿論至高でした)や、下北Threeの無題イベント以来のTsudio Studio氏(森で暮らすさんを含めたバンドセットが豪勢で、しかもサックスマシマシの「Dragon Taxi」までやってくれて昇天しかけた)等の「ここでしかなかなか一堂に会さないタイムテーブル」なライブの応酬が当然ながら最高でした。更にlightmellowbuのトークでは体操の資料集?に付属のCDや、(そういえば)声優兼歌手だったTARAKOのアルバムを聴いたり、台車氏より「2020年はニュージャックスウィング(初耳)が来る!」との大予想が飛び出したりと…。「知らないCDを直で紹介してもらう時間久しぶりだなぁ」と思いつつかぶり付きで聞いていました。その中でも最も嬉しかったのはやはりイベント題通り「Yu-koh=友好」でしたね。anoutaのお二人、柴崎さん、柴田さん、鯔さん等これまでこの手のイベントで何度か邂逅を果たしている賢人たる方々と久々にお会いしたり、来場前にディグっておいたCDを見せ合ったりできて、音楽に関して「直」でコミュニケーションをとることの気持ちよさを本当に久々に経験しました…(「元アーティストに付く「エッセイスト」の肩書きは鵜呑みにするな」の至言、しかと胸に刻みました)。更に、tamao ninomiyaさん(相互フォローなの気づいてなかった…)や台車さん、はらわたちゅん子さん(前日に吉原・カストリ書房にて開催されていた展示を見に行った時に初めてお会いしてYu-kohでもお話できた)等、SNSでは既知なものの初めて直接お話できた方もちらほら。その他にも一方的に見知った顔ぶれのアーティストやトラックメイカー等の方々が普通に散見され、ちょっと意味合いに語弊ありそうですが良い意味で「業界のパーティー」という印象もありました。時間はあっという間に過ぎてしまいましたがその流れ行く時間はこれ以上なく上質で、主宰の捨てアカさんをはじめ今回のYu-kohに関わった全ての方々に感謝の気持ちで満たされました(私はいち客でしかないですが…)。と同時に「廃サロン頑張らねば」という気概も高まりました。今回も何名かの方々に「「廃サロンで手に取るCD」というブログをやっているながいという者です」と自己紹介しましたが、いつか「あーー、読んでますよ!」みたいな反応があると気持ちいいんだろうなぁなどと思ったり…。動機が余りにも不純ですが、ともかく糞みたいな境遇にあるCDたちをサルベージしていく行為が色んな意味で実る時が来ればいいなと切に願いますね、密やかなlightmellowbuフォロワーとして…。

Yu-kohの余韻に拘泥してしまう今日この頃ですが、中級レビュー改め玉石混淆レビュー始めていきます。


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ポチ!「お気に召すまま」(1992)

渋谷レコファンにて650円で購入。Yu-kohに着く二時間前に入手しました。いきなりちょっと高いですが前々から実店舗で引き当てたいと願っていた盤だったので歓喜しました。

名から判然としていますが、以前VHSをご紹介したビーイングのアイドルユニット「Mi-ke」の二番煎じユニット(あっちがミケならこっちはポチじゃい!という意地でしょう。そういえば美川憲一が名付け親の「タマ」ってのもいたような記憶が…)。高橋摩弥、石塚早織、山下智美という3名のモデルにより結成されました。1stシングルはザ・ピーナッツのカバー「恋のフーガ」で、本作のラストに収録されています。

まずジャケですが、バブリー好事家のツボをビンビンに刺激する良衣装に身を包む3人。左の二人の雑貨屋で売れ残った絨毯然とした衣装はともかく、右の山下の溶けた超合金のような服は何だ?あくまで褒め言葉ですが「気味が悪い」。ブックレットの中では3名とも肩パッドの入ったスーツを纏っているのですが、正直ジャケの衣装の方がインパクトはありますね。ブックレットといえば、この手の作品にありがちな3人のプロフィールも添えられています。それによると高橋はマドンナ、石塚はドリカム、山下はチャゲアス(特にASKA)のファンだそうですが、本作には一切関係ございません。良かった。

