廃サロンで手に取るCD

ブックオフ・図書館・TSUTAYAなど「文化の墓場としてのサロン」で入手してきたCDを紹介します。

第6.5回 浜田翔子「はましょー☆あるばむ~お手当てしましょーこ~」

急に被害妄想的になりますが、ディグにハズレは付き物です。といっても高額盤を直感で買うことはまずないので、残念感も弱いです。むしろ笑っちゃうくらいのハズレを引くと嬉しくなることもしばしば。いや、ハズレなんで全然聴きませんけどね。今回は番外編としてそんな「笑っちゃうくらいのハズレ」をご紹介します。なるべく悪意控えめな感じで。

 


f:id:rikimikiri:20190328011722j:image

浜田翔子「はましょー☆あるばむ~お手当てしましょーこ~」

GIRLS' PARTY

ここまでの情報からもうヤバいですよね。ほぼ無名のタレント、というかグラビアアイドルに近いタレントである浜田翔子(芸名がスレスレでアウツですよねぇ)が発表したカバーベスト。おニャン子クラブ界隈を中心に、森高千里Mi-ke等もカバーしております。ユーロビートアレンジで。

渋谷TSUTAYAでCD漁りをしていたところ本作を見つけました。どうやらユーロビートアレンジでアイドルソングをカバーしているらしい。ユーロビートはかつてのDommuneで放送された「ゆきゆきてユーロビート」という番組を視聴以来大好物なので、「これは珍盤を引けたか…?」と心踊らせましたが、見事に大ハズレ。そりゃそうなんですが、歌が絶望的におヘタ。なんかちょっと昔のアイドルが好きで歌が下手なギャル(そうとしか形容の仕方がない)とカラオケボックスに閉じ込められたような錯覚に陥ります。そういう気分に浸りたいギャル推しの方には最高かもしれませんね。あ、あとアレンジ自体は「2007年」って感じでなかなか悪くないんです。でも歌がね…。

カバー曲のラインナップはまあ素晴らしいです。ちょうどよいというか、安牌というか。以下の通り。

 

1.想い出の九十九里浜(Mi-ke)
2.素敵が始まる(オリジナル)
3.うしろゆびさされ組(うしろゆびさされ組)
4.セーラー服を脱がさないで(おニャン子クラブ)
5.気分爽快(森高千里)
6.デリケートに好きして(太田貴子)
7.バナナの涙(うしろゆびさされ組)
8.セーラー服を脱がさないで(remix)
9.素敵が始まる(remix)

 

 

YouTubeに一曲だけPV付きで上がってたので聴いていただきましょうか。スゴいっすよ。とりあえず変な合いの手とか入れんなよ。

https://youtu.be/JIdeDrMialE

「気分爽快」

 

とりあえず本作、割と中毒性は高いですがアタリかハズレかで言うとハズレでしょう。ですが「珍盤」としての魅力はピカイチ(死語)です。渋谷TSUTAYAにお立ち寄りの際は是非。

中級な収穫まとめ その1


f:id:rikimikiri:20190401210649j:image

図書館やブックオフなどの廃サロンから帰ると、自宅の一角に↑のようなスペースができてしまうのが悩みです。ここではそんな「死の山脈」における平野、つまり「一本のコラムにするほどでもないけれどなかなか良盤だったCD」を、最近入手したものを中心に軽盛りでご紹介致します。今回は目黒区の図書館と新宿のブックオフから。


f:id:rikimikiri:20190403221139j:image

「アニメホットウェーブ」

先ずはこちら。おなじみ目黒区の図書館にて入手。80-90年代のアニメの主題歌を集めたコンピです。アニソンのコンピは世の中に腐るほどありますが、これほど丁度いいものに出会うのは初めてでしたね…。

機動警察パトレイバー」の主題歌である、仁藤優子の「そのままの君でいて」から始まり、中原めいこの「ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレット(ダーディペア)」や太田貴子の「デリケートに好きして(魔法の天使クリィミーマミ)」、中村由真による「Dang Dang気になる(美味しんぼ)」など入り乱れ、杏里の「CAT’S EYE(CAT’S EYE)」で終幕…。それぞれのアニメのことは殆ど分からないのですが、いずれの楽曲もトレンディ歌謡としては語るまでもない大メジャーばかり。Futurefunkの元ネタとしても重宝されるダンスチューンで埋め尽くされています。

この時代のアニソンは歌謡曲との境目が曖昧で、キャッチーなものをとなると自ずとクラブ対応可なアレンジになりがちでした。大味なものも数多ありますが、本作の収録曲はいずれもパワーを感じますね。魔法少女モノやロボットモノなど作品の世界観に統一性がなく、飽きずに聴けるからでしょうか。

「Dang Dang気になる」は近年LPシングルが発売されたことでも知られており、いつか音源を手に入れておきたかったので、このような形で手に入って有り難かったです。「美味しんぼ」って近年だと当たり前に描かれる異常性に注目されがちですが、全盛期の世界観はかなりトレンディしてるように思います。だからこのような楽曲が唐突にOPに採用されててもあんまり違和感がないんでしょうね。

アニソンへの抵抗感を緩和させたいとお悩みの方(いますかね)なんかにはオススメのトレンディ俗コンピでしょう。

https://youtu.be/LmMiaXfdr8s

「DangDang気になる」

 

f:id:rikimikiri:20190403221206j:image

前川清「神戸」

こちらも目黒区図書館にて入手。ムード歌謡のプリンス(?)、前川清のベストです。前川は非常に息の長い歌手で、内山田洋とクール・ファイブのボーカリストとして「長崎は今日も雨だった」をヒットさせたのが1969年なんですね…。ちなみに「そして、神戸」が1972年で「東京砂漠」が1976年。いずれも「昭和のヒット曲」みたいなバラエティを観てると結構な頻度で写りますよね。若い方も一度は彼の歌声を聴いたことがあるのではないでしょうか。 

そして本ベストは当時の前川の最新シングル「神戸」を一等始めに、「そして、神戸」をラストに持ってきた、タイトルに恥じないアルバムとなっております。と言っても収録曲全てが神戸を舞台にしたものではありませんので、コンセプトベストという訳でもないようです。それにしても渚ゆう子における「京都」然り、ムード歌謡を歌う者として特定の地名への偏向があるのはなんかいいですよね。歌手としての世界観がバッチリ決まるというか。彼のビブラートのブルブル震える濃い歌声は、ギラギラと輝く神戸のネオンを反射する川面を連想させてくれます。演歌歌手やムード歌謡歌手のベストにありがちな大全集的な2枚組以上のベストじゃないのも聴きやすい。トレンディ盤としては無理がありますが、正当な「ムード」歌謡を聴きたいときにはうってつけではないでしょうか。

ちなみに私、本作からは殆ど「そして、神戸」しか聴いてません。だってやっぱり飛び抜けてるもの。あ、あとジャケはチョー格好いいと思います。

https://youtu.be/tuysPUKsTrY

「そして、神戸」


f:id:rikimikiri:20190403221229j:image

小泉今日子「KOIZUMI INDEX 100」

こちらは新宿ブックオフの200円コーナーにて入手。小泉今日子の楽曲(オリジナルアルバム収録曲ばかりですが)の導入部1分程度が100曲収録されています。正にインデックス。小泉今日子のガチファンには楽しく便利な作品かもですが、今ごろになって聴きはじめた私としては何これ状態。せめてノンストップMIXなんかになってれば使えるんでしょうがきちんと各曲毎にフェードアウトしてくださってます。いつ聴けばいいのこれ。調べてみると小泉のベストアルバムの初回特典だったみたいですね。

そういえばクラシックやジャズなんかでもこういったインデックスアルバムって存在しますよね。そちらも短時間でフェードアウトします。中学生の頃、ふとジャズってもんを聴きたくなって図書館で探したらそのテのベストを見つけ「こんなに沢山入ってるならこれ一枚借りればいいじゃん!」と喜び勇んで帰宅したら細切れの曲ばかりで騙された気持ちになったことを思い出しました…。

本作は図らずともそんな幼少期の些細なノスタルジー歓喜してくれる作品でありました(無理くりな終幕)。

 

f:id:rikimikiri:20190403221321j:image

東京ディズニーランド・ミュージックアルバム」

ディズニーランドのアトラクションやパーク内で聴こえてくる音楽・BGMを集めたコンピです。1998年の作品なので、現在は廃止されてしまったアトラクションの音楽なんかも聴けます。こちらも目黒区の図書館にて入手。

こちらはかつて存在したアトラクション「ミッキーマウスレビュー」の音楽が聴きたくてレンタルしました。覚えていらっしゃいますかね、ミッキーマウスレビュー。その名の通り、ミッキーが指揮する楽団がディズニー作品の名シーンを再現しつつサントラを奏でる、というアトラクション(というか人形ショー)でした。現在件のアトラクションは3Dメガネをかけて楽しむ「フィルハーマジック」に改修されてしまっています。類似アトラクションに「カントリーベアシアター」(こちらは現存しています)がございますが、私は何故かレビューの方に強い思い入れがありまして。今でもたまにYouTubeで動画を見てしまうんですよね。YouTubeを開かなくてもあのメドレーが聴けるのは有難いんですが、改めて「あの空間・(キャラクターを含めた)舞台装置ありき」だったんだなぁ、と至極当然のことを思ってしまいます。でもでも嬉しい。

あ、あとパーク内のさりげないBGMが少し収録されているのもアツいですね。記憶から抹消されていた筈のノスタルジーを喚起してくれます。というか遊園地の音って言い様のない高まりを与えてくれる。そこも含めて計算ずくの世界であるはずでしょうが、そこに呑まれてしまうのもまた良し。

https://youtu.be/dsPTwMkNCLQ

ミッキーマウス・レビュー(本編)」

 

f:id:rikimikiri:20190403221351j:image

O.S.T 名盤コレクション・スーパー・リミックス」

新宿ブックオフの8cmシングルコーナーにて108円でゲット。「ウルトラマンのうた」「モスラ・インファント島の娘」「眠狂四郎」がハウス風にリミックスされて収録されておりました。8cmシングルでサントラのリミックス盤がリリースされるなんで、「いい時代でしたね」としか言いようがないですね。各々、劇中からのサンプリングが多用されておりまあまあ面白いですが、大体のリミックス版がそうであるように何度も聴こうとは全然思えません。珍盤でDJやるような方は一枚持っておくといいんじゃないですかね、それにしては元ネタがありきたり過ぎますけど。


f:id:rikimikiri:20190403221509j:image

吉田弥生「エクシス」

新宿ブックオフ入り口あたりの、280円コーナーからすらハブられてしまった100円投げ売りコーナーにて入手。ジャケのエスニック・クソコラ感が結構気に入ってます。内容はインストで、雅楽で使用される管楽器、笙(しょう。お正月のNHKとかで「ファ~~~ァン!」って言ってるアレを出してる楽器です)とオルガンを組み合わせた「エクシス」という創作楽器のアルバムです。詳しいことは↓でご確認ください。

https://plaza.rakuten.co.jp/koutyou/diary/201001220004/

エクシスという楽器の音、ちょっと面白いんですよね。雅楽のあの感じよりは軽くて、パイプオルガンのようでいてそれよりはチープ。しかし、↑でチャルメラとの共通点が述べられていますがチャルメラよりかはまだ荘厳。手入れを怠ったハーモニカのような音でもあります。ま、そのような楽器でバッハの「アベマリア」やモーツアルトの「トルコ行進曲」、さらには世界のポップスまでもが演奏されているのが本作です(選曲によってチープ感が増してるような気もします)。