で肝心の内容ですが、これ名盤です。名盤だと思ってなかったので尚名盤味が増して聴けました。中庸なガールズポップのようなものを予想してましたがちゃんとハードめなディスコアレンジしてますね。Mi-keの面影を感じつつも同期のセクシーアイドルの楽曲(以前ご紹介したギリギリガールズ等)に見受けられるエッセンスもひしひしと感じられます。何より全体的にBPMが高めなのがいいですねー。雑なハウス歌謡もほとんど皆無ですし。頭の中空っぽでノリノリになれる作品です。1「恋はFiftyFifty」がいきなり凄い。1分にも及ぶ「ハウスデジロックミーツチョップド&スクリュー」(そんなもの存在しません)なイントロは圧巻。しかしながら全体を覆うどこか歌謡チックな進行は流石Mi-ke路線、と匂わせるものがあります。イントロが長いと言えば、ハイスピードダサダサディスコ歌謡な3「危険でごめんあそばせ」もやはり約1分のイントロから始まります。こちらはズンチャズンチャという年寄り臭いリフにギターのフィードバックノイズやジャスコテックなファンファーレ的シンセ音が絡む謎イントロ。感想にも「Dancing Queen」の世界一有名なフレーズや「パイプライン」のテケテケが引用されており、加えて「天まで届く梯子を持ってる男なんていないよね」「お金の成る木を持ってる男なんていないよね」等の「?」な歌詞の応酬。到底「格好いい音楽」からは縁遠いパーツで構成されていますが、あくまでベースが「ディスコ歌謡」なので今聴く分にはこの狙いっぷりが清々しくて何度もリピートしてしまいます。そんなの私くらいのものでしょうが…。4「Eternal Eyes」は本作唯一のスローに聴かせるタイプの楽曲。本作を紹介しているガールズポップもののブログの筆者はこの曲を絶賛していますが、確かにガールズポップの観点で言えばこの4が「唯一聴ける曲」になりそうなもの。他の楽曲がほぼ3名のユニゾンで歌唱されているのとは異なり、本曲は石塚のみで歌われています。彼女は3人の中で唯一ソロデビューしたみたいですね。歌は普通に上手いので聴き入ってしまうのですが、廃サロン的には聴き流してしまうタイプの楽曲。「「バカディスコ歌謡」のアルバムなんだから別に無くてもいいなぁ」と罰当たりなことすら思います。緩急付けるためには必要なんでしょうけどね。ずっと前に何故か聴いた「涼宮ハルヒの憂鬱」のキャラソンシングルのB面で、声優の小野大輔が歌う「ただの秘密」に似ているなぁくらいの感想でした…。(↓で「知らねぇ曲」と「知らねぇ曲」を比較してください)

https://youtu.be/GHC1s2S3ul8

https://youtu.be/TthwZJfwtL0

 

本作を「名盤」と申し上げましたが、ここら辺から早くもダレてくるのも事実。5「Like a Venus」は若干ハウス寄りでC.C.ガールズみたいですし(廃サロンで何度かC.C.ガールズを肯定的に取り上げましたが、なんだかんだ基本C.C.ガールズの曲は良くないです)、6「Sugar Moonが消えるまで」はTRFというティーバッグを三杯分くらい使った後の出涸らしのような印象(爽やかでそこそこ良いですけどね)。8「黄色いRentACar」はやたら音圧の強いハウス歌謡ですがスラップベースが主張し過ぎてて笑ってしまいます。そして大トリである「恋のフーガ」のカバーですが、プログレディスコティック!とちょけたくなる程の高速変調ぶりがキモチワルくてアガります。間奏のどこかで「恋のバカンス」のフレーズが引用されている、とブックレットに記載がありましたがイマイチ分からず…。原曲の戦後歌謡独特のクールネスのネジを少しずつ緩める代わりに高品位なジャンク性が高まっているような、要するにこれまたおバカな魅力溢れる可愛らしいカバー作品でした。1~3曲目のハードな音色が再起されていて一安心。