一番気になるのが、7曲目が「ビーマイベイビー」となっている点。本作の購入理由、この曲がCOMPLEXのアレかと思ったからなんですが、実際聴いてみるとどこにも布袋と吉川の鱗片を感じません。というかこれビーマイベイビーじゃなくない…?聴いたとき滅茶苦茶モヤモヤしました。

でも本稿で取り上げた中ではかなり名盤な方です。全編を通して高音がキツいのが難ですが、リラクゼーション力はなかなかだと思います。恐らく目撃頻度は最低でしょうが頑張ってお探しください。

 

以上、最近集めた中級盤のうち、聴き終えたものをザッとご紹介しました。また玉石混淆なディグが一段落したらこのような回も設けたいと思います。宜しくどうぞ。

第6回 ザ・マイクハナサーズ「ザ・マイクハナサーズBEST Ⅰ」


f:id:rikimikiri:20190329185236j:image

ザ・マイクハナサーズ「ザ・マイクハナサーズBEST Ⅰ 」

ソニー・ミュージックレコーズ 

 

音楽に対して捻れた感情を抱いていると、どうしてもどメジャーなアーティストや楽曲から目、というか耳を背ける癖が付きがちです。職場のラジオで、はたまた自宅のテレビで嫌がらせのようにかかりまくる大ヒット曲の数々にほとんどノイローゼ状態になったり…というのも日常茶飯事でしょう(いや自分の話ですが)。しかし、そのように不本意に聴く場合ではなく、「ふと」聴くことになった時、そのような楽曲に不思議なオーラがかかることもありましょう。クラブでDJがオフザケ半分でかけたJ-POPやカラオケで友人が歌う昭和歌謡。それらが状況・テンション次第で、それまでの自分からすればウソのようにドハマりすること、ご経験ありませんか…?あれは結構気持ちよいものですよね。なんかわざと世間から外れたつもりが実は除け者にされていた自分と、明るく光る「世間様」との邂逅のような。これからは時々遊ぶ関係になろうね、という。

 

本作は正にそんな経験がお手軽にできてしまう素晴らしくチャチなアルバムです。まず「ザ・マイクハナサーズ」って誰だよ。未だに分かりません。恐らく無名の歌手崩れたち、もしくはボーカルレッスンスタジオの先生や生徒の集団じゃないかと予想しております。

内容を端的に言ってしまいますと「昭和歌謡のどメジャーどころを知らん誰かさんたちがメドレーで歌ってくれるアルバム」です。モノマネって感じでもないんですが「癪に触らない程度にちょっと似せて」歌ってます。

最初は、彼らのシングルCDを新宿のブックオフにある8cmシングルコーナーで見つけたのが出会いでした。↓

f:id:rikimikiri:20190329191224j:image

ザ・マイクハナサーズ「二人でカンパイ!/いとしの海岸物語」

 

アートワークの無駄な統一感にある種の覚悟を感じますね。ファーストインプレッションは「安っぽいな~~~」というだけでしたが、108円という最低な値段に惹かれ購入。しかし意外や意外なことに割と良い。特にB面「いとしの海岸物語」が。お察しの方もいらっしゃるかもですが、これサザンのメドレーです。(というか、マイクハナサーズの曲のタイトルってこんな感じです。ヒット曲のタイトルぶつ切り&ジョイント。)私はずっとサザンのネオ・不良オヤジ感が大の苦手で、彼らの楽曲も殆ど知りませんでした。しかしこの曲で矢継ぎ早に、かつ半ば強引に捲し立てられるサザンフレーズを受け止めていると「なんか全体的に安っぽくていいなぁ」という思いが沸き起こってきました。声も無理やり桑田に似せてるんですが、普段興味なかった身からするとそっくり。こうして本物とちゃんと目を合わせることなく、なんとなくサザンと邂逅を果たした気になれたのでした。

よく「昔のPA売店には「流行曲をご本人でない誰かが歌うカセット」なんかが売られていた」という話を耳にしますが、感触としてはそれに近いのでしょう。ただアレのいかにも「騙して儲けてやろう」という印象がこちらからはそれほど感じられませんでした。どちらかというと「ダサい和モノ」というこざっぱりとした印象のみ。ニセはニセなんですが、可愛げがあるというか…。

 

で、本稿でご紹介する「~BEST Ⅰ」は世田谷区の図書館でレンタルしました。ほんと図書館って何でもあるな。とりあえず曲目を全て下に記しますね。

 

1.わたしたちどうするの (男女の痴話喧嘩がテーマの楽曲メドレー)
2.飾りじゃないのよ少女A (中森明菜メドレー)
3.なんてったって艶姿アイドル七変化(小泉今日子メドレー) 
4.メドレーびんびん物語(田原俊彦メドレー) 
5.聖子のウィンク(松田聖子メドレー)
6.ホンダラ・スーダラ行進曲(クレイジーキャッツメドレー) 
7.ハートのエースをみせないで(昭和アイドルグループメドレー) 
8.プレイバック・Part3(山口百恵メドレー) 
9.ブルー・シャトウを君だけに(GSメドレー) 
10.グラジュエーション・デイ(卒業ソングメドレー) 

 

馬鹿ですね~。怒りとか悲しみとか爆笑とか、そういったものの残骸としての虚無がここにある。3のごった煮感とか4の迷いのない感じは堪りません。

各メドレーについての詳細は「実際聴いていただいた方が圧倒的に面白い」ので省略しますが、それだとレビューにならないので軽く。2のアキナメドレーですが、「少女A」「1/2の神話」などお馴染みの楽曲の中にしれっと「liar」が紛れ込んでて驚いた。当時の最新作だっけか…?ボーカルはなんとなく艶っぽい人を呼んできたって感じですね。6はここに「クレイジーキャッツのメドレー」が入ってるって事実に意義があるだけで、正直曲としての意義は分からないですね…。植木等リバイバルの頃にリリースされた「スーダラ伝説」があるので、どうしてもその劣化版というか。声も植木ってよりハナ肇寄りで若干スベってる。「スーダラ外伝」の再解釈版と考えればアリ。8はニセ百恵がゴンドラにキレ始めててウケます。9は繋ぎでブルーシャトウに頼りすぎなのであのフレーズ聴き放題。

個人的には3が一番好きです。入りの「なんてったってアイドル」で「おっ、めちゃめちゃ似てるのでは…?」と思わせといて急激に似てなくなる。でもアップとスローの緩急がガタガタで逆にノレます。「艶姿ナミダ娘」の「ポコポコポンッ!」ってイントロの再現が丁寧。他のメドレーは結構長く感じるんですけどこれだけはあっという間に5分が過ぎますね。

https://youtu.be/jiLbNZ78nd4

小泉今日子艶姿ナミダ娘」

「ポコポコポンッ!」ってこれのことです。

 

本作、聴くというより歌う場面で重宝されてるらしく(そりゃそうなんですが)、YouTubeにもこれらを歌ってみた映像やカラオケビデオそのまま録画しただけみたいな映像しか上がってません。

冒頭で挙げたシングルのA面「二人でカンパイ!」はカラオケビデオにボーカル入りのものを重ねたものがあったので、恐縮ですがそちらをご覧下さい。

https://youtu.be/cyXnI2B82Cw

 

それにしても明確に「歌手」ってブランディングの成されていない人々の歌声を聴くの、なかなかよいですね。堺正章なんかが司会やってるカラオケ番組観るのはウンザリなのに…。「ドライブ用J-POPノンストップミックス!!!!」みたいなCD聴く層の気持ちもなんとなく分かるような分からんような。とにかくなんか優しい気持ちになれるアルバムとなっているのは間違いないかと思います。

 

後は、本作を手に入れて「メドレー」の効用についても考えてしまいました。メドレーって、複数の楽曲毎のサビや気持ちよいフレーズをザッピングしてるってことですよね。その快楽主義かつ刹那主義なところ、実は現代において逆に潔いというか美しいのではないでしょうか。「ザッピングそのもの」が作品になってるという現象、DJMIXとか「名著をマンガで読もう」とかもそうなんでありましょうが(後者は最悪ですけど)、最も昔ながらに我々に定着しているのはメドレーだったのだと。

現実、今日びカラオケでメドレーなんて歌ってる人なんて極僅かなんでしょうが、本作を聴いてみてメドレーを歌ってみたくなりました、私。皆様もカラオケにお越しの際は、ザ・マイクハナサーズのこともちょっと思い出してあげてください。私からは以上です。

番外編 沢田研二の90年代ジャケが最高すぎる

反駁に及ばない大スター。そんな言葉を聞いて、皆様は誰を思い浮かべますか。私はジュリーこと沢田研二を思い浮かべます。GSグループ「ザ・ダイガース」で華々しくデビューし、先日亡くなったショーケンこと萩原健一らとのロックバンド「PYG」を経てソロに転向。当時は奇抜な衣装を携え「勝手にしやがれ」「TOKIO」等の大ヒット曲を連発。俳優としても「悪魔のようなあいつ」「太陽を盗んだ男」といった代表作が幾つもございまして、その活動・リリースは現代までに及びます(今でも毎年何かしらアルバムやシングルをリリースしておりますね)。彼の音楽を飛び越え昭和の「文化」を背負った活動ぶりは、最早アイドルの枠を優に超越し正しくスーパースターとしていつまでも君臨していると思います。

ところが近年では反体制派的活動や(2011年以降は原発反対ソングばっかりリリースしております)コンサートのドタキャン、そして激太り等の話題が先行し、かつての面影は拭われてしまったかのような印象をお茶の間に与えてしまっています。彼への正当な評価が崩れ去ってしまっている時代だと言えるかもしれません。しかしそれも、彼の「スーパースター」という大前提ありきなような気がします。「大スターがあんなことになるなんて」という部外者の勝手な落胆、そんなことは本人や古参ファンにはあまり重要でないのでしょう。彼は例えどのようになろうとも、あくまで「スーパースター」としていつまでも玉座でふんぞり返ってくれていればそれでよいのです。かく言う私も古参ファン、でこそありませんが幼少期からのファン。人生で2番目に聴いたCDは沢田研二のベスト「royalstraightflash」でした。なので(?)彼に関する数々の悪評は割とどうでもいいです。
f:id:rikimikiri:20190401103548j:image