本作を聴いていると、結局大半をオールデイズ歌謡のカバーに徹したMi-ke織田哲郎その他ビーイングの懸命具合を感じてしまいます。この手のOLノリでオリジナルばっかりは普通に聴くにはキツいや。とはいえ賢くないディスコ歌謡は大好物なので総体的には満足です。2ndが大田区の図書館にあるようで、近々借りに行きます。


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Dream Dolphin「FORCE SOUNDS AND PSYCHEDELIC BEATS:愛の彼方へ」(2000)

三軒茶屋ブックオフにて510円で購入しました。「イルカジャケ=Vaporwave」というイメージの強い昨今なので、90年代にイルカがニューエイジやスピリチュアルのアイコンだったことを忘れそうになりますが、こちらはニューエイジな音ではありません。ずばりトランス・ユーロビート系。Dream Dolphinは女性アーティストNorikoを中心とした日本のハードコアテクノユニットで、具体的には「ハイスピード& アンビエント&ハードコア」を標榜しています。このNoriko、初期は渋谷系チックなスタイルでジャケやブックレットに写真で登場しつつハードコアトランスものを次々に制作していたのですが、数作後にはスピリチュアルに傾倒し始め、制作する楽曲も次第にトランスよりもアンビエントの割合が増えるようになります。アンビエントに関してはあのSUGIZOとのコラボもあり、ネットにも情報が多いことから「界隈」ではそこそこ有名なアーティストなのかもしれません。

そしてこちらは彼女の活動後期に発表された(ほぼ)最後の全編ハードコアトランスなアルバム。2000年前後といえば日本の音楽界でこの手の哀愁トランスが入り乱れていた頃で、駄作も山ほどありましたよね。ですが本作ははっきり言って滅茶苦茶アガります。個人的にゴリゴリなトランスやユーロビートに目がないという理由もありますが、こちらは音数の多さやもったいぶらなさ、パキり(と言うのでしょうか?)具合がとにかく振り切っていて最高。BPMが180近い楽曲もあり、正直これで躍るのは難しいでしょう。かといって頭文字D的な疾走感あるトランスともまた違うような…。まさしく「スピり故のハードコアトランス」としか表現しようのないアルバムです…。特に2「BABE RAINBOW Ⅱ COSMIC MOTHER」がエクスタシーに導いてくれる度合いでは最高です。もしテクノアイドルをプロデュースすることになったらこれを出囃子にしたい…。

Dream Dolphin、調子こいて幾つも作品を集め始めるとキリがないですし(アルバムだけで20枚くらいあります…)全体的には中庸なのでドはまりするのは危険ですが、ネタと本気の間のノリで見かけたら購入してみてはいかがでしょうか。ライト層のVaporwaveオタクたちを騙して高く売り付けるような奴らが現れる前に…。

YouTubeにまともな動画はありませんでしたが、Dream Dolphinのテクノ寄りの楽曲を纏めた動画(↓)がニコニコにありましたのでご参考までに…。

【作業用BGM】Dream Dolphin 好きな曲をまとめてみた -その2- http://nico.ms/sm4531933?cp_webto=share_others_androidapp


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Lio「LIO」(1980)

目黒区図書館にてレンタル。フレンチポップやワールド・テクノ歌謡が「分かる」方には今更?な盤かも知れないのですが、恥ずかしながらこれまでLioの存在すら存じ上げませんでした。「得意じゃないけど久々にフレンチポップものでも聴こうかな…」と図書館サイトで検索をかけた所本作が「フレンチテクノ」なる用語と共に紹介されており、YouTubeで彼女の代表曲「Le Banana Split」のPVを視聴したところ、加納エミリ「ごめんね」のPVの元ネタか…?となるほどローファイな映像で音もモロにあの頃のテクノポップ!これは聴かねばとレンタルしたのでした。

https://youtu.be/bsqLi9LfiwM

https://youtu.be/20DJlV2YstI

Lio、フレンチアイドルの肩書きを持ちますが実際はポルトガル生まれベルギー育ち。テクノポッパー、というかシンセポッパーの大御所バンドTELEXのプロデュースで↑のようなテクノ娘としてデビューします。1stである本作以後、テクノ路線は影を潜め、純にフレンチアイドルとして活動することになるのですが…。