 

前置きはこれくらいでいいですね。今回は番外編として彼のバブル期・90年代のアルバムのアートワークについてのコラムとなります。お茶の間に大スターとしての彼が浸透してから約10年が経過した頃、彼はそれまで以上にアルバムにセルフプロデュースの感を強めていきます。アートワークも殆ど彼の専属デザイナーであった早川タケジ氏(山口小夜子などの衣装デザインも担当した方です)と共に、早く言えば好き勝手やり始めます。それらが病的にかっこいい。サイケ・デカダン・トレンディ等多様な要素を絡ませ、ドギツくエロティックかつ悪趣味なジャケ・アートワークを連発しております。ちなみにそれまでのアートワークは↑の「royalstraightflash」を見ていただければ。どれも大体あんな感じでしたから。

 では以下から時系列順にかいつまんで見ていきましょうか。番外編の癖に膨大な分量になりますがどうぞお付き合いくださいませ。


f:id:rikimikiri:20190401104511j:image

「彼は眠れない」(1989)

ハイ、出ました。なんだこれ。和洋折衷な印象のコラージュに囲まれて片目を手で塞ぐジュリー。長野あたりの古びた現代美術館の片隅に飾ってありそうな。丸尾末広を彷彿とさせるタッチでジュリーが描かれていますね。色味のせいかパッと見地味かもしれませんが十二分に異常。少なくとも「カッコいいジュリー」とはかけ離れていますが、デザインとして見れば最高すぎません…?ちなみに内容ですが、忌野清志郎とのデュエット曲があったり、ユーミン徳永英明・奥井香など固める脇が豪華すぎる。中身だけでも名盤です。1「ポラロイド・ガール」は中年的アイドルソングしてて最高。

https://youtu.be/k0KU0Mkmcwg

「ポラロイド・ガール」


f:id:rikimikiri:20190401111808j:image

「パノラマ」(1991)

純正Vaporwaveジャケの最高峰、といっても過言でないこちら。沢田研二のアートワークの中で一番好きかもしれません。アートワーク、お耽美とCG創成期がお上手に融合できてる。ディナーにスケルトン・ルナを、という感じでしょうか。ジュリーの目付きも色っぽすぎ。インダストリアルノイズバンドのジャケと言われても初見ならば疑わないかも。内容もデカダン歌謡の応酬。シングルカットされた「Spleen」(作詞はコシミハル!)とそのB面でもあった「二人はランデブー」(こちらはサエキけんぞう作…!!)が最高です。

https://youtu.be/C8tVLuf9hDk

「Spleen~六月の風にゆれて~」


f:id:rikimikiri:20190401113827j:image

「Really Love Ya!!」(1993)

さりげないロシアアヴァンギャルドの引用。そしてその上方で燃え尽きるジュリー。シンプルでいいですねー。下品すぎない美麗とはこういうもんよ、とジュリーが語りかけているようで。逆に演歌のジャケみたいなイキフンもありますがご愛敬です。内容としては歌謡曲ありファンクあり、耽美なバラードありの豪華な面子。3「そのキスがほしい」は現在でもライブのテッパンですし、5「幻の恋」は色気の塊としてのジュリーが堪能できます。

https://youtu.be/vcxHYw-UyK8

「そのキスがほしい」


f:id:rikimikiri:20190401114637j:image

「Sur←(ルーシュ)」(1995)

ここからですよ本旨は。本作から沢田はアルバムを完全セルフプロデュースするようになり、「パブリックイメージとしてのジュリーからの脱却→アーティストとしての沢田研二」としての活動をスタートさせます。TVに殆ど出演しなくなるのもこの頃からですね(前年彼は最後の紅白歌合戦出場を果たしています。真っ黄っきのヘソ出しセーターで)。それにしてもどうですかコレ。私はめっちゃくちゃカッコいいと思うのですが。悪趣味の力業ですね。一言目で「サイケ」、二言目で「フィリピンの激ヤバポップス歌手みたい」と言いたくなる。原色まみれで目が痛くなりますが、内容は意外にもそこまでド派手でない。歌謡ロックな秀作を中心に、やんちゃなオジサンとしてのポップスを聴かせてくれます。タイトル通りダリの絵画を歌詞に落とし込んだような1「sur←」から、パーカッションのジャングルぶりが絶妙な根倉ソング2「緑色の部屋」へのガタンと落ちる繋ぎが最高です。シングルカットされた7「あんじょうやりや」はクソダサですが案外和モノレアグルーヴとしてイケるのではないでしょうか。

https://youtu.be/Kh191WZgL5g

個別のライブ映像がなかったのでアルバムのフルを…

 

f:id:rikimikiri:20190401123318j:image

「あんじょうやりや」(1995)

↑で述べたシングルのジャケもアルバムに打ち勝つ程の爆弾なので載せておきます。マジで誰これ。


f:id:rikimikiri:20190401123527j:image

「愛まで待てない」(1996)

前作のアートワークの世界観を踏襲しつつ微妙にブラッシュアップされた感のある作品。タイの仮面ライダーかな?とかく真っ赤ですね。エナメルな衣装でテッカテカ、変態的。頂点を極めた者とは思えませんね(褒め言葉)。内容は吉幾三玉置浩二による作品があったりしてやはり豪華。表題曲2「愛まで待てない」はこちらもライブの定番です。全体的に軽くこなす感じでなく無骨な沢田研二を味わえますねぇ。

https://youtu.be/ZADxFy1ibGo

「愛まで待てない」(2008年東京ドーム)


f:id:rikimikiri:20190401124920j:image

サーモスタットな夏」(1997)

沢田研二アートワークの中で2番目に好きな一品です。まずタイトルが最高じゃないですか、サーモスタットですよ。なんて汗っぽいんでしょう。ジャケもこれまで培われてきたサイケ・悪趣味をベースにしつつ申し訳程度のお耽美をふりかけたかのような。右半分を占めるメタリックでアブストラクトな彫像が本ジャケの均衡を調整していますね。内容も申し分なく捨て曲ナシです。例により表題曲1「サーモスタットな夏」はサイケデリック・パワー・サーフソングといった赴きですし、8「ダメ」はドロドロにエロティック。こちらは夏に部屋を真っ暗にして冷蔵庫を開けっ放しで聴きたい。バラードである9「恋なんて呼ばない」は沢田研二が歌うから説得力のある楽曲のひとつです。

https://youtu.be/h9sklAO-TUg

サーモスタットな夏」「恋なんて呼ばない」


f:id:rikimikiri:20190401130817j:image

「いい風よ吹け」(1999)

あいたたたた…。これは素晴らしいですね…。サーモスタットの紫が「東南アジアの繁華街」だとしたらこちらの紫は「裏町、風俗街」かな、と。真ん中の沢田を「武田鉄矢美輪明宏を足して2で割った」と表現したレビューサイトもございましたが納得…。壮年スターの憂鬱を可視化させた秀逸なアートワークですね。内容はハードですけどね。ただ1「インチキ小町」4「無邪気な酔っぱらい」8「ティキティキ物語」等オフザケ系が多いのも特徴でありまして…。エネルギーが高く感じられる楽曲が多いのもあり苦笑ものです。

https://youtu.be/TwCF5fjpYxE

「無邪気な酔っぱらい」


f:id:rikimikiri:20190401132739j:image

「耒タルベキ素敵」(2000)

ミレニアムにして最お耽美ジャケが来ました。天井桟敷のポスター寄りのコラージュデザインをバックにマネキンのようなジュリー。いやマジでスーパースターじゃないとこんなカッコできないってば。前年までのアートワーク達とは別の方向に変態の舵を切ったアートワークですね。本作は二枚組で、全てオリジナル楽曲で23曲を収録。サイケな楽曲やスピードロックもありますが、何よりザ・タイガースの頃を懐かしむ1「A・C・B」に始まり23「耒タルベキ素敵」で21世紀へのひんやりとした期待感を歌い上げて締める、この流れが最高です。

https://youtu.be/8FB_-yQ8ZnE

「耒タルベキ素敵」

 

…如何でしたでしょうか。沢田研二のジャケを見ているとつくづく「アートワークは「アート」ワークなんだなぁ」と考えさせられるのですが、それが皆様にお伝えできたなら幸いです。

私が図書館で初めて借りた沢田研二のCDが「パノラマ」でした。当時は純粋にかっこいいなと反応したのを記憶しております。私の中でジャケ借りとしての廃サロンディグの起源であります。本稿で紹介した作品、割とあちこちの図書館にございますので興味のある方は探してみてください。買うとなると結構お高めですので。

ちなみに2001年以降、ジュリーのジャケは本人が全く登場しないイラストや写真に統一されてしまいます。それまでの反動ですかね。華々しかった頃のジュリーやその頃の面影のない沢田研二だけでなく、この時期の弾けてるジュリーについても思いを馳せ続けていきたいものです。ジュリーよ永遠に!

 

https://youtu.be/-zV6a1A8LYM

「Hello」(1994)

前述済みの最後の紅白ジュリーでお別れです。秋元後次コンビの鉄板っぷりを全く感じさせない中庸作です。

第5回 岡部東子「STAY THE SUN」


f:id:rikimikiri:20190328172958j:image

岡部東子「STAY THE SUN」

プラッツ P28K-11

 

アルバムの曲全てが、殆ど同じような風景・画を想起させてくることがよくあります。それには、楽曲毎のグラデーションの変化が大きくない、つまり変化・緩急に乏しいから、はたまたボーカルがあまりに特徴的だから、等どっかしらに理由があるのでしょう。それはそれとして、そこで想起される風景がそのアルバムのアートワークの風景そのものという場合も多いはずです。海が写っているジャケ写ならば海岸が、都会的なジャケであれば街の喧騒が…。楽曲だけでなくジャケも合わせた「パッケージ」を以て作品となる、ということでしょう。これは画像だけでなく、PVやカラオケビデオに関しても起こり得る現象ですよね。至極フツーのことですが、音楽は「視」「聴」覚なんですね。

 

つまり何が言いたいか、というとですね、本作「STAY THE SUN」を聴いてると、どの曲からも「夕焼けに染まるアリゾナ?の風景」しか浮かばないってことです。本作はシンガーソングライター岡部東子の2ndアルバム。1989年発表の隠れたトレンディ名盤です。神保町の某古びたレコード屋で700円くらいで入手したんだったと思います。1st「アムネジア」は目黒区の図書館で音源を入手済みだったので(そっちも最高です)、正直ずっと探してた作品でした。

この岡部東子もネットで殆ど情報が皆無でして。写真もジャケでは後ろ姿だったり横向きだったりシルエットだったり。ちょっと気持ちいいくらいの匿名感ありますね。その癖強烈なハスキーヴォイス。掠れこそないものの、墨汁をひたひたにした大筆で書く太い一本線のような(、で分かりますかね)。濃くて、それでいてアーバンなお声。同世代のガールズポップなんかとは一線を画してる、汗っぽくないハスキー。大黒摩季たちとは別物でシャーデーと親戚?なハスキー。匿名性とその内から発せられるエネルギー、そのギャップがいいのかもしれません。