全体的にペラペラのポコポコなサウンドが魅力な本作。何故これまで聴いてこなかったのか…とテクノポップから音楽を本格的に聴くようになった者からすると悔やまれますが「いつまでも聴いていたいか」と問われるとそうでもなく…。チープで湿気ひとつない軽やかなポップさ故の飽きは拭えません。ある意味完成され過ぎている。日本で言うと最初期の中嶋美智代のような…?いずれにせよ「癒し」であることに遜色ありません。

やはりリードチューン「Le Banana Split」が本作をどっしりと支えているのでしょう。もしYMO畑中葉子をプロデュースしていたらこうなったでしょうか…?そんな安直な妄想をしつつ、フーミンと彼女への豪華楽曲提供陣の関係性から生まれた作品たちにも近いものを感じたり。しかしフレンチポップである、という気概からしかこのような楽曲は生まれ得ないのでしょうね。フレンチポップや渋谷系の「らしさ」というものにしっくり来ないまま随分経ちますが、逆にオタク特有の「テクノポップ」の呪縛から解き放たれる日は来るのでしょうか。俗と洒脱の間で揺れ動くもの悲しさ、そんなことを本作を聴きながら考えています…。


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「肩こりスッキリ」(1996)

駒澤のブックオフにて290円で購入。ニューエイジレーベルとしてお馴染みDellaによるリリースものです。肩凝り、現代病(いつから?)の王様として万人を苦悩させていますが、本作を聴けば心身がリラックスして肩こりも治っちゃう!とのこと。やだー、そんな魔法みたいなことって…結果ありませんでした。なーんだ役立たずじゃん、と廃サロンから出て行かないでくださいね…。

本作、「Music of Esthetics」というシリーズの中の1枚で、他にも「素肌美人」「おふろ美人」「便秘すっきり」が存在し、それぞれ本作のようなフリー素材の女性がリラックスしている写真がジャケに使用されています。本作と「おふろ美人」はなかなかサービスショット的で、エマニエル夫人を彷彿とさせますがそんなことはどうでもいいです。

音の方は声を大にして「そこそこ良いですね!!!」と述べておきます。真偽の程はちょっと微妙なのですが、どうやら界隈で「ジャケは知ってるDellaニューエイジ」として有名な「強い精神力を養う」を制作したアーティスト(?)Mitsuhiro氏が手掛けたアルバムのようで、それにも近い中庸(褒め言葉)なピアノ・シンセによるヒーリングをもたらしてくださいます。
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モブキャラと化したロボコップ四人囃子「NEO-N」のアートワークの世界で全力疾走しているね。私も持ってます。

 

強いて言うなれば「強い~」よりもメリハリがなく、眠気をちょうどよく誘発してくれる音作り・構成になっているように感じます。あぁやった…、また通勤時に眠るための音源ゲットだ…などと油断してウトウトしていると5「Light Music」の「ファファファーーン!」というラッパみたいなそこそこ耳障りな音に眠りを遮られます。ここが惜しいかな…。別に起こすところまでやってくれなくてもいいのに…。そこを加味してもまぁまぁ、Dellaらしい真面目で嫌らしいところのない俗流アンビエント作品として重宝しますね。

監修の馬野詠子先生の当時の近影がブックレットに載ってます。ニューエイジものの監修者を見ていつも思うのですが、単純に音楽に関係ない世界で活動してる方が(ヒーリングものとは言え)アルバムに口出しするのって結構難しいんじゃないの?と馬野先生のグイグイ来そうな(失礼)写真を見て思います。

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馬野先生…

Yu-kohに関する前置きとポチ!についてのレビューが長くなってしまったので今回も4枚という少なさで終了します…。紹介していない名盤をまだまだ確保しているのでまた近いうちに…。