 

「ジャケからアリゾナの夕暮れしか浮かばない」と申し上げましたが、詞と曲は至極トレンディ歌謡として機能してるんです。散りばめられた単語の中に「これは狙いすぎだろ」というようなものはありませんが、強いて言うなれば「ギムレット」「午後のギャラリー」「想い出のフォトグラフ」なんかが丁度良くファニチャーとして佇んでくれている。ラストを飾る9のタイトル「スノー・キャンドルの夜」なんかはちょっとこっ恥ずかしいくらいですが、それもよしです。どちらかと言うと各曲のサビ辺りでソウルフルに絶唱される英詞が素晴らしくアーバンかと。

音に関しては何よりシンセがエレクトーン・フュージョンといった趣で唸ってくれているのがいいですね。ここに夕焼け連想の秘密があるかもしれません。パーカッションは芯がありつつ爽やか。カラフルに各曲を彩ってくれています。1「VACANCY」は正に夕焼けを見つめながら聴きたくなり、4「果てしない時の砂丘で」はサビ入り前のリフレインが素晴らしい。かと思えば5「9月のハリケーン」はキューバンアレンジ(合ってるか分かりませんが)。7「SLOW DOWN」なんかは(他の曲もそうなんですが、特に)夕暮れのドライブにうってつけなやつです。日々に疲れきったサバサバ系女性の気分になれそう。

 

本作を最後に表舞台から姿を消した短命な岡部東子ですが、正直いま聴かれるべき歌手だと思うんです。シティポップの真夏の灼熱青空的軽やかさ・眩しさも最っ高ですが、たまには肌寒い中で夕暮れを黙って見つめましょうよ。という訳で、最後まで本作から夕焼けがこびりついて離れませんでした。夕暮れアーバンポップに絞って漁っていくのも良さそうですよね。

 

https://youtu.be/ZMwO8qD5l14

岡部東子「想い出の瞳

「STAY THE SUN」の楽曲がYouTubeに皆無だったので、代わりに1st「アムネジア」から一曲お送りします。本作の世界観とはちょっとズレますが、ボーカルの張りを感じていただきたいので。この曲も結構ドライブ向きな気がする。

 


f:id:rikimikiri:20190328183500j:image

帯の詞の引用の仕方、最高すぎません…?

第4回 HAL FROM APOLLO '69「Pyramid Of Venus」


f:id:rikimikiri:20190328002143j:image

HAL FROM APOLLO '69「Pyramid Of Venus」

スイート・スプエスト! TOCT8546

 

こんにちは。なんだか予想外に沢山の方に見ていただけているぽくて。リツイートやいいね等有り難うございます。数多いらっしゃる先人の後追いなので色んな意味で追い付けやしないんですが、今後も楽しく書いていけたらと思います。のでご支援宜しくお願い致します。

 

さて、唐突ですが「宇宙っぽい音楽」ってなんでしょうね。もちろん皆さん各々で異なるイメージをお持ちでしょうが、「2001年宇宙の旅」の「ツァラトゥストラはかく語りき」のような荘厳なクラシックだったり、或いは電子音楽だったりアンビエントだったり、サイケデリックロックこそ宇宙だというような意見もございますことでしょう。「スペースミュージック」というジャンルとかありそうですけどね、ないです。

とりあえず、本作は私の主観では最も「スペースミュージックしてるじゃん」というアルバムです。バンドの名はHAL FROM APOLLO '69。ほらもう宇宙。男女ユニットで、本作が日独同時発売のメジャーデビュー作。

こちらも去年の金沢一人旅で、ふらっと入った汚いレコード屋で掘り当てました。確か680円くらい。東京行きの新幹線に乗る3時間位前に漁ってて、我ながら計画性のなさに恥ずかしかったのですが、結果大当たりだったので良しです。

 

https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lEcs1Ev9YpT98XJZE0PSNfFjsWxUw3bBk

YouTubeにストリーミング用で全曲上がってたのでとりあえず聴いてみてくださるがよろしいかと。私の言ってることもなんとなくお分かりになるかと思います。でもなんか言語化できないんですよね、この作品の宇宙感。

特別シンセがバリバリという訳でもないし、女性(Halさん)のボーカルも澄んではいるものの、これが宇宙の声なのかというと「?」ですし。強いて言うなれば、本作を包んでいるのは「浮遊感」かと。特別歌詞に「事件」が起きている訳でもなく、シュールで現実味や香りの欠いた世界観がのっぺりとばらまかれているような。ディレイのかかったアコギやパーカッションの音色によってふわふわと制御されている、そんな宇宙。「動」のアンビエンス。

それにしてもHalのボーカル、面白いですよね。1「Icecreaming」では囁くような可愛らしい声で、2「Darker Than Your Eyes 2」ではキヨシローばり?のねっとりヴォイス。かと思えば表題曲である5「Pyramid Of Venus」では低音を交えた凄みを見せてくれる。「歌が上手い」にも数多の形態がございますが、こういうバンドの中で一番活きる上手さなのでしょう。

改めて歌詞についてですが、「カプセルボム」「スクリュー」「ピラミッド」等、やっぱりなんとなく遠回しに宇宙・近未来的。もっとテクノテクノしてる楽曲に乗っててもおかしくない言葉の数々。でも(自分自身がそうなのでアレですが)決して「オトコノコ」を喜ばす為の歌詞という感じでもないですわね。どっちかというとポエティックで中性的な歌詞で、正に香りのしない感じ。そこにも好感が持てます。

 

HAL FROM APOLLO '69のアルバム数枚の中で、このような世界観が展開されているのは本作だけ。その後はデジロックと渋谷系の中間っぽくなっていき、最後は普通にデジロックで終焉。ギタリストのzoeこと山田貴久氏は2006年に悪性リンパ腫のため亡くなっております。

もうちょっと流行っててもよさそうな…と思うのは私だけでしょうかね。ネットにも全然情報がなく、その割には音源だけ結構聴けるという。ディグによって出会わなければまず聴くことのなかったバンドだろうなぁと思われますが、出会えて良かったとも心底思います。皆さんも本作で前澤さんより先に宇宙に行ってみませんか。

 

https://youtu.be/_9zqBnN3wrM

「Rocket Khaos」

本アルバム収録ではありませんが、彼らの中で最大のヒット(らしい)シングルをご紹介して終わります。なんかポンキッキぽくありません?斉藤和義「歩いて帰ろう」とか和田アキ子「さあ冒険だ」とか、それらを聴いてる時と似たような気持ちになる楽曲で大好きです。ネットで6000円くらいしますが。

第3回 菊池桃子「ESCAPE from DIMENSION」


f:id:rikimikiri:20190327184833j:image

菊池桃子「ESCAPE from DIMENSION」

Vap – 80036-32

 

熱の籠った内はガンガン書いていきたいと思います。3回目にして菊池桃子を持ってきてしまいました。YouTubeで音源が聴けるとなるとこの辺が手堅いので。

本作、昨年ひとりで金沢に旅行へ行った際にブックオフで出会いました。ホテルのチェックインを終え「飲みにいこうかな」というところで付近にブックオフを見つけ、慌てて駆け込むと、お馴染み500円コーナーに本作が鎮座(?)しておりました。

菊池桃子のアルバムはヤバい」と、噂は予々見知っていたのですが、モノホンを見るのは初めて。旅行中の高揚感も相まって、即レジへと運びました。といっても聴くまでは「タイトルのエッジに対してジャケが牧歌的すぎる」くらいの印象。旅行から帰宅し全曲聴き流してみたところで本作の「ヤバさ」を痛感したのでした。というか、このアルバムが良すぎて菊池桃子の他のアルバムが殆ど聴けていない状態です、未だに。

 

本作は菊池桃子にとって4作目のアルバムであり、それまでの作品もそうであったようにプロデューサーはオメガトライブでもお馴染み林哲司です。それまでの彼女のアルバムでもオメガトライブばりの80年代式シティポップが炸裂しているのですが、本作は「シン・ゴジラ」のサントラを担当した鷺巣詩郎やテクノ寄りだった頃の久石譲等が編曲者として参加していることで、ゴリゴリのテクノ・エスノ歌謡アルバムと化しております。しかも菊池桃子のボーカルは抑揚なし・張りなし、といった具合。ロリ声って訳でもないんですが、ともかくテクノポップとしての要件を満たしまくりです。ボーカルとサウンドが全く癒着していない。

説明が説明になってないので、とりあえず数曲聴いていただきましょうか。

 

https://youtu.be/ET_qfsBDjW4

「Dreamin' Rider」

ヤバヤバPVと共にお送りいたします。入りの「チチチチッチチッ」って音にまず持ってかれますね。F1の映像と一緒に聴きたい。パワーアイドルポップ。ゴッリゴリのテクノ歌謡。それにしても声が能天気すぎる。 

 

https://youtu.be/9FL2xWLJ86c

「Ivory Coast」

ガムランのようなパーカッションに支配されたエスノ歌謡。こちらが久石譲の仕事です。恋愛の歌でもなんでもない、砂漠の情景を歌ってるだけってのが最高ですね。なんか、他に言いようがないんですが、この曲「お値段が高そう」。

 

https://youtu.be/1i2Al3Hi3xo

「Yokohama City of Lights」

砂漠の次はヨコハマ。横浜にしては高貴すぎるんじゃありませんこと、この音使い。歌詞が「横浜」って単語以外に明確な横浜要素が皆無です。それがいいんですが。ズズズッとしたシンセ使いが蔓延しまくってて、トレンディ歌謡好きには堪りません。

 

映像をご覧になっていただいたのでお分かりかと思いますが、このテの楽曲たちにPVが付けられていたり、バラエティ番組での歌唱が許されていたのを見ると、どうしても懐古厨にならざるを得ないというか。いずれもシングルカットされてませんからね、↑の楽曲。

本作からのシングルカットは「Say Yes!」という楽曲なんですが、正直アルバムから浮きまくりです。小学校低学年向けの運動会用の曲みたい。嫌いじゃないんですけど。

https://youtu.be/2DdRE9ceP4Y

 

本作の直後に来るのが、菊池桃子伝説のピークである「ロックバンド」、ラ・ムーです。

本作はアイドルシティポップとしての最高傑作「菊池桃子」と、和製ブラックコンテンポラリーの最高傑作「ラ・ムー」とのInterludeとして、いいとこ取りのアルバムとなっております。ので、楽曲単体ごとでなく、是非アルバムとして聞いていただけますようよろしくお願いいたします。

 

https://youtu.be/C-jLEi2uvrE

ラ・ムー「愛は心の仕事です」

バンドメンバーが菊池桃子以外ほぼシルエットでかっこいい。曲は言わずもがな。